糖尿病と診断された・・・これからどんな治療が始まるの?

2017/8/29 記事改定日: 2018/3/7
記事改定回数:1回

三上 貴浩 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 医学博士

三上 貴浩 先生

糖尿病は一度かかると完治する可能性がほとんどありませんが、合併症を防いで健康的な生活を維持するためには治療が欠かせません。
この記事で糖尿病治療の種類と重要性をご紹介します。

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糖尿病の治療を行う目的について

糖尿病は一度発症すると完治することは難しい病気です。
しかし、治療をせずに放っておくと重篤な合併症を引き起こしてQOL(人生の質)を著しく低下させてしまう可能性が高くなります。
糖尿病の治療はそうした合併症を防ぎ、健康的な人と変わらない生活を維持するために必要なのです。

糖尿病は「1型糖尿病」「2型糖尿病」「妊娠糖尿病」「他の疾患などによって発症する糖尿病」の4つに分かれますが、いずれの場合も3本柱である「薬物療法」「食事療法」「運動療法」を行うことで治療していきます。

糖尿病の治療その① 薬物療法

2型糖尿病の場合、まず行なわれるのは食事療法と運動療法です。食事療法や運動療法で血糖コントロールがうまくいかなかった場合や、早めに血糖値を下げる必要があると判断された場合は、経口薬による薬物療法が行なわれます。
下記の3種類の薬は、糖尿病治療で一般的に処方される薬剤です。

〈α-グルコシダーゼ阻害薬〉

α-グルコシダーゼという酵素の働きを抑えることで、食事でとった糖の分解・吸収を遅らせて血糖値の上昇を抑えます。

〈スルホニル尿素薬〉

膵臓(すいぞう)を刺激し、インスリンの分泌を促します。

〈ビグアナイド薬〉

インスリン抵抗性を改善する薬で、体重が増えにくい効果があります。
同じような働きをする薬にチアゾリジン薬があります。

また、上記の治療法でもうまくいかなかった場合に行なわれるのがインスリン注射です。
現在、日本の1型糖尿病治療においてはインスリン注射が必須になっています。

糖尿病の治療その② 食事療法

食事療法を実施するとエネルギーの摂取量が減少するので、血糖値を下げるために必要なインスリンの量を減らすことができます。さらに、肥満も解消されてインスリンの働きが改善します。

糖尿病になったら厳しい食事制限をしなければいけないイメージがあるかもしれませんが、食事療法は特別なメニューがあるわけではなく、食べ物の栄養バランスと総摂取エネルギーを考えることが大切になります。この考えは糖尿病患者さんだから守らないといけないものではなく、本来は健康な人でも考えないといけないことです。

食事療法で気をつけないといけないことは?

栄養バランスと総摂取エネルギーを考えた食事とは、炭水化物、たんぱく質、脂質の三大栄養素をバランス良くとり、ビタミンやミネラルなども欠かさずにとることです。
また、1日に必要なエネルギー量は医師に決めてもらいましょう。

食事療法は以下のことを意識しながら行うようにしてください。
・食事は規則正しく決まった時間に食べるようにする。
・食物繊維を1日に20~25g摂るようにする
・塩分の摂りすぎに注意する
・栄養のバランスを考えて偏りなくいろいろな食事を摂り、ビタミンやミネラルが足りなくならないようにする

糖尿病の治療その③ 運動療法

運動療法には「血糖値を下げる、体重を減らす、血液の循環を良くする」など、メリットが多数ありますが、最大のメリットは運動によって脂肪が減りインスリンが効きやすい体になることです。

運動療法には酸素を十分に取り入れて体全体の筋肉をつかう有酸素運動が効果的だといわれています。有酸素運動は1回に20分~40分ほど・週に3 回実施するとよいといわれています。
無理なくできる運動を生活に取り入れて、長く続けることがなにより大切です。

有酸素運動の例としては、〈ウォーキング、自転車、水泳、ジョギング、ラジオ体操〉などがあります。
運動する時間がないという場合は、通勤のときに一駅歩く、外出中はなるべく階段を使う、といった工夫をして運動量を増やしてみてください。

運動療法における注意点とは?

飲み薬(経口血糖降下薬)やインスリン療法などで薬物療法を実施している患者さんは、運動中に低血糖を引き起こす可能性があります。
運動療法をしても良いかどうか、どのような運動をすればよいかを医師に確認しましょう。そして、運動をする場合には必ずブドウ糖やジュースなどを持ち歩いて低血糖が起きても対処できるようにしてください。

また、糖尿病の種類によって以下のような注意点があります。

1型糖尿病の場合

・運動は食事の後1~3時間に実施する
・運動量が多い運動をする場合は運動前のインスリンを減らす
(※具体的な単位については医師に相談しましょう)
・運動前、中、後に補食をする

2型糖尿病の場合

・薬物療法を行っている場合はできるだけ食後に運動をする
(※薬物療法を実施していなければ、食事前に運動しても良いとされていますが必ず医師に確認しましょう)
・インスリン療法を行っている場合は運動前のインスリン単位を運動に応じて3分の2から半分ほどに減量する
(※具体的な単位については医師に相談しましょう)

おわりに:合併症を防ぐためにも、治療にしっかり取り組もう

糖尿病の怖さは気づかないうちに合併症を発症する可能性が高いことです。
糖尿病と診断されたら、すぐに治療を始めるようにしましょう。
合併症を防ぐためにも治療は医師の指示に従いながらきちんと取り組むことが大切です。

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