多嚢胞性卵巣症候群の治療方法について

2017/10/13

前田 裕斗 先生

記事監修医師

前田 裕斗 先生

若い女性に多い排卵障害の一種である「多嚢胞性卵巣症候群」。不妊症の原因になり得る病気として、現在注目が集まりつつありますが、この多嚢胞性卵巣症候群はどうすれば治療できるのでしょうか?治療方法を中心にお伝えしていきます。

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多嚢胞性卵巣症候群はどのような病気か?

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)とは、排卵が起こりにくくなる排卵障害の一種です。通常、卵巣では月に一度排卵が行われますが、多嚢胞性卵巣症候群の患者さんの卵巣内では、卵胞がうまく成長せずに排卵が阻害されるようになります。そのため、月経不順や無月経といった症状が現れるのが特徴です。

多嚢胞性卵巣症候群の原因については、いまのところはっきりとしていませんが、「内分泌や糖代謝の異常により、男性ホルモンが多くなってしまったことで引き起こされている」という説がいまのところ有力です。この男性ホルモンの増加に伴い、毛深くなる、ニキビがたくさんできるといった男性化の兆候が見られる患者さんもいます。

また、排卵が起こらないことで女性ホルモンのうちエストロゲンのみが過剰となることで不正出血の原因となる、将来的な子宮体癌(内膜癌)のリスクが高くなることも大きな問題です。

治療の第一歩は生活習慣の改善から

多嚢胞性卵巣症候群の原因の一説に「糖代謝の異常」が挙げられていますが、これには肥満や糖尿病が関連していると考えられており、事実、一部の患者さんには肥満の傾向がみられます。このことから、まずは健康的な食事をとる、定期的に運動するといった生活習慣の改善を行い減量することが大切です。特に多嚢胞性卵巣症候群かつ肥満の患者さんは、体重を減らすことで排卵しやすくなることがわかっています。病院での治療と併せ、減量と生活習慣の改善にも取り組んでいきましょう。

薬物療法

多嚢胞性卵巣症候群に対しては、減量に加えて薬物療法を行うのが一般的です。

治療はお子さんの希望があるかどうかによって分かれます。今すぐの妊娠希望がない場合最も勧められるのが低用量ピルによる治療です。排卵されないことでエストロゲンばかりが体内で多くなる状態を整えることで不正出血や子宮体癌(内膜癌)のリスクを低減します。また、男性ホルモンが増加することによる症状にも効果的です。

妊娠希望がある場合は排卵を促していくのが一般的です。まずはクロミフェンという排卵誘発剤の内服薬を処方しますが、効果が得られなかった場合は糖尿病薬や漢方薬との併用を実施します。それでも反応が良くないときは、排卵誘発剤の注射(HMG製剤やFSH製剤)をすることがあります。この注射で大半の患者さんは排卵できますが、多発排卵が引き起こされたり、副作用として卵巣過剰刺激症候群(多数の卵胞が発育することで腹水や腹痛などを生じる状態)を起こしてしまうケースも存在します。卵巣過剰刺激症候群となってしまった場合には入院加療が必要な場合もあります。

腹腔鏡手術と人工授精

薬物療法で効果が得られない患者さんには、腹腔鏡手術で卵巣に穴をあけて排卵を促す「卵巣多孔術」という手術が行われることがあります。術後の自然排卵率は高いですが、半年ほどで卵巣が元の状態に戻ってしまうので注意が必要です。

また、妊娠を希望される患者さんに対しては、排卵誘発剤の服用や投与と並行して人工授精が推奨されることがあります。それでも妊娠できなかったり排卵が起こらなかったりする場合は、体外受精をすすめるのが一般的です。

また、近年では未熟卵体外受精(IVM)を取り入れている医療機関もあります。この方法は一般的な体外受精より妊娠率は下がるものの、注射の回数が少なくて済むため、卵巣過剰刺激症候群の発生リスクを減らすことができるというメリットがあります。

おわりに:まずは生活習慣の改善から始めよう!

糖尿病や肥満との関連が深いとされる「多嚢胞性卵巣症候群」。正常な排卵のリズムを取り戻すためには、専門の医療機関で治療を受けるだけでなく、生活習慣を改善していくことも欠かせません。食生活を見直したり、運動量を徐々に増やしたりなど、まずはできることから始めていきましょう。

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