記事監修医師
産業医科大学第1外科
佐藤 典宏 先生
2017/3/1 記事改定日: 2018/6/11
記事改定回数:1回
記事監修医師
産業医科大学第1外科
佐藤 典宏 先生
免疫系を攻撃するヒト免疫不全ウイルス(human immunodeficiency virus)の頭文字をとってHIVといいます。HIVは、からだが外部からの感染症や病気と闘う免疫系を弱め、性感染症であるHIV感染症を起こします。ここではHIVの感染経路や感染後の治療について説明しています。
HIVは、精液、腟(ちつ)および肛門、血液および母乳や、感染した人の体液中に確認されます(HIVは壊れやすく体外では長く生き残ることはできません)。
基本的には、唾液、汗、尿などでは感染することはありませんが、まれに、オーラルセックスや性的玩具を介して感染することもあります。
感染経路の多くは、コンドームなしの性行為によるものです。その他の感染経路には、次のようなものがあります。
もしHIVへの感染に心当たりがあるなら、できるだけ早く医師の診察を受けてください。
HIVに感染すると、2~4週間でHIVが体内で大量に増幅されるため、一時的に発熱やのどの痛み、皮疹などの風邪やインフルエンザのような症状が現れることがありますが、数日で自然に治ります。
その後は数年~数十年は何も症状がなく、体内でHIVが徐々に増加していきます。そして、HIVが体内に大量に増殖し免疫細胞を破壊すると、様々な感染症にかかりやすくなる「日和見感染」を生じようになり、このような状態はエイズ発症の可能性が疑われます。
HIVはエイズを発症する前に適切な治療を続けることで発症を大幅に予防することが可能です。このため、不特定の人と性交渉を持つなど思い当たる出来事があり、その後1か月ほどで原因不明の発熱などの症状があった時にはすぐに検査を受けるようにしましょう。
HIV検査は、感染の徴候がないか、血液や唾液を採取して検査します。HIVに感染しても検査結果が陰性になる時期(ウインドウ期間)があるため、1〜3カ月後に繰り返し、数回ほど受ける必要があります。
上記の検査で陽性反応がみられたときは、さらに詳しく血液検査を行う必要があります。HIV陽性の場合は、さらにいくつかの検査と治療法を医師に相談してください。
HIVを完治させる方法はありませんが、現在は効果的な治療ができてきており、HIVをもつ人々は少しでも長く健康な生活を送ることができるようになっています。
治療には下記の薬が使われます。
薬物治療のほかに、定期的な運動や健康的な食事、禁煙なども積極的に行うことがすすめられるでしょう。
治療しなければ、免疫系は重大な損傷を受け、がんや重度の感染症などの疾病を招き、後期HIV感染症からAIDSを発症させてしまうので、そのためにも検査は早めに受け、予防に努めることが大切です。
HIVは感染者の体液や血液などに触れないことが唯一の予防法となります。
このため、性交時には正しくコンドームを使用して感染を防ぐだけでなく、不特定多数との性行為は控えることも大切です。
また、血液を介しての感染を防ぐため、注射やピアス開け器、剃刀など体の一部に入り込むような医療器具の使いまわしは絶対に避けましょう。
そして、医療機関や事故現場などでは他者の血液に触れないように注意することも必要です。
HIVはAIDSに至る重大な感染症です。HIVを予防し感染を最小限に抑えることは、自分だけでなくまわりの人の安心につながります。 感染していても、適切な治療と対処でエイズの発症と感染拡大は防げます。HIVに感染しているかもと感じているなら、すぐに検査を受けましょう!