記事監修医師
東大医学部卒、セレオ八王子メディカルクリニック
二宮 英樹 先生
2017/9/12
記事監修医師
東大医学部卒、セレオ八王子メディカルクリニック
二宮 英樹 先生
先天性副腎過形成(Congenital adrenal hyperplasia; CAH)は、副腎の異常による疾患です。 副腎は鉱質コルチコイド(主にアルドステロン)、糖質コルチコイド(主にコルチゾール)およびアンドロゲン(男性ホルモン)を産生します。先天性副腎皮質過形成では、そのうちコルチゾールとアンドロゲンが副腎で産生されません。コルチゾールを産生する指令を出す副腎皮質刺激ホルモンが過剰に分泌され、コルチゾールは産生されないけれども、副腎は過剰に成長して、副腎過形成と呼ばれる状態になります。
先天性副腎皮質過形成は、通常、出生時から幼児期に診断されます。日本では出生後数日以内に採血が行われ、新生児マススクリーニング検査が行われます。新生児マススクリーニング検査は、先天性の代謝異常、ホルモン異常を見つけるための検査です。先天性副腎皮質過形成の原因となる全ての異常を検出できるわけではないのですが、早期発見に役立っています。
コルチゾール、アルドステロンの不足が原因で、次のような症状が現れます。
・低血糖
・低血圧、ショック
・低ナトリウム血症、高カリウム血症
また副腎皮質刺激ホルモンが過剰に分泌されることで、皮膚に黒い沈着が見られることがあります。
アンドロゲン(男性ホルモン)の過不足によって、性器の異常が見られることもあります。男児ではアンドロゲンが不足して、陰茎や陰嚢の発達が未熟であることがあります。また女児では、アンドロゲンが過剰で女性器が男性化(陰核が肥大するなど)することがあります。
出生後もホルモンの状態によって、男性器・女性器の発達、二次性徴に影響があらわれます。
先天性副腎皮質過形成を診断する上では、身体の診察(性器の外見)と共に、血液検査(血液中のホルモンの値)や尿検査(ホルモンの代謝物の検査)を行います。
また先天性副腎皮質過形成は、ホルモンの産生に関わる遺伝子異常が原因であることが分かっています。保険ではカバーされていませんが、遺伝子診断も有用です。
先天性副腎皮質過形成を根本的に治すことはできませんが、症状を軽減するために治療が行われます。 まず大切なのは、自分で産生できない糖質コルチコイドや鉱質コルチコイドを補充することです。投与量は不足にもならず、過剰にもならないように個別で調整し続ける必要があります。
また塩分が失われやすいので、塩分の投与も大切です。
先天性副腎皮質過形成自体は珍しい病気で、また治療中の薬剤の投与量の調整も難しいことから、治療経験豊富な専門医の下で治療することをお勧めします。
先天性副腎皮質過形成の原因は、ホルモンの産生に関わる遺伝子異常です。この遺伝子は常染色体劣性遺伝です。つまり自分が母親からもらった遺伝子と、父親からもらった遺伝子の両方に同じ遺伝子異常がないと、副腎過形成は発症しません。片方の遺伝子に異常がある場合は、発症せずに生まれ、成長します。
たまたま片方の遺伝子に、同じ遺伝子異常がある人同士が子供を産んだ場合、その子供が副腎過形成になる可能性は1/4(25%)です。
・子供の病気の原因は何ですか?
・子供に先天性副腎過形成がある場合、次に生む子供もかかる可能性はありますか?
・治療法は何ですか? 子供は薬を飲む必要がありますか?治療はどれくらいの期間続きますか?
・子供は今後どのように成長しますか?合併症も起こりますか?