記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
デスクワークやテレビ観賞など、私たちは多くの時間を座った状態で過ごしていますが、それが原因で腰痛に悩まされている人はかなり多いのではないでしょうか。そんな方におすすめなのが「人間工学デザインの椅子」です。この記事では、人間工学デザインの椅子を選ぶメリットや椅子の選び方をご紹介していきます。
古くからある事務椅子は人間の体の動きを念頭にはつくられていませんが、人間工学に基づいてつくられた椅子は、人体の動きをサポートするようデザインされています。人間工学に基づく椅子は座る姿勢を正しくして補正してくれるため、長時間座っても首や肩、腰に負荷がかからないため腰痛が起こりにくいだけでなく、結果として仕事の能率やエネルギーが向上するといわれています。
なお、背もたれの上部の傾きが12度あると、骨盤が立っているときと同じような位置にくるため、脊柱への負担が少ない理想的な姿勢になります。さらにこの姿勢なら肺が最大容量まで膨らむため、酸素が脳に届きやすくなり、エネルギーが増進し、疲れも溜まりにくくなります。
腰痛が起きるリスクを最小限に減らすためには、下記のポイントに注目しながら椅子を選ぶことが重要です。
座面の高さを調整し、座ったときに膝を90度に曲げた状態で足がしっかり地面に着くかを確認しましょう。椅子に高さ調整機能がない場合は、足載せ台を置く方法で調整してもかまいません。
背もたれが腰をしっかり支える(ランバーサポートのような)役割を持ち、かつ胸郭の一部も支えるような構造になっているかどうか確認しましょう(一般的に背もたれの高さが(座面から測って)50cmあれば、十分に腰を支えることができるとされています)。また、背もたれに腰椎パッドを備え付けると、腰まわりにさらなるサポートが加わり、より腰痛対策に有効とされています。
座面は、簡単に動けるよう回転するタイプのものが良いでしょう。また、キャスターがついているものを選ぶ場合は、脚が5本がついているものの方がより安定性が高いです。
肘掛けの位置を調整して、背筋をきちんと伸ばして座ったときに、前腕をきちんと肘掛に置くことができるか確認しましょう。腕の大部分を支えてくれる肘掛けであれば、肩の筋肉への負担が減り、肩こりも起きにくくなります。
腰痛を予防するためには、腰痛になりにくい椅子を選ぶだけでなく、座っているときに下記のポイントを心がけることが大切です。
1.足を床に真っ直ぐつける
2.背中は背もたれにつける
3.座面の前方に体がずれないようにする
4.片側に極端に体を曲げないようにする
5.足を組まない
6.ときどき、背もたれ無しで真っ直ぐ立つ練習をする
1日の半分以上は座って過ごしているという方やデスクワークが中心の方は特に、椅子にこだわることをおすすめします。椅子を変えるだけで、悩みのタネだった腰痛が驚くくらい改善するかもしれません。