記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/9/8 記事改定日: 2020/10/12
記事改定回数:2回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
体に赤紫の発疹が突然できたなら「固定薬疹」が原因かもしれません。アレルギー症状のひとつで、特定の薬を飲んだときに同じ場所に発疹が現れるのが特徴です。重症化することもあるという固定薬疹について、市販薬や漢方でも発生するのか、治療の進め方などを詳しくみてみましょう。
ある特定の薬剤を摂取するたびに、体に赤みや発疹が出る症状のことを固定薬疹といいます。同じ薬を飲んだ、もしくは同じ成分の薬を飲んだなど同種の原因が体に加わったときに、前回と同じ場所に症状が現れます。
原因となる薬剤として多いのは消炎鎮痛薬であり、その中でも特に多いのが非ステロイド系抗炎症薬や抗生物質です。
原因となる薬を服用した30分程度後に症状が現れ、患部にピリピリ感やかゆみを感じるようになり、3~6時間程度で発疹を生じ始めます。発疹は、円形が多く、赤く盛り上がる紅斑が大半です。
出現場所は、口唇や外陰部など皮膚粘膜移行部、手や足の甲によく出現します。
固定薬疹だと気づかずに何度も同じ薬を服用した場合、徐々にその場所に色素沈着が起こったり、発疹の出る範囲が全身に広がってくることもあります。
固定薬疹の代表的な症状は
ことです。
発疹が円形か、類円形であることも特徴的で一部に水疱を形成することがあります。多少のかゆみがあり、熱を持っているように感じることもあります。
通常、このような発疹は1つ、ないしは数個以内が多いですが、固定薬疹を何度も発症するうちに数が増えていき、多発型に移行する危険があります。
全身に多発するようになると、重症薬疹であるスティーヴンス・ジョンソン症候群(SJS)や中毒性表皮壊死症(TEN)、多形紅斑などと鑑別することが難しくなり、固定薬疹ではほとんどみられないような高熱などの全身症状も伴うようになり、症状が重くなっていきます。
固定薬疹や固定薬疹が疑われる皮膚の症状が現れたときは、速やかに薬を処方した医療機関や購入した薬局に相談するようにしましょう。多くは、処方した医療機関で診察を受けることができますが、重症な場合には皮膚科での専門的な治療が必要になることもあります。
固定薬疹は基本的に薬の服用を中止すれば自然に軽快していきますが、上述した重篤な病気に進行することもあるため、放置せずに必ず医療機関や薬局に相談するようにしましょう。
固定薬疹の治療は、通常の薬疹の治療と同じく、まずは原因となっている薬剤を突き止め、その薬の服用をやめることから始まります。
固定薬疹の場合、仮に全身に多発するような状況になっていても、原因薬剤を中止するだけで症状が改善することが多いでしょう。その場合は、薬剤を中止してから1日以内で改善がみられることがほとんどです。
薬の服用や円形の紅斑、色素沈着、そして服薬履歴の問診などから、医師による固定薬疹の診断自体は比較的容易といわれています。
ただ、治療や診断で重要になってくるのが、原因薬剤の特定です。固定薬疹を引き起こす可能性があるのは“すべての薬剤”であり、漢方薬と市販薬にもリスクがあります。
どんな薬剤をいつから使用しているのかという服薬履歴を普段から作成し、服用している薬剤すべてを正確に医師に伝えられるようにしておきましょう。
固定薬疹の明確な診断基準はありませんが、同一の薬剤を使用するたびに同じ場所に境界がはっきりした赤く痒み・痛みを伴う発疹が生じるため、比較的容易に診断が下されます。
治療の原則は、テトラサイクリンやサルファ剤、消炎鎮痛剤など原因となる薬剤の使用を中止することです。原因薬剤の使用を中止することで症状は徐々に改善していきますが、症状がひどい場合にはステロイドを含んだ塗り薬やステロイドの内服治療が行われます。また、極めて重症な場合やステロイドでの治療のみでは十分な効果が得られない場合には免疫グロブリン製剤が使用されるケースもあります。
ただし、薬の服用時に持っていた病気の状態などもあって、自己判断での服用中止が体調悪化を招くこともあります。まずは主治医と相談するようにしましょう。
固定薬疹を改善するには、原因となる薬剤の中止が必要です。薬を服用したあとに、いつも同じ場所に赤い発疹や違和感が現れる場合は医師に相談しましょう。診断や治療は比較的容易とされますが、医師の指示に従い自己判断で治療するのは控えてください。