記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
2017/7/10
記事監修医師
東大医学部卒、セレオ八王子メディカルクリニック
二宮 英樹 先生
ほとんどの病気に言えることですが、うつ病も初期の段階で治療することが大切です。うつ病を発症したまま長い時間が経つと、神経栄養因子が減ってしまい脳そのもがダメージを受けるので治りにくくなってしまいます。より早い発見・治療につなげるためにも、今回はうつ病のサインと考えられる症状についてまとめました。
こころの病気のなかには、体の症状をともなうものが決して少なくありません。たとえば、疲れが取れない、動悸やめまいがするといったことが心の病気でも起ります。ここでは、代表的な初期症状について詳しく見ていきましょう。
涙を流すという行為には、たまったストレスや不安を吐き出すという効果があります。「泣いたらスッキリした」と感じるのは、涙を流すことでストレスを解消しているからとも考えられます。無意識に涙が出るとは、ストレスが限界に近いことを脳が防衛反応として涙を流して知らせてくれている状態です。
睡眠は安心な状態になったら眠る、疲れたら眠る、夜だから眠るという3つの仕組みで調節されています。つまり、よく眠れない理由として、安心できない状況にある、脳が疲れていない、身体と脳が夜の状態になっていないということなどが挙げられます。
心配事で眠れない日が続くと、今度は“眠れなかったらどうしよう”という不安が高まってくるでしょう。こうなるとその日の出来事と関係なく、毎晩寝つくのに苦労するようになってしまうのです。
これは、不安な状態や緊張している状態が長くなってしまうことが原因と考えられます。不安や緊張状態が長く続くと、筋肉や神経は通常時よりも疲弊しやすくなるといわれています。また、先述した“睡眠不足”も気だるさや慢性的な疲れの原因のひとつです。
通常、交感神経の働きが高まるのは、不安や緊張などのストレスがかかる状態にあるときです。交感神経が活発になると、筋肉が緊張し、血圧や心拍が上がり、呼吸が浅くなります。反対に、副交感神経が活発になると体は緩み、血圧や心拍が低下し、リラックスした状態になります。
緊張する場面でもないのに胸がドキドキする、めまいを感じるという場合は、まずは内科や循環器内科、耳鼻科などの身体科を受診してください。検査を行っても異常が見つからないのなら、原因としてストレスの影響や精神疾患が考えられます。“少しストレスがたまっているだけだから大丈夫”と軽く考えずに、早めに精神科や心療内科などの医療機関で相談することがおすすめです。放っておくうちに精神疾患が発症し、それが悪化してしまう可能性も考えられます。自分だけで判断せず、早めに医師や専門機関に相談しましょう。
うつ病の人は、悲観的な思考回路に陥りがちです。そのため、気分の落ち込みがますますひどくなり、そのサイクルを繰り返す「悪循環」が起こります。最悪の場合、絶望から自殺につながることさえあるのです。
また、うつ病になると夜に眠れなくなることが多くなります。寝不足の状態が続くと、セロトニンなどの神経伝達物質が減るために、うつがさらに悪化してしまいます。
特に好ましくないのは、「眠れるように」とお酒を飲むことです。アルコールの摂取はセロトニンの分泌量の低下につながるため、うつ病のときにアルコールを飲むとよけいに状態が悪くなると言えるでしょう。このような負の連鎖にはまらないために、あるいは早く抜け出すためにも、専門機関で早期の治療をしてください。
うつ病は放っておくと改善しにくいだけではなく、アルコール中毒や自殺などさらに悪い結果につながる可能性があります。そのような事態を招かないためにも、心あたりや思い当たる症状がある場合は、早めに医師や専門家に相談するようにしましょう。