記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/8/29 記事改定日: 2018/4/25
記事改定回数:1回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
40歳を過ぎた頃から自覚することが多いという「更年期障害」ですが、更年期障害になると具体的にどういった症状が現れるのでしょうか?更年期障害には、どう対処していけばいいのでしょうか?この記事では、女性の更年期障害にしぼってお伝えしていきます。
更年期障害とは、女性の場合、閉経前後の10年間で現れるさまざまな身体的・精神的症状をさします。症状は多岐にわたり、症状の現れ方や感じ方には個人差がありますが、具体的には以下のものが挙げられます。
http://w-health.jp/climacterium_alarm/about_climacterium/
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/heart/yk-081.html
女性の更年期障害は、閉経期前後の約10年間に起こるエストロゲンの分泌量の急激な低下が主な原因だと考えられています。エストロゲンの分泌量は40代に入った頃から急激に減少するため、この頃に症状を自覚する方も多いでしょう。
ただ、エストロゲンの低下はすべての女性に起こりますが、全員が更年期障害を起こすわけではありません。その理由のひとつとして「更年期障害にはストレスや環境、本人の性格が大きく関係している」という説があります。事実、子供が独立したことによる生きがいの喪失や、仕事の責任が増したことによるストレスがきっかけで症状が重くなってしまう人も少なくありません。
http://w-health.jp/climacterium_alarm/about_climacterium/
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/heart/yk-081.html
更年期とは、閉経前後10年の時期のことをいいます。早い人では40代前半から生理不順が始まり、ホルモンバランスの変化が生じます。閉経の平均年齢は50歳といわれており、45~55歳頃までが更年期とされますが、症状の現れ方は人によって異なり、40代に入ってすぐに発症する人もいれば、閉経しても長く症状が続く人もいます。
しかし、閉経して5年以上経過しても症状が続く場合には、自律神経失調症やうつ病などを発症している可能性もあるので注意が必要です。
更年期障害は、女性であれば誰でも避けて通ることはできないものです。症状の大小はありますが、誰しもが何らかの不快症状を感じるといわれています。
このため、更年期障害を乗り越えるには、様々な対策が必要になりますが、特に重要なのは、更年期障害による発汗、ホットフラッシュ、めまいなどの自律神経症状を和らげるための生活習慣の改善です。
更年期障害でも多くの人が経験するホットフラッシュは、なるべく涼しい環境を作り、体温の急激な上昇を防ぐことが大切です。そのためには、脱ぎきしやすい服装やこまめな水分補給などを行うとよいでしょう。また、自律神経のバランスを整えるために、適度な運動を行い、ぬるめのお湯で半身浴をしたり、一日の内で好きな音楽を聴いたりするなどリラックスできる時間を持つこともおすすめです。
更年期障害がひどい場合は、病院で専門的な治療を受けるのも有効です。具体的には、下記の治療法があります。
ホルモン剤には内服薬、皮膚に貼るパッチ剤、皮膚に塗るジェル剤などさまざまな種類があり、症状によって使い分けます。腟の乾きや性交障害には、ホルモン剤の腟錠や潤滑ゼリーが処方されることがあります。
更年期障害には様々な不快症状に対して効果がある漢方薬が使用されることがあります。代表的な漢方薬は、当帰芍薬散や加味逍遥散、桂枝茯苓丸などで更年期障害によるホットフラッシュやのぼせ、イライラ感などに有効とされています。
しかし、これらの漢方薬は体質によっては全く効果がないこともあるので、自己判断で漫然と長く服用するのではなく、医師の診察を受けてから、薬の種類を相談して使用することをおすすめします。
ホルモン剤と漢方薬との併用療法が行われることもあれば、漢方薬のみで治療が行われる場合もあります。
更年期障害では、自律神経のバランスが乱れることで多くの不快症状が現れます。そのため、ホルモン療法と併用して自律神経調整薬が使用されることがあります。これらの薬の多くは、脳に直接作用して、自律神経のバランスを整え、特に過剰に興奮している交感神経の働きを鎮める作用があります。しかし、逆に副交感神経が優位になりすぎて眠気や倦怠感などの副作用を生じることがあるので注意が必要です。
更年期障害は、睡眠障害を引き起こすことも知られています。不眠が続くと、抑うつ気分が加速し、うつ病のリスクになることもあるため、症状がひどい場合には睡眠薬が処方されることがあります。
睡眠薬には様々な種類がありますが、主に使用されるのは、ベンゾジアゼピン系と呼ばれるタイプのもので、ハルシオン®などのように効果が短時間で体内に残存しにくい種類のものが選ばれます。ベンゾジアゼピン系の睡眠薬は、更年期障害によって高ぶった交感神経の活動を抑制し、眠りに就きやすくする効果が期待できます。
更年期障害では、ホルモンバランスの変化と元からの性格、環境的な因子が相まって抑うつ状態になることも稀ではありません。抑うつ状態が重度な場合には食欲低下や不眠傾向になり、将来的にうつ病を発症するリスクとなるため、適切な治療が必要となります。更年期障害での抑うつ状態に最もよく使用されるのは、抗うつ剤や抗不安薬のような向精神薬です。
抗うつ薬は、SSRIなどの選択的セロトニン再取り込み阻害薬が使用され、これらはホットフラッシュにも効果があるとされています。また、抗不安薬はベンゾジアゼピン系のものが多く選ばれています。
これまでお伝えしてきたとおり、更年期障害の背景にはストレスや性格的なものもあります。薬物療法だけで改善しない場合は、カウンセリングが有効なことがあります。
更年期障害では、食事療法と運動療法が将来的な脳卒中や心筋梗塞発症リスクを軽減するために重要となります。
更年期障害で減少するエストロゲンは、体脂肪の蓄積を妨げ、血液中のコレステロールを代謝する作用があります。つまり、エストロゲンの減少は肥満や高脂血症の原因となり、動脈硬化を引き起こして、脳卒中や心筋梗塞などの恐ろしい合併症を引き起こすきっかけとなるのです。
そのため、更年期障害では低カロリーでバランスの取れた食生活と、肥満を予防するための有酸素運動を中心とした運動習慣が必要です。
また、適度な運動は、気分をリフレッシュする効果もあり、抑うつ気分の改善にもつながります。社交ダンスやテニスなどの年齢を重ねても楽しめるスポーツを取り入れるようにしましょう。
つらい更年期障害の症状を「仕方がないもの」と諦めてしまっている方もいるかもしれませんが、病院での専門治療や生活習慣の見直しによって、症状が改善できるケースも多く存在します。
ホットフラッシュなどの症状でお悩みの方は、ご紹介した対処法をぜひ試してみてください。ただし、日常生活に支障がでるほど重い症状の場合や、長く続く場合には早めに専門医に相談することをおすすめします。