記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/9/27 記事改定日: 2019/12/9
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
煙草を吸う人で、息切れを感じたり、痰を伴う慢性の咳に悩まれている方、もしかしたら、COPD(慢性閉塞性肺疾患)かも知れません。COPDとはいったいなんでしょう?
この記事では、COPDの原因についてまとめました。
COPD(慢性閉塞性肺疾患)とは、以前は「慢性気管支炎」や「肺気腫」といわれていた病気の総称です。タバコの煙などの有害物質を長期間吸入し続けたために発症する肺の炎症性疾患で、喫煙習慣のある中高年に多くみられる病気です。
免疫反応が続いたことで破壊された組織や痰などで気道閉鎖が起こると、取り込む空気の量が減り、肺胞が破壊され肺気腫に進行します。肺気腫まで進行するとガス交換の機能が著しく低下し、もとの状態に戻らなくなります。
COPDを発症すると、歩行時や階段昇降など、体を動かしたときに息切れを感じる労作時の呼吸困難や慢性のせき、痰といった症状がみられます。なかには喘鳴や発作性呼吸困難といった気管支喘息のような症状を合併する人もいます。
COPDは気管や肺の炎症が長く続くことで様々な合併症や併発症を引き起こします。また、肺炎などを生じやすくなるため、さらに気管や肺の炎症が悪化してCOPDを進行させるという悪循環に陥ることも少なくありません。
最も多い併発症は、気管支喘息であり、約30%の人に生じるとされています。また、間質性肺炎や肺がん、気胸などを合併することも知られています。
さらに、呼吸器以外でも狭心症や不整脈、心不全などの心疾患、糖尿病、骨粗鬆症などを引き起こすこともあり、全身の様々な部位に病変を引き起こす可能性があります。
これは、呼吸器で生じた炎症作用を起こす物質が血液に乗って全身を流れるためと考えられています。
COPDは、化学物質の入った煙やほこりなどの肺を刺激する物質に長時間さらされることが原因となりますが、最大の原因は喫煙であり、喫煙者の15~20%がCOPDを発症するといわれています。
これはタバコの煙を吸入することで肺の中の気管支に炎症がおきて、せきやたんが出たり、気管支が細くなることによって空気の流れが低下するからだと考えられています。
主要な要因であるタバコをやめることが、一番の予防法になるでしょう。また、喫煙をやめると呼吸が楽になり咳が減り、肺が回復しはじめることがわかっています。
その他、ヘアスプレーやスプレー消臭剤、スプレー塗料などのエアロゾール製品など、肺を刺激する可能性のあるものを避けるようにしてください。
長期の喫煙歴が確認され、痰や咳の症状、労作時呼吸困難が認められると、COPDを疑われ、スパイロメトリーという呼吸機能検査で確定診断を行います。
これは、精一杯息を吐いたときの息の量(努力性肺活量)と、最初の1秒間で吐く量(1秒量)を測定することで気道が狭くなっているかどうかを確認する検査です。
気管支拡張薬を吸入した後の1秒量が70%未満で、COPDの原因となりそうなその他の疾患ではないことが確認されればCOPDと診断されます。
COPDの治療は
を目標として、下記の治療が行われます。
COPDの主な原因は長期間にわたる喫煙です。そのため、COPDの発症や悪化を防ぐには禁煙することが何よりも大切であり、COPDを発症している人には禁煙治療が勧められます。
禁煙治療は所定の要件を満たして設置された禁煙外来で行いますが、治療に必要な診察や薬代などは全て健康保険が適応となります。
禁煙外来では、おもにチャンピックス®などの禁煙補助薬が12週間にわたって処方されるのが一般的ですが、依存度が高い人はニコチンパッチやニコチンガムなどニコチン依存を改善するための薬が併用されることもあります。
また、12週間の投薬を行っても禁煙に成功しない場合は引き続き禁煙補助薬を使用することもありますが、12週目以降の投薬にかかる費用は自己負担となります。
禁煙の方法については医師とよく相談の上で進めていくようにしましょう。
COPDは進行すると、完全に治すことはできません。このため、COPDを発症した人は、QOLを向上させるためにも適切なリハビリを行う必要があります。
とくに重要なリハビリは、呼吸のための筋肉を鍛えるための運動やストレッチなどです。また、体に無理のない範囲でウォーキングなどの有酸素運動を行って、全身の筋力を維持することも大切です。
しかし、これらのリハビリは無理をすると気胸や喘息発作などの重篤な症状を引き起こすとこがあるため、自己判断で行わずに医師や理学療法士の指示に従って行うようにしましょう。
COPDは、長年の悪い習慣の蓄積によって起こる病気です。まず、禁煙を行うこと、それが治療の第一歩です。処方薬も服用しながら、適切な治療を行いましょう。