記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/10/3
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
排便時に裂けるような痛みを感じたり、出血が起きたり・・・そんな「痔」の症状でお悩みの方はかなり多いといわれています。今回の記事では、痔ができる原因や対処法、予防法などについて幅広くご紹介していきます。
一般的に痔は、便秘や下痢が原因で引き起こされます。食物繊維不足の食生活などで便秘がちな方はトイレでいきむことが多いですが、このいきみによって肛門付近がうっ血したり、皮膚が裂けたりすると痔が発生しやすくなるのです。また、便秘の方は便そのものが固いので、排便の際に肛門付近の粘膜が傷つくことでも痔が起こりやすくなります。
一方、暴飲暴食やストレスで下痢ぎみの方の場合は、下痢を排出する際に肛門付近の粘膜が炎症を起こしやすいため、痔になりやすくなります。
痔は「痔核」「裂肛」「痔瘻(じろう)」の3種類に分けられます。それぞれの特徴について、以下で解説していきます。
痔核とは、直腸内や肛門の外側などにいぼ状の腫れができるタイプの痔で、一般的には「いぼ痔」と呼ばれています。便秘や排便時のいきみだけでなく、長時間の座りっぱなしや妊娠、出産がきっかけで引き起こされることもあります。
痔核の症状は、肛門の歯状線より内側にいぼができる「内痔核」か、歯状線より外側にできる「外痔核」かによって多少異なります。前者は痛みは少ないものの排便時の出血がみられ、後者は出血はあまりないものの強い痛みを感じることが多いです。
裂肛とは、肛門の出口付近の皮膚が切れた状態のことで、「切れ痔」「裂け痔」とも呼ばれます。特に女性の発症率が高いのですが、極端な食事制限や便秘が原因で便が排出されずに固くなり、その便を無理に押し出そうとしたときに起きると考えられています。排便時に出血し、強い痛みを感じます。
痔瘻とは、直腸と肛門付近の皮膚との間にトンネルができた状態のことで、「あな痔」とも呼ばれています。痔瘻は、歯状線にあるくぼみに下痢などが溜まって、細菌感染を起こして化膿する「肛門周囲膿瘍」が進行した結果引き起こされると考えられています。肛門付近が腫れて激しい痛みを感じたり、38~39℃の高熱が出たりするのが特徴です。
痔ができてしまったときの対処法は、痔のタイプによってそれぞれ異なります。
排便時に出血してしまったら、温水洗浄機能を使って適度な水圧でおしりをきれいにし、その後トイレットペーパーでぽんぽんとやさしく押し当てるように拭いてください。そして帰宅後はぬるま湯にゆっくり浸かり、おしりをじっくりと温めましょう。肛門内の血流がよくなることで痛みが緩和され、うっ血も改善しやすくなります。
比較的軽度の痔核であれば、市販の座薬や軟膏を使うことでも症状を和らげることができますが、重度の場合は、結紮切除法などの手術が必要なケースもあります。
裂肛に対しても、先述の「痔核への対処法」と同様、おしりを温めたり、軟膏を使ったりするのが有効な対処法です。また、普段から食物繊維を積極的にとるなど、便秘にならないような食生活を心がけることも大切です。
肛門付近が痛いときは、うつぶせになり、氷まくらなどで患部を冷やすのがおすすめです。ただし、痔瘻は市販薬で治ったりするものではないので、基本的には手術が必要になります。
痔は便秘や下痢、排便時のいきみなどが原因で引き起こされる場合が多いので、これらを避けることが有効な痔の予防法となります。日頃から、「食物繊維をしっかりとる」「暴飲暴食や刺激物を控える」「排便時は無理にいきまず、短時間で出なければ切り上げる」「毎日入浴して肛門付近を清潔にし、血流をよくする」といったことを心がけるようにしましょう。
ご紹介してきたとおり、実は「痔」にはさまざまな種類があり、症状や対処法もそれぞれ異なります。また、痔のタイプや程度によっては、自力での治療が難しいケースもあるので、気になる症状がみられる場合は早めに専門医を受診しましょう。