記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/6/30
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
授乳は赤ちゃんに必要な栄養を与えるのはもちろん、お母さんと赤ちゃんとの大切なコミュニケーションの時間でもあります。そんな授乳時に胸をさわって「なんだかゴリゴリする・・・」という感触があったら、それは“乳腺炎”と呼ばれる症状の可能性が高いです。
乳腺炎とは、乳汁のうっ滞や細菌感染によって起こる乳腺の炎症です。痛み・膿・しこり・赤く腫れるなどの症状が見られます。授乳中によく発症する乳腺炎は“うっ滞性乳腺炎”といわれ、母乳が乳房内にたまり炎症を起こすものです。痛みがないのに乳房が腫れる場合には、ごくまれにですが炎症性乳がんの可能性があるので、このような症状が出現した際には乳腺専門の医療機関を受診してください。
授乳中にできるしこりの多くは、母乳がたまってできたものであり、乳がんのしこりとは別物です。
しかし、できたしこりが乳瘤や乳腺のつまりによるものなのか、そうでないのかを判断するのは素人には難しいものです。赤ちゃんに母乳を飲ませてもしこりが小さくならない、乳房が不自然に引きつれる・凹む、という場合は早めに乳腺外科を受診した方が良いでしょう。
結論から言うと授乳中でも乳がん検診を受けることはできます。ただし、授乳中の乳腺はよく発達していており非授乳時とは異なるので、マンモグラフィー検診での診断が難しい場合があります。そのため超音波検査を受けたほうが乳がんを正確に発見しやすいとされています。
超音波検査では乳房表面にゼリーを塗り、その上からプローブと呼ばれる機械をあてて検査します。マンモグラフィーのように微細なしこりや石灰化を発見するのは難しいですが、触診では検出できない小さな病変を見つけることができます。
母乳を通して乳がんが赤ちゃんにうつることはないと証明されています。そのため、乳がんの治療をスタートする前であれば引き続き授乳をしても問題はありません。しかし、詳しい検査や投薬などの治療が始まると残念ながら断乳せざるを得ないことが多です。また、手術が予定される場合にも母乳を止める必要があります。
確かに授乳後は乳がんのリスクが下がるというデータもありますが、それでも乳がん検診は必要です。「卒乳後1年、少なくとも半年経っていないと正しい診断ができない」と耳にしたことがあるかもしれませんが、実際はそのようなことはありません。
断乳後はもちろん、授乳中に検診を受けても良いほどです(マンモグラフィー検査では判定が難しくても、超音波検査など別の方法もあります)。
むしろ妊娠中の検査のほうが難しいとされているため、人によっては2~3年ほど期間が開き、その間に乳がんが進行してしまう可能性があるのです。
そのような事態を避けるためにも、早期発見のためにも、定期的に検診を受けましょう。
授乳中に見つけたしこりがすべて乳がんであるとは限りません。今回見てきたように、乳腺炎という授乳中に起こりがちな症状である可能性は大いにあります。
しかし、専門家以外の人が自分で判断するのは難しいもの。
少しでも心配ならば、念のため乳がん検診を受けることがおすすめです。