記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/9/1 記事改定日: 2018/4/6
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
重大な仕事を任されたときや人間関係がこじれたりしたとき、ストレスのあまり下痢や腹痛が起きることはありませんか?今回はそんなストレス性の下痢や胃痛を引き起こす病気や、おすすめの薬をご紹介していきます。
強いストレスは自律神経を乱れさせ、胃痛や下痢を引き起こすことがあります。下痢と胃痛を引き起こすストレス由来の病気としては、主に以下のものが挙げられます。
ストレスが原因で自律神経が乱れると、胃酸が過剰に分泌され、その胃酸は胃粘膜を傷つけ、胃痛を引き起こすようになります。また、ストレスによって腸の運動に異常をきたし、下痢や便秘などの消化器症状を起こすこともあります。基本的には発熱や激しい嘔吐が起こることはありません。
ピロリ菌感染やステロイド薬の影響以外に、ストレスが原因で胃粘膜が傷つき、胃酸が胃壁を消化することで胃潰瘍が起こることがあります。胃潰瘍の特徴的な症状は、ズキズキとした激しい胃痛で、食事中や食後に痛む傾向にあります。また、下痢が引き起こされることもあります。
過敏性腸症候群とは腸が刺激に対して過敏になり、便通異常を起こす病気です。過敏性腸症候群の特徴は、「検査をしても腸に異常が認められないこと」「下痢や便秘などの便通異常や腹痛が慢性的に続くこと」です。過敏性腸症候群にはおおまかに以下の3タイプに分類され、具体的な症状はそれぞれ少しずつ異なります。
過敏性腸症候群の原因は検査によってはっきりわかるものではありませんが、主に下記の要因が重なることで発症するのではないかと考えられています。
ストレスを受けると腸の蠕動運動が急激に活発になることがあります(または逆に動かなくなることもあります)。このことが過敏性腸症候群と関連しているのではないかと考えられています。
脳と腸をつなぐ神経や小腸と大腸間の信号は、腸の働きをコントロールする役割を担っています。これらに異常が起こることで、過敏性腸症候群につながる可能性があります。
脂っこいものの食べすぎや、アルコール、カフェインの摂取のしすぎが原因で、過敏性腸症候群が引き起こされる可能性があります。
精神疾患と過敏性腸症候群の関連性は不明ですが、パニック障害やうつ病といった精神疾患患者が過敏性腸症候群を併発する割合は比較的高い傾向にあります。
【出典: 厚生労働省ホームページを編集して作成 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/heart/yk-079.html】
ストレスによる下痢や胃痛に効く市販薬としては、以下のものがおすすめです。
H2ブロッカー薬の作用により胃酸の分泌を抑え、胃痛や吐き気を改善します。ただし、効きすぎると逆に胃酸不足になり、下痢などの消化器症状を引き起こすこともあるので、異変が出た場合は服薬を中止してください。
胃痛の改善や精神を安定させる効果のある7種類の生薬が配合されており、ストレス性胃腸炎の緩和に効果的と言われています。
胃を温め調子を整える漢方・安中散(あんちゅうさん)が配合されており、ストレス性胃炎に効果を発揮します。
ストレスによる胃腸のけいれんを鎮める成分や、過剰に分泌された胃酸を中和する成分が配合されており、胃痛や吐き気を緩和する効果があります。ただし、腸の筋肉の動きを抑制する薬のため、便秘などの副作用が起こることがあります。
ウイルス性の胃腸炎であれば、ウイルスを排出させるために下痢止めは飲まない方がいいですが、ストレス性の下痢であれば下痢止めを服用するのも効果的です(ただし、下痢症状がひどい時だけの服用をし、慢性的な下痢が続く場合は病院を受診してください)。
ストッパ下痢止めは、ロートエキスという有効成分が、腸の収縮を起こすアセチルコリンをブロックすることで、急性の下痢を緩和します。また、タンニン酸ベルベリンが腸の炎症面を保護し、腸内の水分過多を防ぎます。
ストレス性胃腸炎も、ストレス由来の胃潰瘍も過敏性腸症候群も、根本的な原因はストレスにあるので、まずはストレスから離れ、十分に発散することが大切です。症状がひどい時は上記の薬を使用しつつ、消化器科や内科を受診し、検査と診察を早めに受けるようにしてください。
なお、過敏性腸症候群の多くは、ストレスや暴飲暴食など生活面の問題が原因と考えられるため、治療においては食生活の改善・生活習慣の改善を行ったり、ストレスを緩和したりすることが一般的です。原因が自律神経失調症の場合もあるので、場合によっては心療内科の受診が必要な場合もあります。
また、近年では過敏性腸症候群に対する治療薬も発売されてきました。場合によってはそれらの内服薬によって治療を開始することもあります。
【出典: 厚生労働省ホームページを編集して作成 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/heart/yk-079.html】
ストレス性の下痢や胃痛はご紹介した薬で症状自体は緩和できますが、それでは根本的な解決にはなりません。そもそもの原因であるストレスにうまく対処する方法を身に付けることが大切です。また、思わぬ病気が潜んでいる可能性もあるため、下痢や胃痛を繰り返している方は一度病院で診察を受けましょう。