記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/8/16 記事改定日: 2018/3/13
記事改定回数:1回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
牡蠣などの二枚貝の摂取によって感染することのある「ノロウイルス」。激しい下痢や嘔吐などの症状で知られていますが、幼児と大人で出る症状に違いはあるのでしょうか?また、症状が軽くてもノロウイルスの可能性はあるのでしょうか?以降で詳しく解説します。
ノロウイルスに感染すると、12~48時間の潜伏期間(感染から発症までの時間)の後、幼児も大人も以下のような症状が現れます。
・突発性の吐き気、嘔吐
・水っぽい下痢(1日に何度も繰り返す)
・腹痛
・37〜38℃の発熱
なお、大人の場合は吐き気や腹部膨満感などの症状が強く現れる傾向がありますが、体力もあるため1〜2日で症状は治っていきます。
一方、幼児の場合は、大人よりも重篤化のリスクが高いので注意が必要です。幼児は下痢よりも嘔吐の症状が出やすい傾向にあるのですが、まだ咳がうまくできないので、吐瀉物が起動に入って詰まることで誤嚥性肺炎を起こしたり、体が小さい分脱水症状を起こしやすかったりします。このため大人よりも回復に時間がかかることがありますが、1週間程度で治るのが一般的です。
幼児がノロウイルスを発症した場合、便の色も判断基準となります。白色や黄色がかったクリーム色の水様便で、酸っぱい匂いがするのが特徴です。重度の場合は米のとぎ汁のような見た目をしていることがあります。こういった便が見られたら、ノロウイルス性胃腸炎の可能性があるのですぐに小児科へ連れていってください。
ノロウイルスは激しい下痢が特徴の一つですが、中には下痢が軽かったり、全く下痢が起こらないのに感染しているパターンがあり、「不顕性感染」と呼ばれます。不顕性感染の場合、下痢や嘔吐などの胃腸症状が見られませんが、便中にはノロウイルスが含まれています。このため、無症状にも関わらず家庭内や集団生活の場で、知らず知らずのうちに感染を拡大させている恐れがあります。
ノロウイルスの感染経路はほとんどが経口感染で、以下のような感染経路があると考えられています。
・ノロウイルス患者の糞便や吐ぶつから人の手などを介しての二次感染
・家庭や共同生活施設など人の接触が多い場所で、人から人へ直接感染する場合
・ノロウイルス感染者が触ったもの(ドアノブなど)に触った場合
・飲食店や食品の製造にかかわる仕事をしている人、または家庭で調理をする人が感染していた場合に、その人を介して汚染された食品を食べた場合
・汚染されていた二枚貝を、生あるいは十分に加熱調理しないで食べた場合
・ノロウイルスに汚染された井戸水や簡易水道を消毒不十分で摂取した場合
ノロウイルスに感染した場合、現在のところノロウイルスに効果のある抗ウイルス剤がないため、対症療法で治療が行われます。特に、体力の弱い乳幼児や高齢者は、脱水症状を起こしたり、体力を消耗したりしないように、栄養と水分の補給を充分に行うことが重要です。ひどい脱水症状がある場合には、病院で輸液を行うなどの治療が必要になります。止しゃ薬(いわゆる下痢止め薬)は、病気の回復を遅らせることがあるので使用しないようにしましょう。
ノロウイルスは感染力が強く、ドアノブ、カーテン、リネン類、日用品などからもウイルスが検出されます。家族が感染した場合、次亜塩素酸ナトリウムなどを使用して身の回りのものを消毒しましょう。ただし、次亜塩素酸ナトリウムは金属腐食性があるため、消毒後の薬剤の拭き取りを十分にするよう注意が必要です。
ノロウイルスに感染すると激しい吐き気や下痢に襲われることが多いですが、中には症状が軽いケースも存在します。不顕性感染であっても、二次感染で周囲に感染を拡大させてしまう危険はあり、幼児が感染した場合は誤嚥性肺炎などで命を落とすリスクも大きいです。ノロウイルスに対して正しい知識を身につけて、感染予防につとめましょう。