記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/8/1
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
糖尿病性ケトアシドーシスは体内のインスリンが極端に少なくなったときに起こる深刻な症状で、長時間における糖尿病性昏睡や死を招くこともあります。糖尿病がある場合はケトアシドーシスのリスクや発生した場合の処置を知っておくことが重要です。
糖尿病性ケトアシドーシスとは糖尿病をお持ちの方の緊急事態です。ケトアシドーシスとは、体内にケトン体という物質が蓄積することで起こります。ケトン体は体内で糖分がうまくエネルギーとして使えない時に体内で作り出され、コントロール不良の糖尿病などで蓄積します。ケトン体の中には酸性の物があるため過剰に体内にケトン体がたまると強いアシドーシス(血液が酸性に傾くこと)をきたし体に様々な異常が現れます。ケトン体が原因のアシドーシスのことをケトアシドーシスと言います。体にはアシドーシスを抑えるような代償機構が存在しますが、急激にケトアシドーシスが起こると代償機構では抑えきれずに強い症状が出現し致死的になることがあります。
・喉が渇く、口の中が非常に乾燥する
・頻尿
・高血糖
・尿中のケトン体の濃度が高くなる
・意識障害(少しぼーっとする)
・強い倦怠感
・強い脱水症状
・吐き気、嘔吐が2時間以上続く
・呼吸困難
・息が甘い匂いになる
・注意力が散漫になる
・錯乱、混乱状態
糖尿病性ケトアシドーシスの原因は極度のインスリン不足です。インスリンが不足すると血液を流れているブドウ糖(血糖)が細胞の中にうまく取り込めなくなるため体はエネルギー不足の状態になってしまいます。そこでエネルギーを得ようと、緊急事態として血糖の代わりに脂肪が分解されてしまうのです。
体内で脂肪が分解されると副産物としてケトン体が生成されます。このケトン体が血液中に蓄積して強い酸性となり、体に悪影響を与えることがあります。ケトン体は血液検査と同様に試験紙を使用して簡単な尿検査をすることで検出することができます。
ここではケトアシドーシスの予防に効果がある方法をご紹介します。
まず大切なのは、血糖値やケトン体の値を定期的に確認することです。これによって血糖値やケトン体の急激な上昇を防ぐことができます。
次に、治療計画には正しく従いましょう。医師から指示がない限りインスリンの投与を中止しないでください。
また、いくつかの薬はケトアシドーシスのリスクを上昇させる可能性があるため、新薬を服用する際には必ず医師や薬剤師に確認してください。血糖値を下げるのが難しい場合にも医師に相談してアドバイスを受けてるようにしましょう。
多くの場合、治療は病院で行われます。
インスリン注射、点滴による水分の投与、点滴での栄養素の投与などが主な方法です。また、脳、腎臓、肺の問題など、生命を脅かす問題があるかどうかを厳密に検査します。十分に飲食ができ、検出されたケトン体が安全なレベルであれば退院することができますが、通常は数日間の入院が必要になります。退院する前には、医師にケトアシドーシスが起こった原因と再発防止のために今後何ができるのかについて訊ねてください。
糖尿病の怖さは多くの合併症を引き起こすことにあります。糖尿病性ケトアシドーシスもそのひとつで、長時間における糖尿病性昏睡や死などの深刻な状態を招くものです。糖尿病の場合は現れる症状や対処法を事前に学ぶようにしてください。ケトアシドーシスになってしまっても、早い段階で気づくことができれば重篤な状態に陥る危険を避けることができるからです。
また、血糖値やケトン体の急激な上昇を防ぐために、インスリンは必ず投与し、値を定期的に測定することを守ってください。