記事監修医師
産業医科大学第1外科
佐藤 典宏 先生
2017/2/23
記事監修医師
産業医科大学第1外科
佐藤 典宏 先生
高齢者の記憶力が低下した場合、原因が「認知症」なのか、それとも「うつ病」かの判別が難しいことがよくあります。
今回は、それぞれの症状の違いについてご紹介します。
高齢者のうつ病とはどういったものなのでしょうか。加齢とはどういった関連性があるのでしょうか。以下で詳しくみていきましょう。
うつ病は、加齢のせいで発症するものではありませんが、65歳以上の人が発症しやすいのも事実です。
年をとると、退職、病気、家族の死によく直面するようになります。このようなときに悲しいと感じるのは普通ですが、悲しみから抜け出せず、日常生活に支障が出る場合は、医師に相談してください。
うつ病の患者にみられる精神的・身体的症状に加えて、以下のような症状があります。
・妄想や幻覚
・退屈感や無力感
・記憶上の問題または混乱
・社会活動から一切離れる
高齢者を介護している場合、うつ病のような症状や行動の変化が見られたら、主治医に伝えてください。以下の方法で診断をします。
・あなたや家族への問診
・ほかの病気の可能性を除外するための検査
・服用している薬の確認
診断と治療によって、認知力の低下、ほかの病気、自殺の予防が期待できます。
高齢者は恥ずかしくて、悲しみや不安を医師や介護者に話すことができないケースがあります。うつ病は恥ずかしいことではなく、治療可能な病気だということをしっかり伝えていくことが大切です。
認知症とはどういった症状なのでしょうか。
認知症は、記憶、人格、意思決定能力に影響を与える、脳細胞の損傷から生じる症状です。原因として頭部外傷、脳卒中、アルツハイマー病などがありますが、加齢も原因のひとつです。65歳以降、認知症発症のリスクはおよそ5年ごとに倍になっていきます。
認知症に関連する記憶喪失は、時間とともに悪化し、より早いスピードで進行します。認知症の可能性がある兆候として、以下のサインがあります。
・最近の出来事や情報を記憶しておらず、同じ質問を繰り返す
・運転、調理、入浴など、今までできていたことのやり方を忘れる
・正しい単語を使わないなど言語問題
・どのように行くか、どのようにして来たか覚えていない
・左右で別々の靴を履いてしまうなど、簡単な判断を誤る
・奇妙な行動(冷蔵庫に衣服を置く)があり、物をよく失くす
・気分の変化が大きい
・友人や家族や趣味の時間など、かつて重要だったものに対して興味がない
・選択することが難しくなる
そもそも、認知症は自分で見つけるのは難しく、大抵の場合、異変に気づくのは家族や友人です。また、記憶障害には特定の医薬品やうつ病が結びついている可能性があるため、医師にも簡単に診断できるものではないのです。
いかがでしょうか。あなたの家族に記憶力の低下がみられた場合、上記の症状のどちらにより当てはまるかを参考にした上で、医師の診察を受けるようにしてください。