記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
肩こりがひどいなあと思っていると、腕を上げるときにズキンときて、腕が上がらなくなる、首もうまく回らない、電車のつり革につかまるのが難しい……。
そんな症状で悩んでいませんか?
それって、もしかして五十肩かもしれません。五十肩って、どんな症状なんでしょう? また治し方は?
そんな疑問に答えるために、五十肩の症状と直し方についてまとめました。
肩関節の痛みと持続的な肩の硬直状態2つが、五十肩の主要な症状です。
五十肩になると、正常時では動く範囲の動作でも肩に痛みが起こります。ときには、全ての可動範囲で痛みを伴い、普通に日常生活を送ることも困難になるほどです。
たとえば、次に挙げる日常動作が難しくなることがあります。
・入浴
・服の着衣
・運転
・快適な睡眠
また、日常生活に支障が出るようなことはなく症状も軽度ですが、肩が固まってしまい動かせないような状況になることもあります。
五十肩だと思われる場合、運動や日常の動作に支障をきたす肩の痛みが持続している場合は、早めに医師の診察を受けましょう。
五十肩は、通常、数ヶ月または数年にわたって徐々に悪化していきます。
症状には3つの段階がありますが(下記のステージ参照)、ときにはこれらの段階を区別するのが難しい場合もあり、症状の現れ方や進行の仕方は人によって大きく異なります。
ステージ1は、しばしば「凍結する前の」段階と呼ばれます。肩が痛くなり、何かをつかもうと手を伸ばしたときに、非常に強い痛みを生じます。
また、夜間や患部の肩を下に寝ているときに痛みが悪化することもよくあります。
このステージは、2~9ヶ月間続くといわれています。
ステージ2は、しばしば「凍結した」段階と呼ばれます。肩がますます硬くなることがあっても、痛みは通常悪化することはなく、逆に低下していきます。
肩の筋肉は、使用されていないため、少し痩せ始めます。このステージは通常4〜12ヶ月続きます。
第3段階は「解凍」段階と呼ばれます。
この期間中、徐々に肩が動くようになります。痛みは消え始めますが、ときには硬直が緩和するとぶり返すこともあります。
肩の動きは完全には戻らないこともありますが、可能な日常動作は増えていきます。
ステージ3は6ヶ月から数年続く可能性があります。
五十肩の治し方は、痛みや硬直の重症度などの「病状の段階」によって異なります。
治療を受けなくても、時間の経過とともによくなることもありますが、回復は遅くなる傾向にあり、少なくとも18〜24ヶ月かかるとされています。中には5年以上改善されないこともあります。
五十肩には、さまざまな治療法がありますが、どれが一番効果的があり一番適しているのかはわかっていません。
以下で紹介する治し方は、肩の痛みを軽減し、肩が治癒する間に、関節の動きを保つために効果的とされている方法です。
五十肩は、痛みが出始めた最初の段階の治療が、最も痛いとされています。そのため、治療は主に痛みを和らげることを中心に行なわれます。
この段階では、ストレッチなどの痛みを悪化させる活動は控えるよう、医師に指導されることがほとんどでしょう。
痛みがある場合、以下のような鎮痛剤を処方されることがあります。
・パラセタモール
・パラセタモールとコデインの組み合わせ
・非ステロイド性抗炎症薬(NSAID) – イブプロフェン
いくつかの鎮痛剤は、処方箋なしで薬局からも入手できます。服用する際は、必ずメーカーの指示に従って、正しい容量を服用するようにしましょう。
また、長期的に鎮痛剤、特にNSAIDを服用すると副作用のリスクが高くなる可能性があります。詳細については、薬の説明書をよく読むようにしてください。
鎮痛剤で効果が見られない場合、肩関節にコルチコステロイドを注射することがあります。コルチコステロイドは、痛みや炎症を軽減するために効果的です。局所麻酔薬と同時に投与されることもあります。
コルチコステロイド注射は、肩に痛みがある場合のみ有効であり、痛みが消え、肩の硬直だけが残っている状態では使用しません。
コルチコステロイド注射を打ちすぎると肩の組織が傷つくことがあります。そのうえ、注射の効果が少なくなることが多いので、3回以上の注射はしないように推奨されています。次の注射までには、少なくとも3〜4週間の期間を空けましょう。
五十肩は、初期の痛みがひどい段階を越えると、肩が可動域が著しく小さくなります。この段階になると、体のストレッチが推奨されたり、理学療法士を紹介されたりします。
五十肩の治療には、肩の関節を動きやすい状態に回復させるため、負荷がかかりすぎない程度のストレッチを定期的に行なうことが重要です。
肩を使わないでいると、動きがさらにが悪化する可能性があります。これまでと同じように、肩を動かすよう心がけましょう。
肩の状態によっては運動すると痛みを伴うことがあるので、その場合は医師や理学療法士に相談しましょう。
自宅で毎日できるような肩に負担がかからない運動はいくつかあるので、きちんと教えてもらうようにしましょう。
理学療法士は、リハビリとして肩の動きや肩関節の柔軟性を保つための有効な運動やストレッチを指導してくれます。
主なリハビリは以下になります。
・ストレッチエクササイズ(あらゆる方向に関節を動かすため、特定の技術を用いることができる)
・マッサージ
・温熱療法
・温冷湿布を使い、温めたり冷やしたりする
・経皮的電気神経刺激(TENS)
・指圧マッサージ
・鍼
五十肩になっても、手術が必要になることはほとんどありません。しかし、症状がひどく、6ヶ月経っった段階で効果・回復が見られない場合は、手術を推奨されることがあります。
突然肩の痛みが現れると、どうしてよいかわからず不安になることでしょう。まずはゆっくり休養をとり、時間を見つけて病院を受診ししてください。医師に相談しながら、症状を抑え回復するために適切な治療を受けるようにしましょう。