人格(パーソナリティ)障害の症状と診断

2017/10/26

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

人格障害とはパーソナリティ障害とも呼ばれ、思考や行動に問題が起こり健全な対人関係が築きにくくなる障害です。仕事などのトラブルを引き起こすことも多い人格(パーソナリティ)障害について解説していきます。

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人格(パーソナリティ)障害とは


パーソナリティ障害とは、本来持っている自分や他者、そして社会に対する見方が歪み、文化や常識の許容範囲を超えた時点で認められるものです。

通常、社会で生きている人間は、自分や他者に対して柔軟性のある見方をしており、言動や行動などから意味を汲み取ろうとします。しかし、パーソナル障害に陥ると人格的に支障を来たしワンパターン化した思考や行動を繰り返すようになり、対人関係においても意味不明な言動が長時間続き仕事上でもトラブルを起こすようになります。

特に、思考傾向として、自分を卑下したり無価値に感じたりするので「自分は他人から愛される価値がない」と思いがちです。幼少期に虐待を受けたとか、充分な愛情を受けなかった背景が原因として挙げられ、これは本人に性格の問題ではなく、深層心理に起因するものだと考えられています。

どのように定義されているの?症状の種類は?


パーソナリティ障害の診断基準の一つが、米国精神医学会が定める診断・統計マニュアル第5版です。その大筋としては、その人の属する文化から著しく偏った内的体験を持つ場合、そこから生じる行動の持続様式に当てはまる場合となっています。

様式には、認知をはじめ、感情性や対人関係機能、そして行動制御の4つの領域があり、この中の2つ以上で障害が認められた場合、パーソナル障害と判断されます。
障害の特徴としては、柔軟性が乏しく個人的にも社会的にも許容能力が著しく劣ることです。それが本人や周囲など幅広い範囲に及び、苦痛や機能障害を引き起こします。

パーソナリティ障害は、症状の類似性に基づいて3群に分けられており、A群の特徴としては、奇妙性が高く、風変わりな性格の様相である点が挙げられます。B群の特徴は演技的及び情緒的、C群の特徴は情緒不安定及び強迫観念的となっています。

どのように障害に気づくのか?


パーソナリティ障害の診断は行動パターンだけで診断を下すことはできません。持続的な内的様式と行動様式が診断基準になるため、行動様式が長期間に及んで繰り返されるものかどうかを確認する必要があります。
また、患者自身が自主的に医療機関を受診することも殆どなく、抑うつやパニック発作、不眠などの精神症状など、症状が進行して初めて受診する気持ちが起こるようになります。

その他、自傷や摂食障害、仕事や異性関係等の対人トラブルを起こすことで周囲が気づくケースもあります。
また、パーソナリティ障害は類似症状が見られる気分障害や不安障害と鑑別する必要があります。行動様式が慢性化すると鑑別が難しくなり、外傷後のストレス障害等が原因になる精神疾患と区別しにくくなるといわれています。

治療方法について

パーソナリティ障害の治療としては、患者と医療担当者間で明確な治療目標の設定が必要になります。その目標に向って双方が協力することで、一定の改善効果が期待できるからです。
しかし、現在のところ当障害自体の治療を目的とした保険適用薬はありません。対症療法的に抗精神病薬や気分安定剤などを処方することになります。但し、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)などの抗うつ薬に関しては、衝動性を増加させるリスクがあるので、処方に際しては十分な注意が必要となります。加えて、ベンゾジアゼピン系の抗不安薬に関しては、依存性や乱用リスクがあるので、処方されないことが通例になっています。
パーソナリティ障害は、加齢にともなって症状が目立たなくなる傾向があり、重症であっても軽快することがあります。

おわりに:気になる言動に気がついたら、早めに病院へ

人格障害ははっきりとした症状を見つけにくい障害です。自分で症状を自覚しにくいので、周囲の人が気になる言動に気づいた段階で病院を受診するようにすすめてあげましょう。

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