記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
2017/7/2 記事改定日: 2019/10/7
記事改定回数:2回
記事監修医師
前田 裕斗 先生
妊娠中にお酒を飲まないほうがいいことを知っていると思いますが、赤ちゃんにどんな影響があるかを知っていますか?
この記事では、妊娠中の飲酒がお腹の赤ちゃんにどう影響するかを説明していきます。
妊娠中にお酒を飲むと、胎児に長期的な害をもたらすことがあります。
このため、胎児へのリスクを最小限に抑えるために、妊娠初期はもちろん、妊娠中は禁酒することが推奨されています。
飲酒をすると、アルコールが血液から胎盤を通じて胎児のもとに流れます。
胎児の肝臓は最後に発育する臓器です。妊娠後期にならないと成熟しないため、妊婦さんがお酒を飲んで胎盤からアルコールが流れてきても、胎児は分解することができないのです。
妊娠中に飲酒し続けると、胎児の成長に深刻な影響をおよぼすおそれがあります。特に、妊娠3カ月以降も飲酒し続けると、流産、早産、低体重児のリスクが高くなります。
また、飲酒は出生後の赤ちゃんの成長にも影響を及ぼすことがあります。それは胎児性アルコール症候群(FAS)と呼ばれるもので、学習困難や落ち着きのなさなどがみられるようになります。
胎児アルコール症候群(FAS)とは、妊娠中の飲酒が原因で胎児に発症する症状で、身体的・精神的な影響を及ぼすものです。
胎児アルコール症候群を発症すると、お腹の中での成長が遅くなって低体重・低身長の赤ちゃんが生まれることがあります。
また、無事に生まれることができても、外見の奇形(眼球が小さい、顔が平らである、鼻が低いなど)がみられたり、学習や記憶力、注意力、コミュニケーション能力などに遅れがみられたり、ADHDやうつ病といった精神科的な問題や、まっすぐ歩けないといった障害などが生じることもあります。
現在のところ、妊娠中に飲酒しても胎児に影響がないといえる量は分かっておらず、人によっては少ない飲酒量でも胎児アルコール症候群を発症する可能性があります。
これは胎児のアルコール処理能力が低いことや、いったん羊水に排泄されたアルコールを胎児が飲むことで、再び胎児の体にアルコールが取り込まれてしまうことなどが原因と考えられています。
妊娠に気づく前(妊娠超初期)のとき、飲酒をしてしまった・・・ということもあると思います。
この段階で気づかずにお酒を飲んでしまっても、胎児への影響は低いので心配することはありません。
実際、妊娠に気づかないままお酒を飲んでしまった方でも、健康な赤ちゃんを産んでいるママはたくさんいます。ただ、もし、どうしても気になる場合は医師に相談してみてもよいでしょう。
ほとんどの妊婦さんは妊娠初期の段階で味覚が変わるので、お酒をまずく感じるようになります。
そういった背景から、妊娠期間中に禁酒することはそれほど難しくないといわれています。
ただ、気をつけてほしいのは、ノンアルコール飲料で禁酒をしようとすることです。
市販のノンアルコール飲料には、ごくわずか(1%未満)ではあるもののアルコールを含んでいるものがあります。
1%未満とはいえ、蓄積すれば胎児への影響はゼロとはい言い切れません。
そういった意味では、ノンアルコール飲料も控えたほうが無難です。
母乳はお母さんの血液から作られていますので、授乳中に飲酒をすると血液中のアルコールが母乳にも含まれることになります。
母乳に含まれるアルコール濃度は微量ですが、授乳期の赤ちゃんは肝機能なども未熟でアルコール分が体内に入ってしまうと大きな負担を与えることになりかねません。
母乳育児をしている方は、妊娠中と同じく産後もお酒を控えるようにしましょう。
出産経験のある人から、「たまの飲酒であれば大丈夫」と聞いたりすることがあるかもしれません。しかし、「妊娠中に摂取しても絶対に問題ないアルコールの量」はまだ確立していません。したがって、妊娠が判明した時点、あるいは近々妊娠したいと考えているなら飲酒は控えたほうが無難です。
妊娠中の不意のトラブルはもちろん、出産後の赤ちゃんにつらい思いをさせないためにも、妊娠中、授乳中の間は禁酒しましょう。