記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/10/18 記事改定日: 2019/3/26
記事改定回数:1回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
顔の筋肉が動かなくなってしまい、日常生活にも支障をきたすことのある「顔面神経麻痺」。なぜ顔面神経麻痺は引き起こされるのでしょうか?
症状や治療方法について解説していきます。
顔面神経麻痺とは、顔面神経が麻痺して顔の筋肉が動かなくなってしまったり、舌の一部に味覚障害が生じたりしてしまう疾患です。顔の片側に症状がみられることが多く、片側の表情筋の運動が障害されてしまいます。
といった症状が現れますますが、これらの症状によって起こる顔の歪みで発症に気がつくケースも少なくないようです。
顔面神経は舌の感覚も支配しているので、味覚障害が起こってしまうこともあります。
また、口の片側が閉まらなくなってしまうために食べ物がこぼれる、飲み物が飲みづらくなる、はっきりとしゃべりにくくなる、といった症状が出ることもあり、食事や会話等といった日常生活動作を普段通りに行えなくなってしまうこともあります
顔面神経麻痺にはいくつかの種類があり、それぞれで症状や症状の出る場所に違いがあります。顔面神経神経麻痺は障害の生じる場所によって、大きく中枢性と末梢性に分類されます。
中枢性顔面神経麻痺は、顔面神経の働きを司る延髄の「顔面神経核」より中枢側の大脳などにダメージが加わることによって生じます。主な原因は脳梗塞や脳出血、脳腫瘍など脳にダメージを与える病気です。
症状の現れ方に特徴があり、額や目など顔の上部の筋肉運動は左右両方の大脳皮質に支配されているため、麻痺の程度が軽いのが特徴です。特に、額のシワを寄せられるのが中枢性か末梢性かを判断する重要な指標になります。
末梢性顔面神経麻痺は、延髄の「顔面神経核」より末梢側を走行する顔面神経の働きが障害される病気です。原因は様々ですが、明確な発症メカニズムが解明されていないベル麻痺、帯状疱疹ウイルス感染、糖尿病による末梢神経障害などが挙げられます。
症状の現れ方は中枢性よりも強く、片側の顔面筋が動かなくなることで目や口が閉じられない、口角が下がる、上手く話せないなどの症状が見られます。
顔面神経麻痺の治療としてはまず、薬物療法が選択されます。治療薬として選択されるのは、副腎皮質ホルモン剤、ビタミン剤、血流改善剤、神経賦活剤などです。発生直後には約2週間点滴を行うことで治療効果を高めます。
また、95%の酸素に5%の炭酸ガスを混ぜた混合ガスを吸入し、顔面神経への血流を改善させることで治療効果を高めることも出来ます。この効果は星状神経節という自律神経の神経節に局所麻酔剤を注入する、星状神経ブロック療法でも得ることが可能です。
以上の治療で効果が得られない場合、または慢性期に突入してしまった場合に、手術療法が選択されることがあります。具体的には顔面神経管開放術、形成外科的治療などが選択肢として挙げられます。
顔面神経麻痺の後遺症には、病的共同運動や顔面拘縮などがあります。
病的共同運動とは、目と口の神経が間違えて繋がってしまうことで生じる、目と口の筋肉が同時に動いてしまう症状です。
たとえば、目を閉じると口も同時に意思とは反して動いてしまいます。この症状が生じてしまうと再生は困難です。
顔面拘縮は顔の筋肉を動かさない状態が続くことで、表情筋が固く、短くなってしまう症状です。
顔面神経麻痺のリハビリは表情筋の強化というよりはこれらの後遺症の予防が主な目的となります。
リハビリにはいくつか方法がありますが、顔を優しく撫でるようなやさしいマッサージで表情筋の拘縮を防ぐのが一般的です。このとき、強く擦る、表情筋を収縮させるなど、負荷をかけすぎてしまうと、病的共同運動を引き起こす恐れがあるので注意しましょう。
顔面神経麻痺は顔面拘縮などの後遺症が残ってしまうことがあり、治療の中心はこれらの後遺症を防ぐことです。
早期の段階で適切な治療を受けることが大切になってきますので、気になる症状があるときはすぐに病院を受診しましょう。