記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
全身性エリテマトーデスは、原因がはっきりしていなく、発症すると全身に炎症を起こすことが特徴の病気です。今回の記事では、この病気の症状や治療法について解説します。
全身性エリテマトーデス(SLE)は、全身に炎症性の症状が現れる特徴がある自己免疫疾患です。皮膚、白血球、赤血球、腎臓に影響を与え、症状が良くなったり悪くなったりを繰り返し慢性化することも多いとされています。
この病気の原因はまだ解明されていませんが、紫外線や薬物、性ホルモン、ウイルス感染などの環境因子が、遺伝的要因に加わることで発症するのではないかと考えられています。
全身性エリテマトーデスは、主に20~30代の女性に発症することが多いとされており、その症状は以下のように様々なものがあります。
・全身症状・・・・発熱、全身倦怠感、疲れやすくなる
・皮膚・粘膜症状・・・・頭髪の脱毛、蝶形紅斑や、頭部、顔、耳介、関節背面に円板状皮疹(ディスコイド疹:かさかさした痛みのない円板状の赤い発疹)が起こる
・筋・関節症状・・・・関節痛、筋肉痛、関節炎
・腎症状・・・・糸球体腎炎(ループス腎炎)
・神経症状・・・・うつ状態、妄想、痙攣、脳血管障害、中枢神経症状
・心血管症状・・・・心外膜炎、心筋炎による頻脈、不整脈
・肺症状・・・・胸膜炎、間質性肺炎、肺胞出血、肺高血圧症
・消化器症状・・・・・腹痛、腸間膜血管炎、ループス腹膜炎
・血液症状・・・・溶血性貧血、白血球減少、血小板減少
・その他・・・・リンパ節腫脹
全身性エリテマトーデスの診断、治療法を以下に解説します。
全身性エリテマトーデスでは特徴的な湿疹があらわれるため、患者さん自身が湿疹を発見し、最初に皮膚科や内科を受診するケースが多いとされています。血液検査を行うことによってこの病気が診断されますが、血液検査が行われなかった場合、専門の医師でなければ診断が難しいとされています。
全身性エリテマトーデスの治療には、非ステロイド系消炎鎮痛剤(NSAIDs)やステロイド剤が使用されます。NSAIDsは、比較的軽い症状(発熱や関節炎など)に使用されますが、全身性エリテマトーデスは炎症反応が強いため、副腎皮質ステロイド剤の継続的な服用で症状をコントロールすることが必要です。
症状が重い場合やステロイド抵抗性の症例には、ステロイド・パルス療法(点滴で大量にステロイドを投与する治療法)が選択され、さらに、ステロイド剤に対して重篤な副作用がみられた場合には、免疫抑制剤の投与が検討されます。
また、急に薬を減らしたり、中止した場合は症状が再発する可能性もあるため、薬の服用は必ず医師の指示に従うようにしましょう。
全身性エリテマトーデスを発症後は、紫外線やストレス、妊娠、感染症に気をつけることが重要です。これらは、この病気にとって良くない影響を与えるため、日焼け止めを塗るなどの対策をするようにしましょう。
全身性エリテマトーデスは、早い段階で重症化さえしなければ、ほとんどの患者さんが命を落とすことなく普通に生活することが可能です。そのためには、医師の指示を良く守って、適切な治療を継続しましょう。
【出典: 厚生労働省ホームページを編集して作成 http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000062437.html】