記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
糖尿病の治療の一環としてインスリンや他の治療薬を服用する薬物治療ですが、使われるインスリンや薬剤の種類や使用方法についてはご存知ですか?
今回は、そんな糖尿病の治療薬について医師監修の情報をお伝えします。
治療に使用する薬剤は、糖尿病の種類と薬が血糖値をどれだけうまくコントロールするかによって異なります。また、糖尿病以外の健康状態や薬の服用が患者さんの生活リズムとどれくらい合っているかなどの要因も考慮して決定します。
以下に、代表的な糖尿病とそれぞれの治療に使用される薬剤を紹介します。
1型糖尿病の場合は体内でインスリンが生成されなくなるため、インスリンを体外から投与する必要があります。通常は1日に数回インスリン皮下注射を行いますが、インスリンポンプを使うと1日を通して安定した量のインスリンを摂取することもできます。
2型糖尿病の場合は健康的な食生活を送り、運動などを取り入れてより活動的に過ごすことで、薬剤を使わずに病気をコントロールできるケースがあります。
ただし、糖尿病治療薬が必要な2型糖尿病の場合も多く、内服の糖尿病薬やインスリン皮下注射などが使われます。また、中には複数の糖尿病治療薬が必要になることもあります。
妊娠糖尿病の場合は健康的な食生活と定期的な身体活動を取り入れながら血糖値をコントロールすることが大切です。
血糖値がとても高い場合には速やかに血糖値を下げる必要があるため、なかなか血糖値が改善しない場合は妊娠中に服用しても安全な糖尿病薬の服用を提案される場合もあります。
ここでは、代表的なインスリンの投与方法を紹介します。
ほとんどの糖尿病患者は便利なインスリンペンを使うことが多いですが、その他にも注射針と注射器、インスリンポンプを使う投与方法があります。
インスリンを投与する方法は患者さんの生活リズムや副作用などによって異なるので、医師と相談しながら自分に合う方法を選びましょう。
インスリンペンはペンに似た形をした注射器で、使いやすさからインスリンペンを使っている患者さんが多いです。
ペンの中にはあらかじめインスリンがセットされていて、使い捨てのものと、使い切ったらインスリンのカートリッジを取り替える交換型のものがあります。
注射針と注射器を使ってインスリンを投与する方法です。
インスリンはお腹に注射するのが最も速く効きますが、もも、臀部、または上腕に注射をしてもかまいません(どの部分に注射をするかについては医師に相談してください)。
血糖目標を達成するために1日に2〜4回の注射が必要な場合もあれば、1回の注射で十分な場合もあります。
インスリンポンプは1日を通して少量のインスリンを安定して投与してくれる小さな機械です。小さなプラスチックチューブと小さな針につながっていて、機械からポンプを通してインスリンを24時間体に送り込むことができます。また、食事中にインスリンを投与することもできます。
1種類のポンプをベルトやポケットまたはポーチなどで体の外側に身につけ、肌の下に針を刺したままで数日間その場所にとどめた状態にして使用します。
注入ポートには皮下組織に挿入する短いチューブがあり、それを皮膚の表面に接着パッチまたは包帯で所定の位置に固定します。そして、ポートを通して注射針と注射器、もしくはインスリンペンでインスリンを注射します。ポートは数日間その場所にとどめた後、新しいポートと交換します。
注入ポートを使うと毎回注射するたびに肌に針を刺すこ必要がなく、新しいポートを使う時にだけ刺せばいいというメリットがあります。
2型糖尿病を管理するためには、健康的な食事や身体活動に加えて治療薬が必要な場合があります。
血糖値を下げる飲み薬のことを『経口血糖降下薬』と呼び、どの経口血糖降下薬を使用するかは糖尿病の状態や原因によって異なります。
代表的な経口血糖降下薬は以下の通りです。
・スルフォニル尿素薬(SU薬)
・ビグアナイド薬(メトホルミン)
・α- グルコシダーゼ阻害薬
・速効型インスリン分泌促進薬
・チアゾリジン薬
・DPP-4阻害薬
・SGLT2阻害薬
副作用は経口血糖降下薬の種類によって異なりますが、中でも最も多い症状は低血糖です。
副作用を防ぐためには、自分で勝手に薬の量を調節したり飲み忘れがないよう、医師の指示を守って服用することが大切です。
また、スルフォニル尿素薬(SU薬)を服用している場合に多くみられる症状として「二次無効」があります。二次無効とは、ひとつの薬剤を長く飲み続けているうちに薬の効果が弱まってしまうことです。
薬剤を服用しても血糖値コントロールが改善しない・あるいはしにくくなってきた場合は、医師に相談して薬剤を増やしたり変えてもらうなどして対処してもらいましょう。
経口血糖降下薬を始めると血糖値が改善しやすくなるために、食事療法や運動療法をやめてしまう患者さんもいます。しかし、薬物療法を開始しても食事療法と運動療法は続ける必要があるので、自己判断で勝手にやめないよう注意してください。
薬剤の処方箋を受け取ったら、医師に以下のことを確認しましょう。
・薬剤の名前と効果について
・服用するタイミング、1日の服用回数、1回の服用量
・薬剤がどのくらいの時間作用するか
・服用しているときに避けるべき食べ物や他の薬の有無
・服用し忘れた場合の対処法
・病気で食べ物を戻してしまう場合でも、薬を服用するべきかどうか
・糖尿病薬が低血糖の原因になる可能性があるかどうかについて
・血糖値が低すぎる場合はどうすればよいか
・副作用を引き起こす可能性の有無と対処法
・どのように薬を保管すべきか
糖尿病治療薬には様々な種類がありますが、医師と相談して自分に合ったものを選びましょう。
また、自分がしようする薬剤を服用するタイミングや回数や量、副作用とその対処法などについて知って事前に知っておくことが大切です。
どの薬剤を使用する場合でも、医師の指示を守って服用・投与するようにしてください。