糖尿病網膜症は症状がでにくい?どうやって防げばいいの?

2017/2/23 記事改定日: 2018/8/2
記事改定回数:1回

佐藤 典宏 先生

記事監修医師

産業医科大学第1外科

佐藤 典宏 先生

糖尿病は、進行するとさまざまな合併症を引き起こします。
その代表的な例として腎不全や足病変(下肢切断)、脳卒中がありますが、同様に危険性が高いのが、視力低下や失明を引き起こす「糖尿病性網膜症」です。
ここでは、糖尿病網膜症の症状について解説していきます。

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糖尿病網膜症は初期症状に気づきにくい?

糖尿病性網膜症とは、名前の通り糖尿病の影響で網膜が損傷する病気です。
網膜が損傷をされ、結果的に視力へ影響していきます。

糖尿病性網膜症ははっきりとして初期症状が現れにくいため、気づいたときにはかなり進行してしまっていることも少なくありません。
また、早めに治療を始めれば進行を防ぐことができますが、一度低下してしまった視力を元通りに回復させることは難しいといわれています。

そのため、12歳以上の糖尿病患者は1年に1回の検査が重要です。(一般的に12歳未満での発症は極めてまれと考えられています。)

糖尿病網膜症の症状はどのように進行する?

糖尿病網膜症は症状の進行によって3つの時期に分けられますが、それぞれの時期では次のような症状が生じます。

単純糖尿病網膜症

初期段階の網膜症です。初期段階では自覚症状はほとんどなく、糖尿病の発症に気づいていない人では見逃されて放置されているケースも多々あります。
しかし、網膜は確実に変化しており、網膜の毛細血管に瘤が形成されたり、微小な出血を生じた状態となります。

前増殖糖尿病網膜症

やや進行した網膜症です。網膜の毛細血管に閉塞が生じはじめ、代償として新たな血管が増殖するようになります。その結果、目のかすみやぼやけなどを自覚するようになります。

増殖糖尿病網膜症

更に進行した網膜症です。新生血管が増殖を繰り返すことで、網膜に炎症やむくみが生じます。また、新生血管は破れやすいため硝子体に出血を生じることもあり、この出血点が視野に漂うゴミのように映り込む「飛蚊症」を発症することがあります。
網膜が過度に引っ張られると網膜剥離を引き起こすこともあり、その結果急激な視力低下や場合によっては失明に至ることも珍しくありません。
さらに、網膜の中心部にある黄斑周辺のむくみが生じた場合には、視野の歪みや中心点のぼやけ、色のコントラスト不良などの視覚障害を生じることもあります。

糖尿病網膜症の検査内容は?

糖尿病網膜症では、視力検査、眼圧検査、細隙灯顕微鏡検査、眼底検査などが行われます。
視力検査は視力の著しい低下がないかを調べるために行い、眼圧検査は緑内障など他の病気がないかを調べる検査です。

また、細隙灯顕微鏡と眼底検査は眼球内の状態を直接観察する検査です。特に糖尿病網膜症では眼底に新生血管や出血などの症状が現れるため、眼底検査によって発症の有無や重症度を判定します。眼底を観察して網膜症が疑われる場合には、蛍光眼底撮影が行われます。これは、血管に造影剤を注入して血管の破れなどがないかを確認する検査です。

黄斑周辺のむくみがみられた場合には、光干渉断層計と呼ばれる機器での撮影が行われ、網膜深層部のむくみを確認します。

糖尿病網膜症の発症を予防するにはどうすればいい?

糖尿病網膜症は重症化するまで自覚症状が現れにくく、糖尿病と診断されて場合、一年に一度は眼科での定期的な検査が推奨されています。
日頃から血糖のコントロールに気を付けるのはもちろんのこと、万が一網膜症を発症したとしても早期に治療が行えるように定期的な検査を行って、目のかすみや歪みなどを自覚した場合はなるべく早く病院を受診するように心がけましょう。

おわりに:失明を回避するためにも、糖尿病の人は血糖値コントロールを徹底しよう!

糖尿病性網膜症は失明につながる恐ろしい病気です。早期発見で進行を防ぐことはできますが、元通りの視力まで回復することはできません。
定期的な検査と生活改善を心がけ、血糖値をきちんと管理しましょう。

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