記事監修医師
東京都内大学病院眼科勤務医
渡辺 先生
2017/10/18
記事監修医師
東京都内大学病院眼科勤務医
渡辺 先生
「VDT症候群」という病気をご存知ですか?パソコンやスマートフォンを使用する時間が増えている現代社会において、問題になりつつある病気で、目や身体のトラブルなどさまざまな不調を引き起こすとされています。以降で詳しく解説していきます。
VDT症候群とは、パソコンなどのディスプレイを長時間見続けることによって起こる心や身体の不調のことで、現代社会とは切っても切れない関係にあります。テクノストレス眼症という別名の通り、症状は主に目に現れることが多いです。しかし、それを放置しているとやがては全身的な症状が現れ、精神面でも悪影響を及ぼす可能性があります。
仕事などで作業に集中する場合、画面を長時間見続ける行為は避けられません。また初めのうちは軽い症状で目薬などでもすぐ改善してしまうために軽くみられがちですが、VDT症候群によって後々身体にも症状が出るようになります。
VDT症候群で現れる主な症状は、目のかすみや疲労感、痛み、渇きなどです。これが長期にわたって続くと視力の低下も引き起こします。
次に、肩凝りや頭痛、だるさといった全身的な症状に広がっていきます。全身的な症状が出ているときは慢性化している状態なので、対症療法だけでは改善しにくくなっており、場合によってはディスプレイの凝視が根本的な原因と気付かず見過ごされることもあります。
また、イライラや不安感、倦怠感、不眠など精神面にも影響を及ぼすことがあります。ここまで慢性化すると日常生活にも支障をきたし、治療にも時間がかかってしまいます。ひどくなる前に適切な治療と、何よりディスプレイを見続けることが原因であることに気付くことが大切です。
VDT症候群はその名の通り、ヴィジュアルディスプレイを長時間見続けることが原因です。つまりはパソコンなどの画面を見続けることを指します。ディスプレイを凝視すると、まず過度な光が目に入ってきます。目の中ではこの光を適度に調節するような仕組みが働きますが、それは目への負担を増幅させます。また近くを見続けることになるためピント調節の機能も働き続け、負担がさらに大きくなります。さらに、ディスプレイを見ている間はまばたきの回数が減るという指摘もあり、目の渇きを助長します。
これらの悪条件が重なることで、目への負担が蓄積し、眼精疲労やかすみ、ぼやけ、痛みといった症状となって現れます。また全身への影響として、ディスプレイを見る際の不自然な姿勢が長時間続くことで、肩凝りや筋肉疲労、首や腰へ負担をかけることになります。
VDT症候群は、日頃から気を付けていれば防げる症状でもあります。まずは何よりもディスプレイを長時間見続けるのをやめ、定期的に目を休ませましょう。例えばアラームをかけて定期的に席を立ったり、ディスプレイの電源を消して目を閉じたり、仕事中でも簡単にできる方法がたくさんあります。
なお、ディスプレイから出る光のうち、ブルーライトと呼ばれる波長は最もエネルギーが高く、目や身体へ強く影響するとされるものです。これにはブルーライトをカットする効果のあるメガネを使うのが有効です。手元に目薬を用意しておき、こまめにさすのも良いでしょう。
また、同じ姿勢からくる身体の凝りにはストレッチが有効です。ストレッチといっても、少し伸びをしたり席を立って歩くといった軽い運動でも身体がほぐれます。
目のかすみや視力低下だけでなく、だるさや不眠にも発展する恐れのあるVDT症候群。長時間ディスプレイを見続けないようにしたり、定期的にストレッチをしたりして、日頃の対策に努めましょう。