記事監修医師
産業医科大学第1外科
佐藤 典宏 先生
2017/2/17
記事監修医師
産業医科大学第1外科
佐藤 典宏 先生
通常、心臓は一定のリズムを保って拍動します。不整脈では、そのリズムが速かったり、遅かったり、スキップしたりします。心拍が速すぎるときは、頻脈(ひんみゃく)といい、遅すぎるときは徐脈(じょみゃく)といいます。 不整脈は、心臓が不規則に鼓動する(拍動がスキップする、または余分な拍動を打つ)ことを意味します。
ほとんどの人は、ときどき心臓がドキドキしたり心臓の拍動が不規則に打つのを感じることがあります。 感情の激しい変化や運動したときに起こるこれらの変化は、不整脈の徴候ではありません。しかし、より頻回に発生する不整脈や、以下のような症状を伴う不整脈は、より深刻であり、医師に相談する必要があります。
・動悸や胸の急激なドキドキ感
・疲労感
・頭のふらつき
・失神
・息切れ
・胸の痛み
ほとんどの不整脈は軽く、危険を伴うものではありませんが、なかには治療を必要とするものもあります。 心臓病を患っていたりすると不整脈があるとより深刻になります。
心臓には4つの区画(室)があり、上にある2つを「心房」、下の2つを「心室」といいます。心室で起こる不整脈は、心房で起こるものよりも深刻です。
不整脈の種類や状況によって、治療が必要かどうかが異なります。不整脈には、次のようなものがあります。
・心房細動
心拍が速く不規則に鼓動します。 このタイプの不整脈は治療を必要とし、脳卒中のリスクを高める可能性があります。
・発作性心房頻拍症
心拍は速くても規則正しく拍動することがあります。 このタイプの不整脈は違和感があるかもしれませんが、危険ではありません。
・異所性の拍動
心臓には余分な鼓動があります。 連続して起こっても、心臓に問題(心臓病や先天性心不全など)がなければ、治療は必要ありません。
・心室頻拍および心室細動
心拍が速すぎて、十分な血液を送り出すことができないものです。 これらの不整脈は非常に危険であり、迅速な治療が必要です。
心臓を仕切る壁が同時に収縮することで、血液が室に押し込まれます。 収縮は洞房結節(ペースメーカーの役目をする)が送り出す電気信号によって制御されます。 心臓が異常な神経刺激や血液中のホルモンの作用などのために収縮速度を維持できなかったりすると不整脈が起こります。
軽度の不整脈は、アルコールの過剰摂取、喫煙、カフェイン、ストレスまたは運動などで起こることがあります。 不整脈の最も一般的な原因は、心疾患、特に冠動脈疾患、心臓弁機能異常および心不全によるものです。
不整脈を調べる検査には、次のものがあります。
・心電図検査(ECGまたはEKG)
横になって、安静時の心臓をモニターします。
・トレッドミル検査
ウォーキングマシンの上を歩きながら心臓をモニターします。
・ホルター心電図
毎日の生活で心臓をモニターするための方法です。24時間心臓のリズムを記録する機器を装着します。
24時間以上心臓をモニターしたいときは数日またはそれ以上の時間装着できるイベントレコーダー検査があります。
・心臓電気生理学的検査(EPS)
電極カテーテルという細い管を、足の付け根や鎖骨下の静脈から心臓に向かって数本挿入して心臓に関するデータを収集します。
軽度の不整脈は、治療の必要はありません。 ほかの原因疾患が不整脈を起こしているとき、は薬で治療することができます。
不整脈がより深刻な場合、次のような治療法があります。
・人工ペースメーカー植え込み術
胸の皮膚の下に人口のペースメーカー機器を植え込むことで心臓の定期的な鼓動が維持できます。植込み型除細動器(ICD)は、心臓の働きを回復する補助人工臓器として普及率が高くなっています。
・心房細動電気ショック治療
異常なリズムを止めさせ、正常なリズムを回復させるために使用します。
・手術
特定のタイプの不整脈を治療することができます。 たとえば、冠動脈疾患によって起こる不整脈は、バイパス手術によって制御することができます。
軽いものでは治療しなくても済むといっても、心臓に起因するだけにこわい不整脈。心臓病の予防には血圧、糖尿病、コレステロール値を自己管理して、禁煙することが効果的です。普段から健康的な食事、適切な体重、定期的な運動を続けることで心臓病を防ぎたいですね。