記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/9/12 記事改定日: 2018/6/13
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
日本ではおよそ200万人が感染しているとされ、もはや国民病といっても過言ではない「C型肝炎」。では、なにがきっかけでC型肝炎に感染してしまうのでしょうか。症状や治療法、検査について、わかりやすく解説していきます。
C型肝炎とは、C型肝炎ウイルス(HCV)の感染によって引き起こされる肝臓病です。HCVに感染したおよそ7割の人が持続感染者となり、将来的に慢性肝炎や肝硬変、肝がんへ進行するリスクがあります。
HCVに感染しても、初期段階では自覚症状がない人がほとんどです。ただ、慢性肝炎から肝硬変へと進行すると、黄疸や手掌紅斑(手のひらが赤くなる症状です)、むくみといった症状が現れるようになります。そのため、肝硬変の状態になってからようやくC型肝炎に気づく人も少なくありません。
C型肝炎ウイルスに感染すると2週間から4か月ほどで発熱や倦怠感、肝障害などを生じる急性肝炎を発症することがあります。しかし、急性肝炎を発症するのはごくわずかなケースであり、約70%の人は軽度な炎症が持続する慢性肝炎となります。
慢性肝炎は特に目立った症状が現れないため、感染に気付かずに放置されることが多く、10~30年で約40%肝硬変へ進行するとされています。
C型肝炎ウイルスに感染すると、2~16週間で、発熱、黄疸、倦怠感、関節痛を伴う肝障害が生じます。この状態は急性肝炎であり、この段階で検査が行われれば早期に感染を知ることができます。しかし、急性肝炎を発症するケースは少なく、症状も軽度なことが多いため、一時的な体調不良と考えられることも少なくありません。
約70%の人は、慢性肝炎となり、肝臓に軽度な炎症が持続する状態となります。慢性肝炎の状態では自覚できる症状はほとんどなく、約40%の人は10~30年で肝硬変を発症します。
肝硬変は肝機能が著しく低下し、腹水の貯留や黄疸、倦怠感、出血傾向などの症状が現れ、肝臓で処理されるアンモニアが増加すると意識障害などの肝性脳症を発症することも少なくありません。また、体のいたるところに静脈瘤が生じ、特に食道にできる静脈瘤は破裂すると大量出血を生じ、死に至ることも少なくありません。
肝硬変は年間で7%の人が肝臓がんに進行するとされており、肝臓がんではさらなる肝機能の低下や肺や脳など他臓器への転移を生じます。
C型肝炎はHCVへの感染が原因ですが、このHCVの感染経路は血液感染です。具体的には、HCV感染者の血液を輸血してしまったり、同じ注射針を使い回したり、入れ墨を彫ったりしたことで感染する可能性があります(現在の輸血では高い精度でのウイルスチェックを行っているため、感染が起こることはほぼありませんが、1992年以前に輸血をした場合は感染の可能性があります)。
また、感染率は低いですが、HCV感染者の母親からの母子感染や性行為によってHCVに感染するケースもあります。
なお、HCVは血液に直接触れない限り、接触によって感染することはほぼありません。よって、同じドアノブを触ったり、ハグをしたり、食器を共有したり、同じお風呂に入浴したりしても感染の可能性はほぼないと考えていいでしょう。
C型肝炎に対してはインターフェロン注射による治療が行われるのが一般的でしたが、近年では直接作用型抗ウイルス薬(Direct acting Antiviral Agents:DAAs)による治療の効果が非常に優れており、第一選択となっています。この治療によって、95%以上の患者さんの体内からウイルスを除去できたとの報告もあります。さらに、インターフェロン治療と比較して副作用が少ないという点も大きなメリットといえるでしょう。
C型肝炎ウイルスに感染すると70%の人が慢性肝炎へ移行します。慢性肝炎は自覚症状がほとんどないため、健康診断で肝機能の状態を調べることで感染が疑われることがあります。その場合にはC型肝炎ウイルスの検査が行われますので、発見につなげることが可能です。
しかし、C型肝炎は慢性肝炎の状態でも肝機能検査に異常が見られないことも少なくありません。このため、一度はC型肝炎のウイルス検査を受けることがすすめられています。
肝臓が「沈黙の臓器」と呼ばれるように、C型肝炎は感染しても自覚症状がほぼない上に、肝硬変や肝がんに発展するリスクもある厄介な病気です。ただ、現在では医学の進歩によって、C型肝炎はコントロール可能な病気になりつつあります。適した治療法は患者さんの状態によって異なりますので、まずは専門の医療機関を受診されることをおすすめします。また、今まで一度も肝炎の検査を受けたことがないという人は、一度は検査を受けるようにしましょう。
【 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター 肝炎情報センターホームページを編集して作成】