記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/7/25 記事改定日: 2019/7/31
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
「明日はデートだからどうしても二日酔いは避けたい」
「金曜のテンションでハメを外してしまった・・もうお酒は一生飲みたくない」
こんな気持ちによくなるあなたへ!
医師 兼 健康オタクの山本康博先生に、二日酔いに関するあれやこれやの一人語りを繰り広げていただきました。お酒好きの方、必見です!
そもそもお酒の「強い」・「弱い」体質かどうかは、両親から受け継いでいるアセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH)がどれくらい働くかによって決まります。
飲酒により体内に入ったアルコール(エチルアルコール)は、胃腸から吸収された後に肝臓でアセトアルデヒドへと変換されますが、このアセトアルデヒドは毒性が強く、悪酔い・二日酔いの原因となります。
ALDHは、肝臓でこの有害なアセトアルデヒドを酢酸という比較的無害な物質に変換してくれる酵素です。ALDHがあまり働かないと、毒性の強いアセトアルデヒドが体内に残りやすいため、飲酒の影響が強く出ることになります。
このALDHには活性型(働きもの)と不活性型(あんまり働かない)が存在し、両親からALDHを作るための遺伝子を1つずつ受け継いで合わせて2つを持っています。このため、大まかに以下の3パターンに分けることができます。
①のパターンではアセトアルデヒドの変換がとても優れているので、お酒にとても強いとされています。ただし、お酒がたくさん飲めるぶん悪酔いしやすく、またアルコール依存症となるリスクも高いので注意しましょう。逆に③のパターンはアセトアルデヒドをほとんど分解できず、少しのお酒でも強い症状が出ます。いわゆる「下戸」と言われる人です。
人によってお酒が強い弱いはあると思いますが、僕はどちらかというとお酒は弱い方で多分②のパターンではないかと思います。なので、付き合い方としてはそもそもの飲酒量を制限することに気をつけています。それが薬を用いたりするよりも自然な対処法だと思うからです。
またアルコールは吸収がとても早く、速やかに肝臓でアセトアルデヒドになりますが、この酔い症状の原因のアセトアルデヒドの分解速度には限りがあります。ですので吸収を遅らせたほうがアセトアルデヒドによる症状は出づらいと考えられます。吸収を遅らせるために飲む前に何か食べ物を胃に入れておいたり、お食事と一緒にお酒を飲むのがおすすめです。空腹時にお酒を飲むと早く回ってしまうのはみなさん経験されたことがあると思いますが、アルコールが急激に吸収されてアセトアルデヒドができやすいからと考えられます。
二日酔いには実は様々な原因が存在します。
このため、二日酔いの対処法というのも、それぞれの原因に対して個別にアプローチするのが適切です。二日酔いの対策というのは医学的に論文などを根拠に確立されたものではないので、以下はそれを踏まえて参考になさってください。それぞれのサプリメントや漢方も薬剤であることにはかわりなく、予期せぬ副作用が見られることもあるため、特に持病をお持ちの方は使用に際しては医師への確認が必要です。また、これらの薬剤やサプリメントを推奨している訳でもありません。
クルクミンが含まれているウコン、αリポ酸(ALA)、N-アセチルシステイン(NAC)、グルタチオンなどの抗酸化物質が二日酔いに効いたという記事をよく見かけます。これは、肝臓でのアセトアルデヒド分解を促進するという機序で二日酔いに効果があるとされます。
ナトリウムなどの電解質を含んだ水分は吸収が早いため、脱水症状の改善に効果が高いです。最近では電解質や糖分が含まれ吸収がとても早い経口補水液も、脱水の改善に適切と考えられます。また、これらは糖も含んでいるため低血糖の改善にも効果が期待できます。
また、インターネットなどでは五苓散(ゴレイサン)という漢方薬が二日酔いに効くという記事をよく見かけます。五苓散は文字通り5つの生薬(しょうやく)でできており、もともとの効能は二日酔いなくではなくむくみがある人向けの漢方ですが、飲酒で生じた水分バランスの異常を整えるため二日酔いにも効くとされています。
ふらつき、冷や汗など低血糖が生じる可能性があります。原因として、飲酒によって食事からの糖質の摂取が減少すること、そしてアルコールによって肝臓への負担のため空腹時の肝臓からの糖の産生(糖新生と言います)が低下するためと考えられています。低血糖の症状があるようでしたら、何か甘いものを食べるようにしましょう。吸収の速さを考慮すると、上記のように経口補水液などが適切と思います。
アルコールには、胃酸の分泌を促進する効果があるとされます。また、胃と食道の間の括約筋を緩めるため、逆流性食道炎の症状が増悪するとも言われています。お酒を飲んだ次の日の胸やけは胃酸過多や逆流による症状である可能性があります。もしお持ちであれば、制酸薬や胃の粘膜を保護する薬は症状の緩和に役立つかもしれません。
また二日酔いの中、むくみをとるためにサウナに入ったり、ジムに行って無理に汗を流そうとするのは体に良いと思い、積極的に行う人もいるかもしれません。たしかに、汗をかくことででむくみはとれますし、スッキリするという効果はあると思います。
ただし、アルコールを飲んでむくんでいる場合は、上述したように体内の水分や電解質のバランスが崩れている可能性があります。ですから、その上で無理やり汗をかいて水分や電解質を出してしまうと、場合によってはさらにバランスを崩してしまう可能性がありますので注意しましょう。
また”迎え酒”も、アルコールで頭痛などの感覚を鈍らせているだけなのであまりよくありません。”朝、お酒を飲む”という行為はアルコール依存症の基準の一つにもなっているほど危ないので控えましょう。
お酒はほどほどに。適量で楽しみましょう。