記事監修医師
産業医科大学第1外科
佐藤 典宏 先生
2017/3/14 記事改定日: 2019/8/29
記事改定回数:3回
記事監修医師
産業医科大学第1外科
佐藤 典宏 先生
記事監修医師
前田 裕斗 先生
記事監修医師
東大医学部卒、セレオ八王子メディカルクリニック
二宮 英樹 先生
女性の腟は、月経や出産に備えて形づくられています。女性にとって大事な部分だからこそ、どのような状態が正常で、どうなっていると病院で診てもらったほうがいいのかを知ることが大切です。以下、腟について一問一答形式で解説します。
腟や外陰部の形やサイズ、色はさまざまです。色も、淡いピンクから深い褐色の赤ピンクなどさまざまです。
腟は男性のペニスや出産に合わせて伸びるため、非常に伸縮性があります。そのため、腟の形を保つには、周辺の筋肉を鍛えるための骨盤底エクササイズがおすすめです。骨盤底の状態をキープしておくと、性行為時の機能を改善できます。ウォーキングやランニングも有効です。
女性の中には、陰唇の大きさ(腟の外の唇状の部分)を気にする方がいますが、基本的に心配する必要はありません。大きさは個人差があるので、周りと比べて落ち込まないようにしてください。
腟分泌物は、腟の古い細胞を排出して清潔に保ったり、膣内のpHを整えるために分泌されています。色と量は毎月一定の変化がありますが、通常、透明か乳白色で、悪臭がしなければ問題ありません。量は、排卵期や妊娠中に多くなることもあります。色や臭いが大きく変わった場合は、性感染症の可能性があります。
分泌量の増加、色やにおいの変化、分泌物に血が混じる、腟内やその周辺の刺激、かゆみ、炎症を伴う場合は、「腟炎」の可能性があります。腟炎を起こす病気として、クラミジアや淋菌などの性感染症、トリコモナス膣炎、性器カンジダ症、細菌性腟症などの感染症も含まれます。また、健康な腟内の細菌バランスが乱れたときも分泌異常が起こります。一部の石けんやバブルバス、抗生物質、糖尿病、妊娠や感染症など、考えられる原因はたくさんあります。
トリコモナス腟炎は、腟トリコモナス原虫という微生物が原因で発症する病気で、性行為でうつります。男性は感染しても症状が出にくいため、感染していることに気づいていない男性から女性にうつることが多いです。発症すると、以下のような症状がみられます。
このような症状が月経期間中にひどくなった場合は、トリコモナス腟炎の可能性を疑ってください。もしこの病気だった場合は経口抗生物質で治療します。なお、女性のトリコモナス腟炎が治っても、パートナーの男性からまたうつって再発する可能性があるため、パートナーも同時期に治療(内服)することが大切です。
性器カンジダ症は、カンジダ菌という真菌によって起こります。カンジダ菌は健康な人の皮膚や粘膜に存在する常在菌です。しかし、免疫系の低下や常在菌が抗生物質でやられてしまうなど、何らかの原因によってカンジダ菌が増殖しすぎてしまうと、性器カンジダ症としての症状があらわれます。
カンジダ菌は健康な人の皮膚にもいる常在菌なので、必ずしも性行為が原因で発症するわけではありません。また女性が性器カンジダ症を発症していても、性行為で女性から男性にうつる心配はほとんどありません。
腟に抗生物質を入れることで治療しますが、経口薬での治療も可能です。
細菌性腟炎は、腟の常在細菌とは別の細菌が増殖した状態です。カンジダやトリコモナス、淋菌といった、性器感染症を起こしやすい特定の原因微生物が原因ではない場合このように呼ばれます。発症すると、以下のような症状がみられます。
細菌性腟炎を発症した場合、経口抗生物質や腟剤で治療します。
以下の方法が効果的です。
健康な腟は普通、かゆみがありません。かゆみが強い場合は性器感染症の可能性があるので、かゆみが持続している場合は病院を受診してください。
デリケートゾーンの悩みは周りに相談しにくいぶん、「普通」の基準がわからないものです。気になる症状があったら、恥ずかしがらずに病院を受診してくださいね。
※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。