記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/9/27 記事改定日: 2018/4/2
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
ぎっくり腰は海外で「魔女の一撃」と呼ばれるくらい強い痛みが突然起こります。ある程度の期間が過ぎれば痛みはおさまるので、病院に行かずに様子をみるという人も多いかもしれません。しかし、ぎっくり腰は治療が必要な病気が隠れている場合があることをご存知でしょうか。
この記事ではぎっくり腰の症状と応急処置について説明します。いざというときに役立ててください。
ぎっくり腰は、医療用語としては「急性腰痛症」と呼ばれています。
医療機関で診察を受けた場合は腰椎捻挫または腰部挫傷と診断されることもあります。
腰部の背骨には5個の椎骨があり、その間にクッションの役割を担う椎間板があります。これらは筋肉や靱帯が付着することで椎骨を支えていますが、そのうちのどこかが傷害されることで強い痛みが起こるのことでぎっくり腰を発症します。
ぎっくり腰は、安静にしていれば数週間から1か月以内に症状が消えるものがほとんどです。ただし、頻繁に繰り返す場合や、いつまでも痛みが変わらないものについては重篤な病気が隠れている可能性があるので注意が必要です。
http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/anzen/dl/1911-1_2d.pdf
ぎっくり腰の症状の特徴はその場で動けなくなるほどの強い痛みです。他にも以下のような時に痛みがでることもあります。
・動作をすると激痛が走る
・椅子に座れない
・くしゃみや咳で痛む
・時間と共に痛みが強くなる
・横になる(膝を曲げた状態)と楽になる
ぎっくり腰によって痛みが出現する主な部位は腰部です。
強い痛みのため運動に制限が出てしまい、腰を前や後ろに曲げることがむずかしくなります。
また、放散痛といい直接痛めたわけではないものの痛みを感じる部位として臀部や下肢に痛みを伴うこともあります。
一般的にぎっくり腰の痛みは1か月前後で改善する場合が多いといわれていますが、中には3か月前後かかるということもあります。
さらに、これ以上時間がかかってしまう場合にはぎっくり腰が慢性化してしまっている可能性や他の疾患にかかっているという場合もあります。
ぎっくり腰は
・顔を洗おうとして体を曲げた
・中腰で荷物を持ち上げた
・急に体を捻った
・靴下を履こうとした
など、ちょっとしたことがきっかけで起こります。
ほかにも、
・肥満
・筋肉の疲労や弱化
・偏った姿勢や猫背
などによる腰の負担が原因になることもあります。
下記のような、生活のささいなクセや習慣によって腰部に疲労が蓄積する可能性があります。
ハイヒールは姿勢と脊椎のバランスが崩れてしまい腰痛を引き起こす可能性があります。
骨盤と背骨にゆがみが生じ、腰に偏った負荷がかかる可能性があります。分厚い財布を後ろポケットに入れることでも同様のことが起こり得ます。
ずっと座っていることから、腰痛の発症率が高いといわれています。これは座り仕事の人も同様です。
ぎっくり腰の要因として非常に多いと考えられているものが椎間板ヘルニアです。椎間板ヘルニアは、強い痛みの他にも、しびれや麻痺などの深刻な症状を引き起こすことがあります。
脊柱管狭窄症は中高年以降に多く発症する整形外科疾患であり、腰部では黄色靭帯の肥厚や脊椎や椎間関節の変形などが原因で発症することが多いです。
一般的には下肢の痛みやしびれの症状が多く、腰の痛みは軽い傾向があるといわれていますが、強い腰痛が起こることもあるので注意が必要です。
痛みが起こってから2日間安静にするようにしましょう。ぎっくり腰のように急に強い痛みが起こった場合は、発症してから2日間は炎症が強いので動いたり患部をマッサージしてはいけません。
今までぎっくり腰は安静にすることが1番の治療法とされてきました。しかし現在では2日間の安静で充分であるとされています。
ぎっくり腰の発生直後はなるべく動かさないようにして、できるだけ痛みが少なくなる姿勢でおとなしく休養をとりましょう。どうしても動かなくてはいけない場合は、コルセットやテーピングでしっかり固定してください。
痛みが起こってから3日間は炎症期と呼ばれています。この期間は冷やすことが大切です。氷水を入れた氷嚢やビニール袋、アイスパックを使って15分から20分を目安にアイシングしましょう。ただし、20分以上冷すと凍傷になる恐れがあるので注意してください。
ぎっくり腰の痛みで動けないときの応急処置として痛み止めの薬を使用するのもよいでしょう。
飲み薬として使用できるのは非ステロイド性抗炎症薬(NsAids)と呼ばれるお薬で、一般的に売られている商品名としてはロキソニン®、ボルタレン®という名前で販売されています。
これらのお薬は痛みの緩和に効果があるものの乱用すると副作用として胃の痛みが出現してしまうため、必ず用量、用法を守って使用するようにしてください。
また、あくまで応急処置として使用するようにして医療機関には受診することをおすすめします。受診した際にはいつ、何回痛み止めを内服したかを伝えるようにしましょう。
妊娠中は骨盤が歪んでしまったり運動量の低下、体重の増加によってぎっくり腰になりやすいとされています。
特に妊娠中はリラキシンというホルモンが分泌されて胎児が成長できるように骨盤が開きやすくなることもぎっくり腰になりやすい理由とされています。
近年では出産ぎりぎりまで仕事をする人も増えており、重い身体で動き回ることによってぎっくり腰になりやすいとされています。
妊娠中は痛み止めの薬は使えませんし、マッサージを行ってくれる施設も少ないです。
また、コルセットなど身体を締め付けることもできません。
そのため、まずは痛みを感じない体制を見つけて安静にするようにしましょう。
身体を冷やさないようにしながら痛みの部位だけ15分程度冷やし、痛みが治まったところで固まらないように足を動かしたり立ち上がったり座ったりして徐々に体を動かし、かかりつけの産婦人科を受診するようにしましょう。
一週間以上痛みが治まらない場合や、 寝ていても痛みがある、痛みで夜起きてしまう、しびれや麻痺など別の症状が現れた場合は、重度の椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症、内臓疾患から起こっている腰痛の可能性があります。すぐに病院を受診しましょう。
また、痛みが治まった場合でも、何度も繰り返している場合やしびれや麻痺などの下肢症状があるときは、何らかの病気が隠れていたり、腰の疾患が悪化している可能性があります。なるべく早めに病院で検査してもらいましょう。
ぎっくり腰は、まず、安静にすることが大切です。無理に動いたりせず、休むようにしましょう。痛みが長引いたり、何度もぎっくり腰を繰り返しているときは、必ず病院で検査を行い、適切な治療をしてもらってください。