記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/6/20 記事改定日: 2018/6/28
記事改定回数:1回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
過食症は摂食障害のうちの1つです。過食症になると、定期的に自ら嘔吐するようになり、これが体に悪影響を及ぼします。今回は過食症と嘔吐の関係と、治療方法、周囲の人の関わり方のポイントについて解説していきます。
過食症(神経性大食症)は、摂食障害の一つです。過食症を患っている人は、食事の量を厳しく制限したり、過食をしてわざと嘔吐したり下剤を使用して食べ物を体の外に過度に出そうとする(浄化行動、パージングと言います)ことで、体重を管理しようとします。
女性のほうが男性よりも過食症になりやすい傾向にあるとされ、ある研究によると8%の女性が人生の特定の年齢において過食症になると考えられています。しかし、近年では男性の過食症も増えてきています。この症状はどの年代にも起こり得るものですが、16歳~40歳くらいの女性が発症するケースが多いです(平均では、18歳か19歳のころに始まるとされています)。小さい子供が過食症にかかることは極めて稀だといわれています。
摂食障害は、食べ物または理想の体型に対する異常な執着が関係しているといわれています。
摂食障害に苦しむ人は、感情的苦痛に対処するために食習慣や食に対する考え方を変える傾向があり、食べ物、カロリー、脂肪、太っていることに対して異常なほどの恐怖心をもつ傾向が多いです。食べ過ぎてしまうことや太ってしまうことへの恐怖心から、過食症の人は食べることを制限するようになり、食べ過ぎて制御が利かなくなってしまう期間(過食)と、その後わざと吐いたり下剤を使って食べたものを外に出そうとする期間(浄化)を繰り返してしまいます。
食べたものを外に出そうとする理由は、過食によって体重が増えることを恐れ、食べ過ぎてしまったことに罪悪感を覚え、恥ずかしいと思うからといわれています。そのため、このような行動は人に見られないように行うことが多く、空腹やストレス、精神的な心配事によってこのサイクルが繰り返されます。
過食症の兆候として、食べ物や食べることに対する強迫観念を抱くようになることや、体重や体型を過度に気にするようになることなどが挙げられます。また、食後に頻繁にトイレに行き、戻ってきたときに顔が赤く、指の関節に傷ができている(嘔吐するために指を喉に突っ込むため)場合にも過食症を疑ってよいでしょう。過食症は、栄養失調、過度の嘔吐、下剤の過度な使用など、やがて身体的な悪影響を及ぼします。
過食症などの摂食障害がある場合、検診を受け、どのような治療が必要かを判断するために医師に見てもらう必要があります。そのためには、過食症などの摂食障害の問題を抱えているということを本人が自覚することが大切です。過食症と疑われる人が周りにいる場合は、過食症の可能性があることを本人に伝え、医師に診てもらうように説得しましょう。
過食症は様々な要因が重なり合って発症するため、治療には多くのアプローチが必要となります。一般的に多く行われる治療には、薬物療法、心理療法である認知行動療法、栄養リハビリテーションが挙げられますが、それぞれ次のような治療が行われます。
過食症をはじめとする摂食障害を根本から治す薬はありませんが、摂食障害の人の多くは、抑うつ気分や不安障害などの精神的な異常を来たしていることが多く、SSRIをはじめとする抗うつ剤が使用されます。
しかし、薬物療法はあくまでも補助的な治療として考えられており、薬物療法のみを漫然と続けていても過食症が治ることはまずありません。
認知行動療法とは、心理療法の一種ですが、病気の原因となっている認知の歪みを治して症状改善を図る効果が期待できる治療法です。
過食症の人は自身の体形や食習慣に関する考え、対人関係、家族関係などに歪みを生じているケースが多く、これらに対してカウンセリングを行うことで「歪み」として認識し、過食行動を抑制する効果が得られます。このため、過食症の人には認知行動療法が非常に有効であると考えられています。
しかし、認知行動療法は効果が現れるまでの時間に個人差があり、無理に治療を進めていくとかえって症状を悪化させることがありますので、一人一人に合ったカウンセリングを焦らずゆっくり進めていく必要があります。
患者の年齢や身長、既往歴などから理想とされる食生活を促すことで過食を抑制するという治療法ですが、重度の過食症の場合には入院をして提供される飲食物以外は口にできない環境で行われます。
栄養リハビリテーションは過食行動の予防に効果的ですが、一時的に怒りっぽくなったり、イライラするなどの気分の変調が生じやすくなります。また、中にはリストカットなどの代償行為を行う人もいますので、医療スタッフや家族などの見守りが必須になります。
過食症の回復への第一歩は、症状を認識することと、回復したいと心から思う気持ちです。自己啓発の本も、過食症の人に非常に効果的であるということも分かってきました。友人や家族が協力してくれるならば、なお効果的といえるでしょう。
過食症のサインに気づいたら、早く病院で診てもらうように促しましょう。