記事監修医師
前田 裕斗 先生
2017/10/3 記事改定日: 2018/4/2
記事改定回数:1回
記事監修医師
前田 裕斗 先生
月経(生理)が終わったばかりなのに下着に血が付いているとびっくりしますよね。このような出血(不正出血)は、多くの女性が一度は経験したことがあると言われており、子宮や卵巣などの疾患とホルモンバランスの乱れが原因と考えられています。
この記事では、不正出血の原因や症状を中心に解説します。
不正出血とは、生理(月経)以外の時期に性器(腟、子宮、外陰部)からの出血が起こることです。不正出血は多くの女性が経験したことがある症状で、ホルモンバランスの崩れや子宮・卵巣の器質疾患、妊娠の異常(流産や異所性妊娠[もしくは子宮外妊娠]など)が原因で起こります。
不正出血の中でも、卵巣機能の不調によるホルモンバランスの乱れが原因で起こるものを「機能性子宮出血」、子宮の疾患が原因となるものを「器質的子宮出血」と言います。機能性子宮出血はホルモン剤や止血剤を用いて治療することが多く、器質的子宮出血の場合は、原因となる病気に対する治療を行います。
月経(生理)は、月経周期の中で不要となった子宮内膜が排出されることで出血するのに対し、不正出血はホルモンバランスの乱れや子宮筋腫などが原因で起こる出血で、月経周期とは関係なく起こるものです。
また、個人差はあるものの、月経(生理)は毎月定期的に起こり、およそ1週間ほど続くのに対し、不正出血は突発的に生じるもので、月経(生理)よりも短いもしくは長いものです。また、腹痛や腰痛を伴ったり、出血量が多すぎる(もしくは少なすぎる)といった特徴があります。
月経(生理)前、月経後に不正出血が起こる原因として、以下のようなものが考えられます。
女性ホルモンのバランスが崩れると、月経不順になって不正出血(機能性出血)が起こる可能性があります。機能性出血は月経前・月経後に関係なく起こる可能性があります。
女性ホルモンの分泌異常によって月経周期が乱れると、不正出血が起こることがあります。特に、無排卵月経(なんらかの原因で排卵がない月経が起こる)になると不正出血が起こりやすいと言われています。
また、黄体機能不全になった場合も、月経前に少量の出血が続く可能性があります。黄体機能不全とは、黄体(排卵後の卵胞が変化したもの)が正常に機能しないため、黄体ホルモン(プロゲステロン)や卵胞ホルモン(エストロゲン)の分泌量が低下したために、不正出血が起きたり、月経周期が短くなったり、胸の張りや眠気といった月経前特有の症状が出にくくなったりします。
排卵期に女性ホルモンの分泌量が大きく変化すると、排卵出血と呼ばれる少量の出血が起こる可能性があります。また、排卵時に卵巣に小さな傷がついた場合も、不正出血が起こる可能性があります。
子宮がんや子宮内膜症、あるいは性感染症が原因で、不正出血が起こることもあります。病気が原因の場合、不正出血に加えて下腹部痛や発熱、おりものの異常、性器のかゆみなどを伴うことがあります。
月経の数日前に、妊娠長初期の兆候である着床出血が起こることがあります。精子と卵子が受精すると、受精卵が子宮内膜に入り込んで胎盤を作り始めます。このとき、子宮内膜に傷がつくと出血して、体外に出てくることがあります。経血の量が少ないだけだと思っていたら妊娠していたというケースもあるので、不安な場合は一度婦人科で検査を受けましょう。
また、不正出血が異所性妊娠(子宮外妊娠)によって生じている可能性もあります。異所性妊娠の場合、個人差はありますが、少量の性器出血とともに、急な下腹部痛があらわれると言われています。その場合は、すぐに婦人科を受診して検査を受けましょう。
初めて低用量ピルを服用したときに、不正出血が起こることがあります。また、飲み忘れが続いたり、体調不良でピルが体内で十分に吸収されなかったり、ピルの働きを抑える薬(下剤、便秘薬など)と一緒に服用したりすると、不正出血が起こることがあります。
不正出血があると、以下のような症状が出てくる可能性があります(症状は原因となる疾患によって異なります)。
上記の症状は、女性ホルモンをコントロールする脳下垂体や卵巣機能が低下したためにあらわれる症状です。
上記の症状は、主に子宮、卵巣、腟などの病気が原因で現れる症状です。出血のほかに、性器の痛みやかゆみ、おりものの状態の変化がみられるので、比較的トラブルに気づきやすいと思います。
不正出血には大きくわけて「機能性子宮出血」と「器質的子宮出血」がありますが、それぞれの治療方法は次の通りです。
機能性子宮出血の場合、出血量が少量で短期間で止まる場合は治療をせずに経過を見ていくことが多いですが、出血量が多い場合には貧血の原因になることがありますので治療の必要があります。
一般的には子宮内膜の過度な増殖などを防ぎ、ホルモンバランスを安定させるために中用量ピルが使用されます。また、出血量が多い場合には止血効果のあるアドナ®などの薬剤が併用されることもあります。
一方、これらの薬物療法で効果がない場合には過度に増殖した子宮内膜を掻把する手術が必要になることもありますので、担当医と治療方針についてよく話し合うようにしましょう。
器質性子宮出血の場合、その原因となる病気によって治療方法は大きく異なります。子宮頚がんや子宮体がんなどが原因の場合には、手術による病変部の切除や子宮摘出などが行われ、手術ができない状態の場合には放射線治療や抗がん剤治療が行われます。
一方、悪性ではない良性のポリープや筋腫などが原因の場合には、それぞれの症状に合わせて病変の増大を予防したり、痛みを和らげる薬などを服用して経過をみていく場合もあれば、症状が強い場合には手術によってポリープや筋腫などを切除する必要があることも少なくありません。
不正出血のなかには、特に心配しなくてよいものもありますが、背景に子宮がんや子宮内膜症といった深刻な病気が隠れていることもあります。ただ、出血の状態だけで原因を特定したり、出血している個所がどこかを自分で見つけるのは難しいです。このため、気になる不正出血が起きたときは、念のため婦人科で診察を受けることをおすすめします。