更年期の薬物治療とセルフケア ― つらい症状を乗り越える方法とは

2017/10/4 記事改定日: 2018/4/23
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前田 裕斗 先生

記事監修医師

前田 裕斗 先生

40代にさしかかった頃から、多くの女性を悩ませるようになる「更年期障害」。イライラしたり、汗がとまらなかったりなどさまざまな症状が現れるようになりますが、このつらい更年期障害を治すにはどうすればいいのでしょうか?治療法を中心に解説していきます。

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更年期障害になると体にどんな症状や変化が出てくる?

更年期障害は、閉経に向け、卵巣から分泌される女性ホルモン(エストロゲン)の分泌量が急激に低下したことが原因で引き起こされます。この急激な低下は40代に入った頃から始まる場合が多いですが、年齢的に子供が独立したり、親が病気になったり、仕事での責任が増したりなどさまざまなストレスを感じる時期であることも、原因のひとつと考えられています。

更年期障害の代表的な症状は、急に上半身の汗が止まらなくなったり、顔が熱くなったりするホットフラッシュです。ほかにもイライラや睡眠障害、抑うつ症状、めまい、頻尿、頭痛、肩こり、腰痛、性交痛などさまざまな全身症状があり、現れ方にはかなりの個人差があります。

【厚生労働省運営「女性の健康推進室 ヘルスケアラボ」ホームページを編集して作成】

http://w-health.jp/climacterium_alarm/about_climacterium/

更年期障害になると太るのはなぜ?

更年期障害になると、女性ホルモンの一つであるエストロゲンが減少します。エストロゲンは体内の脂肪を代謝して高脂血症を予防する効果があり、エストロゲンの減少は、内臓脂肪の増加や高脂血症を発症するリスクとなります。
また、更年期障害に伴って筋肉量が減少することも知られており、これによって基礎代謝が低下し、若いころと同じ内容の食生活を送っていても、太りやすい体質になるのです。

更年期障害の治療法:ホルモン補充療法(HRT)

更年期障害の治療法で最も一般的なものが、減ったホルモンを補充するホルモン補充療法(HRT)です。内服薬や貼り薬、塗り薬など多くの種類があります。HRTには、ホットフラッシュなどの諸症状の緩和だけでなく、骨量の増加や腟の萎縮症状などの生殖器症状の軽減、抑うつ症状の改善といった効果もあると考えられています。

ただし、HRTは副作用として子宮体癌や乳癌、静脈血栓症の発症につながる可能性があるため、過去に原因不明の性器出血を起こしたことのある方や、冠動脈疾患の持病がある方はHRTを避けるべきといわれています。

【厚生労働省運営「女性の健康推進室 ヘルスケアラボ」ホームページを編集して作成】

http://w-health.jp/climacterium_trouble/menopause_treatment/

HRTが太るって本当?

HRTを始めると太るという噂があります。確かに、HRTで補充する女性ホルモンの一種であるプロゲステロンは、体に水分を溜める作用があり、体重が増えることがあります。しかし、これは一時的な副作用であり、HRT自体が肥満の原因になることはありません。
むしろ、エストロゲンの補充によって更年期障害で起こる内臓脂肪の蓄積が予防され、HRTは結果として肥満を予防する効果が期待されます。

更年期障害の治療法:漢方薬による治療法

ホルモン補充療法(HRT)のほか、漢方薬による治療も更年期障害に有効とされています。処方される漢方薬の種類は症状によって異なりますが、冷え症やめまい、頭痛には「当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」、イライラや不眠、肩こりには「加味逍遥散(かみしょうようさん)」 、強い肩こりや多汗などには「桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)」、のぼせや便秘、イライラには「桃核承気湯(とうかくじょうきとう)」が処方されることが多いです。

【 厚生労働省運営「女性の健康推進室 ヘルスケアラボ」ホームページを編集して作成】

http://w-health.jp/climacterium_trouble/menopause_treatment/

心療内科での治療と処方薬

更年期障害は、身体症状の他にも様々な精神症状を引き起こします。主な症状は、抑うつ気分や、不安感、イライラなどでしばしばうつ病や不安障害などと間違われることもあります。

これらの精神症状はHRTを開始してもすぐに改善するものではなく、放置すると更なる精神症状の悪化により日常生活に支障をきたしたり、結果的にうつ病などに進行することもあります。婦人科でのホルモン治療を開始しても精神症状が改善しない場合には、心療内科や精神科で診察を受け、適切な治療を受けることをおすすめします。

一般的には、抗うつ薬や抗不安薬、精神安定剤などの投薬治療が行われます。しかし、一般的な精神疾患とは異なり、日々変化するホルモンバランスによって症状も変化しやすいですので、投薬も慎重に行う必要があります。

更年期障害は市販薬やサプリメント

更年期障害には様々な市販薬やサプリメントが販売されています。
これらの市販薬やサプリメントは主に漢方や生薬由来の成分、イソフラボンなどの女性ホルモンと類似の働きをする物質が含まれたものです。

婦人科受診やホルモン療法に抵抗感がある人は、これらのものを使用することで更年期障害に伴う様々な不快症状を改善することができるかもしれません。しかし、効果には個人差があり、効かないものを長く服用することで思わぬ副作用が生じることもあります。また、更年期による不快症状と考えていたら別の病気が潜んでいた、などということもあります。

更年期障害と思われる症状に悩んだ場合には、必ず病院を受診し、医師と相談したうえでこれらの市販薬やサプリメントを使用するようにしましょう。

更年期障害を乗り越えるために ― 薬以外の対策はある?

更年期障害を乗り越えるには、自分の体を自分でうまくコントロールできるかどうかがカギとなります。病院での治療とあわせて、下記のセルフケアを試してみてください。

涼しさをキープする

更年期障害の最も一般的な症状といわれるのがホットフラッシュですが、発汗やほてりを緩和するには、涼しい状態でいられるよう工夫をすることが大切です。具体的には薄めの服を着用したり、辛い食べ物やカフェインなどの刺激物の摂取は避けたり、寝室では冷房をつけて寝やすい状態を整えたりといった方法が挙げられます。

適度に運動する

「活発に体を動かす女性のほうが、更年期の症状に苦しむことが少ない」という統計結果があります。適度な運動は、更年期障害の原因であるストレスのいい発散方法にもなるので、週に3回程度の有酸素運動を実施するといいでしょう。

ストレスを発散する

更年期障害によるイライラや抑うつ症状でお悩みの方は、ご自身に合ったストレス発散方法を取り入れてみてください。ヨガなどのリラクゼーション運動をしたり、ふらふらと散歩をしたり、お風呂にゆったり浸かったり、趣味に打ち込んだりすることで、気分を和らげることができます。

禁煙する

「喫煙者の女性は、喫煙していない女性よりも更年期障害になるのが早く、ホットフラッシュも重症化しやすい」という報告があります。喫煙習慣のある方は、早めに禁煙を始めることをおすすめします。

おわりに:病院での治療とともに、ゆったりとした時間を過ごすよう心がけよう

更年期障害の諸症状を和らげるには、HRTや漢方薬などの薬物治療を行うだけでなく、生活習慣を改め、日頃からストレスを溜めないように心がけることも大切です。定期的に体を動かしたり、好きなことに時間をつかったりなど、リラックスできる時間を過ごすようにしましょう。

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