記事監修医師
産業医科大学第1外科
佐藤 典宏 先生
2017/6/27 記事改定日: 2017/9/13
記事改定回数:3回
記事監修医師
産業医科大学第1外科
佐藤 典宏 先生
記事監修医師
東大医学部卒、セレオ八王子メディカルクリニック
二宮 英樹 先生
「更年期障害」といえば、女性特有の症状のはずです。しかし最近「男性更年期障害」という言葉を耳にする機会が増えました。この疾患は「LOH症候群」として注目を浴びつつあります。LOH症候群の原因、症状、診断、治療について解説します。
40代後半~50代前半の男性に一般的に起こる症状として、以下のものがあります。
・抑うつや短期など気分の変動
・筋肉量の減少、運動能力の低下
・内臓脂肪の増加
・漠然とした熱意やエネルギーの喪失
・睡眠障害(不眠症)
・疲労の増加
・集中力の低下、短期記憶の低下
また、一部の男性では、
・うつ
・性欲減退やED(勃起不全)
が起きることもあります。
こうした症状は「男性更年期障害」として、一部メディアで取り上げられることがありますが、厳密に更年期という言葉の定義(閉経の前後5年間)を考えると、男性には更年期はありません。この「男性更年期障害」という名称は、中年期にテストステロンが突然低下した結果発症する点が女性の更年期障害と似ているという点から名づけられたようです。
最近ではLOH症候群(加齢男性性腺機能低下症行群)と呼ばれることが多いです。(この記事では「男性更年期障害」という用語を引き続き使います)
またテストステロン値は男性が年を取るに従って低下しますが、その減少は一定のものであり(30~40歳ごろから、毎年2%以下しか減少しません)、これ自体が何らかの問題を引き起こすことはないと考えられています。
高齢であるほど、加齢に伴うテストステロン(男性ホルモン)の減少によって現れる症状が強くなります。テストステロン値は男性が年を取るに従って低下します。その減少は一定のものであり、30~40歳ごろから、毎年2%弱低下することが分かっています。
男性更年期障害では上記のように様々な症状が見られます。それらの症状は、精神的ストレスも関係して出現したり、増悪したりすることがあります。
また以下のような個人的な問題や生活習慣の問題も関係しています。
・睡眠不足
・質の悪い食生活
・運動不足
・飲酒過多
・喫煙
・自尊心の低さ
・仕事や人間関係の問題
・熟年離婚
・金銭問題
・中年特有の危機感(※)
※人生の中間の段階まで到達したことを実感するときに起こることがあります。
仕事にしろ生活にしろ、今まで自分が達成してきたことに対する不安が生まれ、ここからうつにつながる可能性があります。
特にED(勃起不全)については血管内の変化などの身体的な原因の場合があります。
LOH症候群については、日本泌尿器科学会・日本Men’s Health医学会が診断の手引を公開しています。
LOH症候群を診断する上で有用な血液検査は、
・テストステロン
・黄体化ホルモン(LH)
・卵胞刺激ホルモン(FSH)
・プロラクチン(PRL)
・成長ホルモン(GH)
・インスリン様成長因子(IGF-1)
・コルチゾール
症状や検査値にあわせて、上記のような検査が行われます。
血液検査の他には、問診(質問紙)でLOH症候群の症状、程度を評価することができます。
LOH症候群と診断された場合、アンドロゲン(男性ホルモン)補充療法が行われることがあります。同学会の診療の手引では、LOH症候群の症状がある40歳以上の男性で、血中テストステロン値が同年代の男性と比較して低下している場合に、アンドロゲン補充療法が推奨されます。
ただし前立腺癌がある人や、疑いがある人(PSAという前立腺癌の腫瘍マーカーが高値を示している人)、睡眠時無呼吸症候群の人などは、アンドロゲン補充療法は出来ません。
前述のいずれかの症状が出た場合は、医師の診察を受けてください。
症状がストレスのような精神的な問題によって引き起こされている可能性があるかどうか調べるために、仕事や私生活について問診が行われます。
ストレスや不安が原因の場合は、認知行動療法(CBT)、あるいは運動やリラクゼーション、投薬が効果的です。
血液検査の結果、テストステロン不足と判明した場合は、その後ホルモン不足を治すためにアンドロゲン補充療法を提案される可能性があります。
男性は加齢によって、男性ホルモンが低下していき、男性更年期障害の症状があらわれることがあります。しかし男性更年期障害の症状は、ストレスや生活習慣が原因で現れていたり、悪化していたりすることもあります。近年では男性ドックなど男性更年期障害(LOH症候群)や男性ホルモンの測定ができる医療機関もあります。自覚症状のある男性は、そのような検査を受けてみてもいいかもしれません。