記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/8/14 記事改定日: 2018/3/16
記事改定回数:1回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
健康診断で「尿酸値が高い」と指摘されたことはありませんか?尿酸値が高いと、「痛風」を発症させるリスクが高くなります。一度は耳にしたことのある病名かと思いますが、この痛風とはどんな病気でしょうか。特徴となる発作や基準の尿酸値などを解説します。
痛風とは、血中の尿酸濃度が高い状態が続く「高尿酸血症」になることで、「尿酸」が関節内で結晶化(尿酸結晶といいます)し、関節炎などを引き起こす病気です。
高尿酸血症の主な原因は、モツ・干物・白子・うに・レバーなどの細胞の詰まった食べ物やビールなどのアルコール飲料に含まれる「プリン体」の過剰摂取、あるいはプリン体の排泄能力の低下です。摂取した大量のプリン体は、体内で大量の「尿酸」と呼ばれる代謝産物へと変わります。この大量の尿酸が結晶化して関節内に溜まったことで、「痛風発作」を引き起こすようになります。
痛風発作とは、足の親指の付け根などの関節が赤く腫れ、強烈な痛みが生じる発作的な症状です。1時間ほど経つと足の甲までパンパンに膨れ上がり、少しの刺激でも激痛が走るようになります。1週間〜10日程度で痛みは引いていきますが、ほとんどの場合、また1年以内に痛風発作が再発します。
痛風発作は尿酸値(血清尿酸値)が高い状態が続くことによって引き起こされますが、尿酸値を下げようと尿酸降下薬を服薬したことがきっかけで、痛風発作が起きてしまうことがあります。
そもそも痛風発作は、関節の膜についた尿酸結晶が関節の中に落ちることで生じるようになります。この原因は基本的にはプリン体の過剰摂取ですが、尿酸降下薬によって尿酸濃度が急低下したことでも、結晶が剥がれて痛風発作が起きる可能性があるのです。
なお、尿酸降下薬は痛風発作の最中にも服薬してはいけません。尿酸降下薬の服薬によって尿酸値が変動すると、尿酸結晶が不安定な状態になる恐れがあるからです。特に痛風発作の直後は結晶が不安定な状態なので、発作が終わって2週間程度経過するまでは、尿酸降下薬の服薬は控えましょう。
尿酸値(血清尿酸値)は、男性女性ともに7.0mg/dLまでは正常値です。これを超える場合は、高尿酸血症ならびに痛風発作を引き起こす危険性が高まります。なお、血液検査の診断結果用紙には、「血清尿酸値の基準値は男性の場合3.8〜7.5mg/dL、女性の場合2.4〜5.8mg/dL」と記載されていることがありますが、これはあくまで参考としてください。
なお、上記の尿酸値の基準を超え、下記に該当する場合は痛風と診断されます。
・関節が赤く腫れている
・関節に激痛がある(特に足の親指の付け根)
・痛風発作が24時間以内にピークに達する
・痛風発作を繰り返している
痛風を放置すると、尿酸の結晶が溜まった関節の周りなどに結節ができてしまったり、または腎臓にも結晶が溜まって結石ができてしまったりすることがあります。腎臓に結石ができた場合は背中に痛みが生じ、その後結石が尿管や膀胱に移行すると尿路結石になり、その部分でも激痛が生じることもあります。
痛風の治療法のひとつめは投薬治療です。処方される薬は、鎮痛薬(非ステロイド系抗炎症薬あるいは痛風発作に特異的な薬剤)と高尿酸血症の治療薬の2種類が一般的です。ただし、先述の通り、急激に尿酸値を低下させると逆に痛風発作を引き起こすこともあるため注意しましょう。発作が起きているときの尿酸値は必ずしも高いとは限りません。
もうひとつの治療法は食事療法です。痛風を引き起こす主な原因はプリン体の過剰摂取のため、プリン体を含む食べ物を制限する食事療法に切り替えることで、関節の痛みや腫れを緩和させることができます。
食生活の改善などを行わずに放置していると、痛風が慢性化してしまうこともあります。お酒を飲む機会が多い方や、白子やうになどのおつまみを好んでよく食べるという方は、痛風発作に注意しておきましょう。