記事監修医師
前田 裕斗 先生
2017/10/11 記事改定日: 2018/2/20
記事改定回数:1回
記事監修医師
前田 裕斗 先生
妊娠してからは風邪などの感染症にかからないよう注意する必要がありますが、中でも気をつけたいのが毎年流行するインフルエンザ。これは、妊娠中にインフルエンザに感染すると重症化しやすいと言われているためです。では、妊娠中のインフルエンザが重症化しやすいのはどうしてでしょうか?
この記事で詳しく解説します。
妊娠中は一般に免疫力が低下すると言われており、各感染症は重症化しやすくなります。これは、妊娠中は母体内の胎児を異物として排除する働きが起こらないように、免疫力が自然に下がっていることが一因とされています。
妊娠中にインフルエンザに感染すると重症化する可能性が高くなるのはこのためです。
インフルエンザが重症化すると破水や早産につながることがあります。また、長引かせてしまうと肺炎やインフルエンザ脳症などの合併症を発症するリスクが高くなります。
妊娠中は抵抗力が低くなっているため、インフルエンザを予防するにはワクチン接種が非常に効果的です。
ワクチンを接種していればインフルエンザを発症したとしても症状が軽くなることが多いですし、インフルエンザワクチンは毒性のない不活化ワクチンなので妊娠中に使っても基本的には安全で、赤ちゃんへの影響もないとされています。
予防接種はインフルエンザが流行する前に受けるというのが原則です。
ワクチンによりますが、効果が現れるまで2~4週間ほどかかることが多いので、インフルエンザが流行し始める前の10月~11月頃の接種が望ましいでしょう。
また、ワクチン接種以外にも、うがいや手洗いの徹底、外出時のマスク着用、充分な睡眠・休養を普段から心がけてインフルエンザを予防することが大切です。
まず、新型インフルエンザや季節性インフルエンザに妊婦さんが感染しても、ウイルス自体が胎盤を通って赤ちゃんに影響することはないと考えられています。
また、赤ちゃんへの影響が心配になるでしょうが、抗インフルエンザ薬は安全に使用できるものも多いため、もし医師に必要と判断され処方された場合は服用してください。
妊娠中は免疫力が低下しているために、インフルエンザが悪化する可能性も平常時より高く、命に関わるほど重症化するケースもあります。普段から体を冷やさない、栄養はきちんと取るなど免疫力を維持できるような生活を心がけるとよいでしょう。
どんなに対策をしていてもインフルエンザになってしまうこともあると思います。
特に家族やパートナーがインフルエンザにかかっている場合は、家の中で流行するので仕方がないでしょう。
インフルエンザを発症した場合、発症後48時間以内に抗インフルエンザ薬を服用することで対処できます。服用するタイミングが早いほど重症化を防げますが、逆に重症度が低ければ薬を内服せずともよい場合もあります。重症のときは早期に病院を受診することは当然ですが、どうすればいいか困った時にも医師に相談してみるのがよいでしょう。
インフルエンザの代表的な治療薬はタミフル®、リレンザ®、イナビル® (ラニナミビル)です。
タミフルは小児が服用した場合の異常行動は認められていますが、胎児に奇形をもたらすリスクはほとんどないと考えられていますし、リレンザ®とイナビル®は吸入薬で、吸入された薬のほとんどはその場で作用して血中に移行する成分はごくわずかであるため、胎児への影響はほとんどないと考えられています。
妊娠すると服用できる薬剤が限られてくることから薬物治療に対して神経質になってしまいがちですが、主要治療薬のタミフル®もリレンザ®もイナビル® (ラニナミビル)もこれまでに多くの妊婦さんに処方されているので心配しすぎないでください。
また、薬が処方されたらしっかりと服用することと水分補給を忘れずに行いましょう。母体が脱水になれば、赤ちゃんに向かう血流が減り、悪影響を及ぼす可能性があるからです。
発症を防ぐことが一番ですが、妊娠中にインフルエンザにかかってしまっても、早期に抗インフルエンザ薬を服用することで重症化を防ぐことができます。
インフルエンザウイルス自体が赤ちゃんに感染する可能性はほとんどありませんが、母体が重症化するとに破水や早産のリスクが高まるので、「インフルエンザかな・・・」と感じたら近くの病院に早めに連絡しましょう。治療薬が処方された場合は、医師の指示にしたがってきちんと服用してください。