記事監修医師
産業医科大学第1外科
佐藤 典宏 先生
2017/3/10
記事監修医師
産業医科大学第1外科
佐藤 典宏 先生
眠れない、夜間に目を覚ましたらなかなか寝つけない、朝早く目が覚めてしまうといったことはありませんか? これらの症状は多くの人が経験していることです。しかし、4週間以上続く慢性的な不眠症は身体的および心理的に多くの影響を与える睡眠障害です。
健康的な生活を送るためには十分な睡眠を取ることが必要不可欠です。不眠症は、日中に集中し、仕事をすることが難しくなります。定期的に十分な睡眠を取らなければ高血圧、心臓病、糖尿病などのリスクが高くなります。
成人では、毎晩約7〜8時間の睡眠が必要です。昼間眠くないなら十分睡眠を取っていることがわかります。必要とする睡眠の量は成人期を通して一定していますが、睡眠パターンは年齢とともに変化することがあります。たとえば高齢者では、夜間には眠りが浅く日中は昼寝することがあります。
不眠症は、からだの異常を示すものです。不眠症の原因となるものには、以下のようなものがあります。
・ストレス
・不安
・うつ病
・カフェイン、アルコール、またはタバコ(ニコチン)の過剰摂取
・関節炎などを原因とする痛み
・労働シフトの変化
・不規則な睡眠スケジュールなどの睡眠不足
・眠れないほどの心配ごと
また、うつ病などの病状や特定の薬(心臓や血圧の薬、アレルギー薬、コルチコステロイドなど)も不眠症の原因となります。
医師は、睡眠習慣や服用している薬、カフェインとアルコールの摂取、喫煙の有無や、不眠症を患っている期間、痛み(関節炎など)いびきの有無などを問診することによって、その症状が不眠症であるかを判断します。
不眠症の原因が明らかでない場合は、「睡眠日誌」で睡眠の記録をとります。「睡眠日誌」には、いつ寝るか、寝るまでにどれくらいの時間がかかったか、夜に起きる頻度、朝起きられるか、どれくらい眠るかを記録します。「睡眠日誌」は、睡眠に影響を与えるパターンや状態を特定するのに役立ちます。
よい睡眠習慣を学ぶことは、不眠症の治療に役立ちます。認知行動療法は、よりよい睡眠習慣について教えてくれます。認知行動療法には、睡眠への不安を取り除く方法について学びます。筋肉のリラクゼーションや深呼吸の指導をうけてリラックス法を学びます。
市販の睡眠補助薬とほかの薬を服用する場合は、医師や薬剤師に相談したうえで添付文書の指示に従って服用してください。市販薬は長期間使用することを意図したものではありません。また、市販薬を服用している間はアルコールを飲まないでください。
サプリメントは、どれくらい不眠症に対して効果があるかの科学的証拠のないものがほとんどといわれています。サプリメントを試す前に医師に相談してください。
不眠症の原因となる疾患や不眠症の症状によっては、薬を処方して治療します。
処方される睡眠薬は、睡眠を改善するのに役立ちます。副作用には、過度の眠気、思考の停止、平衡感覚障害などがあります。まれに顔の腫れ、重度のアレルギー反応、睡眠中の異常行動(運転や食べ物の摂取)などの重篤な副作用が起こることもありますので、処方される睡眠薬は長期間使用することは推奨されません。
処方される睡眠薬は、症状を緩和することはできますが不眠症の治療法ではありません。定期的に使用すると、不眠症が再発することもあります。これは、睡眠薬の服用をやめ、前よりも悪化したときに起こります。また、特定の健康問題がある場合、睡眠薬は安全でない可能性があります。睡眠薬が、効果があるかどうかは医師に相談してください。
加齢により、必要な睡眠時間が少なくなります。また、睡眠時間が5〜6時間しか必要ない人もいますが、ほとんどの人は7〜8時間必要です。人によって必要な睡眠時間は違いますが、睡眠の周期は3時間周期で起こるといわれているので、少なくとも3時間の睡眠は連続してとることが必要です。十分な睡眠は、健康的な食事とともに活力となります。疲れて眠れない日が続いているようなら、医師に相談してみましょう。