記事監修医師
産業医科大学第1外科
佐藤 典宏 先生
2017/3/14
記事監修医師
産業医科大学第1外科
佐藤 典宏 先生
自閉症がある子どもをもつ親の中には、子どもに対し、自閉症であるという事実を伝えるのが難しいと感じている人がいます。
これは、本当のことを知らせて動揺させたくないという気持ちが働き、伝える機会を得られていないということがあると思います。しかし、しっかりと事実を伝えることが子どもの成長につながります。
ここでは子どもに自閉症であることを伝えるためのヒントを紹介していきます。
自閉症スペクトラム障害(Autism Spectrum Disorder;ASD)の診断について、子どもに伝えることに苦労している親はたいへん多いそうです。両親が子どもに説明する方法を知らず、事実を伝えて動揺させたくないと思ってしまい、ASDの診断について伝えることができないようです。しかし、このコミュニケーションの欠如は、子どもの動揺につながっています。
実際に、自分がうまく友達作りができないことに関して、自閉症が原因であることがわからず、自分の容姿が悪いためだと思っていたようです。
子どもが診断について知ることで、いま直面している困難な場面が起こる原因を明らかにするのに役立ちます。反対に、放置することで、自尊心や自己理解の方法に悪影響を与える可能性があります。
ASDであることを知った子どもは、なぜ適応できないときがあるのか、自分の状態を積極的に知ろうとします。時には医師から子どもに診断結果を伝えてほしいと頼む人もいますが、親が子どものことを一番よくわかっているので、家で両親の話を聞く方がはるかに受け入れやすいでしょう。
最初のうちは不信感や悲しみの反応を示す人もいますが、子どもが診察をうけ、親がASDの診断と症状について学ぶことは、親が子どものことを理解するのにも役立ちます。また、親の中には、自分のせいで子どもがASDになったのかと考える人もいるようです。例えば、風評に流されててMMRワクチンの接種が自閉症の原因になってしまったと考える人もいます。しかし、ASDは誰が悪いということではなく神経発生的な症状が原因であることが研究で示されています。
実際に子どものASDであることを伝えるときには、以下のことに配慮しましょう。
・子どもが落ち着いて、話を受け入れられる時間を選ぶ
・子どもの気が散らない場所を選ぶ
・診察時に子どもが医師からうけた質問を振り返り、会話を開始する手がかりとして同じ質問をする
・説明を理解できるように、子どもに与える情報が年相応のものかを確認する
自閉症の子どもが、ASDだと知ることは子どもの成長につながります。医師に頼るだけではなく、親から話を聞くことで子どもが落ち着いて話を聞くことができるというメリットもあります。自閉症の子どもは、コミュニケーション能力や理解能力を発揮するための適切な教育環境を見つける必要があります。その成長機会を広げるためにも親子でのコミュニケーションが必要になります。