記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/8/10
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
喫煙によって肺癌のリスクが高まることは、もはや疑いようのない事実です。しかし、タバコを吸わない人でも肺癌になる可能性があることは広くは知られていません。そこで今回は、タバコ以外の危険因子をご紹介します。
タバコの煙の中にはヒ素やニッケルなどの無機物質や他の有機物質など60種類以上の発癌性物質が含まれています。喫煙することにより、煙の通り道(口腔・喉・肺)はもちろん、唾液に溶けた有害物質が通る消化管(食道・胃)や血液中に移行して排出される血液・肝臓・腎臓などの経路での癌のリスクが高くなるといわれています。
また、喫煙者がさらに癌のリスクを高める要因として、喫煙の開始時期、1日に吸うタバコの本数が多いことなどがあげられます。
喫煙と肺癌との関係については古くから指摘されていて、第二次世界大戦前から症例に基づいた喫煙歴と肺癌との関連性の研究が存在していました。
その中でも、ドイツのミュラーが1939年に肺癌症例の喫煙歴を調べてその関連を指摘したものが有名で、近年では“国際がん研究機関(IARC)”での研究が注目されています。
【出典: 厚生労働省ホームページを編集して作成 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/tobacco/t-03-001.html】
残念なことに、タバコを吸っていない人も肺癌になる可能性があります。
肺癌の原因は喫煙だけでなく、環境因子、職業上のリスク、電離放射線、家族歴なども含まれているからです。
自身はもちろん、友人や家族も喫煙していない、そして受動喫煙もほぼないという非喫煙者でさえ肺癌に罹ったという人もいます。
また、二次喫煙や副流炎の危険性はヘビースモーカーの配偶者(非喫煙者)や、職場でタバコの煙にさらされていた非喫煙者の研究によって十分に証明されています。
産業ガスや粉塵は強力な肺癌誘発物質です。
危険な吸入物質として特にアスベストが挙げられます。その他、金属精錬や化学工業で使用されるニッケル、クロム塩およびヒ素などの工業物質にも発癌性があることがわかっています。
このように、タバコ以外にも肺癌の要因は多数存在しています。非喫煙者であっても肺癌になる可能性があるということを理解しておきましょう。
肺癌治療にとって早期発見は特に重要とされるポイントです。
肺癌を早期に発見できれば、患者は早い段階で手術や放射線による根治的な治療の適応となる可能性が高いため、後期に診断された患者よりも予後が良好となることが多いです。
肺癌は重い病気ですが、乳癌などに比べて定期健診の重要性の認識が低いとされ、初期段階の発症に気づかず、発見が遅れてしまうケースが多くあります。また、肺癌がかなり進行するまで症状がでない場合は、さらに治療が困難になります。
喫煙と肺癌の関連性は疑う余地がないものですが、タバコ以外にも肺癌を誘発する危険因子があることはあまり認識されていません。早期発見のためには、非喫煙者であっても肺癌になる可能性があることを理解し、病気の症状や対処法について知っておくことが重要です。
もしも息切れや継続的な咳などの肺癌が疑われる兆候が見られた場合は、できるだけ早く医師に相談してください。