アスペルガー症候群の診断テストの正しい使い方と治療の注意点とは

2017/10/30 記事改定日: 2018/5/28
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

アスペルガー症候群の認知度が高まりつつありますが、病名だけが先行してしまい、具体的な症状や適切な接し方を知らない方も多いのではないでしょうか。
今回の記事では、アスペルガー症候群の診断テストの正しい使い方やチェックリスト、治療を進めるうえで大切な接し方の注意点について説明しています。

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アスペルガー症候群の診断テストの利用意義 ― どんなことに気をつければいい?

アスペルガー症候群は、自閉症スペクトラムとも呼ばれる発達障害の一種です。知的障害や言葉の遅れがないものの、社会性が若干劣り、コミュニケーションに難があり、こだわりが強いなどの特徴があります。

アスペルガー症候群の症状

アスペルガー症候群の主な症状は、コミュニケーション障害です。アイコンタクトや言葉のニュアンスを読み取るのが苦手であり、ストレートな表現を使いすぎて相手を傷つけるなどの特徴が見られます。会話自体は普通にできるものの、行間を読むのが苦手なのが特徴です。

場の空気を読むのが苦手であるため、対人関係もうまく構築できない傾向にあります。周りの雰囲気を見て発言をすること、行動をとることができないので、気が利かないと相手に思わせてしまうことがあるのです。

他にも、物事に対して強いこだわりを持ち融通が利かない、独自のルールを持ち、それを逸脱させられることが許せないなどの症状はあるものの、記憶力がいい、集中力が強いといった優れた面を持ち合わせていることもあります。

診断テスト(セルフチェックテスト)の目的と使用上の注意

アスペルガー症候群が広く知られるようになり、今では様々なアスペルガー症候群の可能性を探るためのセルフチェックを行う診断テストが出回っています。
しかし、これらの診断テストはあくまでもアスペルガー症候群の「可能性」を示すだけのものであり、実際の診断は精神科を始めとする病院でしか行うことはできません。病院を受診すべきかの判断材料の一つではありますが、診断テストだけで自己判断を行うのではなく、気になるような症状がある場合には必ず病院を受診するようにしましょう。
もしご自身やご家族にアスペルガー症候群の不安がある場合は、以下のような項目に当てはまるのかを考え、当てはまる項目が多い場合には適切な病院に相談して下さい。

大人

  • 自分では悪意を持って接しているつもりはないのに、他者との軋轢が生じやすい。
  • 相手の冗談や嘘が分からず、騙されることが多い。
  • 「目が合わない」と言われることがある。
  • 自分の気持ちを言葉で表すのが苦手である。
  • 興味の範囲が極めて限られており、その他のことをするのが苦痛である。
  • 突然の予定変更があると激しく動揺して、うまく対応することができない。
  • 食べ物の好き嫌いが多い。

子供

  • こだわりが強く、決まったおもちゃでしか遊ばない。
  • 周りの状況を適切に捉えることができず、集団生活の中で浮いた存在となる。
  • 偏食が激しい。
  • 特定の科目は素晴らしい成績を収める一方、その他の成績は極めて悪い。
  • 迷子になりやすい。
  • 人見知りはしないが、一人遊びが好きである。
  • 思い通りにいかないことがあると、激しい癇癪を起す。
  • 単調な作業を好む。

大人でも子供でも、これらの項目に多くあてはまる場合は、アスペルガー症候群の可能性があります。しかし、全ての項目に当てはあったからといって確実にアスペルガー症候群であると断定することはできません。また、当てはまる項目が少ないからと言って完全に否定することはできませんので、注意が必要です。

アスペルガー症候群の原因はわかっているの?

アスペルガー症候群の原因として脳機能の障害による説が有力となっているものの、まだ特定はされておらず、そのメカニズムもまだわかっていません。脳のネットワークの問題や脳内物質の異常など先天的な問題もアスペルガー症候群を引き起こす説として持ち上がるものの、これといった決め手に欠け、近年では複数の要因によって発症するのではないかとも言われています。確かな原因はいまだ不明であるのは明らかです。

アスペルガー症候群の治療法と接し方のコツ

幼少期に周りの子供と少し様子が違うことに気づいたことをきっかけに、受診することが多いといわれています。診断に関しては、診断基準をもとにアスペルガー症候群の特徴と本人の様子を照らし合わせ、総合的に判断します。

診断基準

病院で行うアスペルガー症候群の診断には、国際的な基準があります。日本で最もよく用いられる診断基準はWHOが示しているICD-10によるものです。
診断基準は4つの項目に分かれ、それぞれが当てはまるとアスペルガー症候群と診断されます。

具体的には、言語発達に遅れがなく、三歳までに二語文が使えること、社会性に問題があり、他者との良好な関係を築くことができないこと、興味が限定され、特定パターンの行動を繰り返すこと、他の発達障害ではないこと、この4つの項目すべてに当てはまる必要があります。

しかし、アスペルガー症候群の診断には慎重な行動観察などが必要なため、通常一回のみの診察で確定診断が下されることはなく数回の受診を必要とするケースがほとんどです。

治療

治療法としては、2つ存在します。1つは療育と呼ばれる治療法です。何かしら苦手なものがあればそれを別のことでカバーするなど、障害の特性を自らが知り、それをコントロールする術を学び、それでいて良い部分を伸ばしていくというものです。

もう1つは薬物治療です。この治療法は別の精神疾患を抱えている場合や、神経過敏状態の場合に実施されるのが一般的です。

接し方

接し方として大事なことは、アスペルガー症候群の特性を理解することです。「この人はコミュニケーションをとることが少し苦手だから、こちらが配慮をしてあげよう」と心遣いから、トラブルを未然に避けられるようになります。次に伝え方を工夫することです。長い言葉で伝えても、アスペルガー症候群の人はそれを確実に理解することが難しい傾向にあります。接し方として、できるだけ短い言葉で伝えてあげることも大事です。

接し方で間違えやすいのは、ついつい怒ってしまうことです。特に感情的な接し方はアスペルガー症候群の人を当惑させ、ネガティブな印象を与えるだけに終わります。教えてあげるというスタンスを大事にし、根気よく説明することが大事です。

おわりに:アスペルガー症候群の特性を理解することが早期発見と治療に役立つ

アスペルガー症候群の患者さんは一般的に空気を読むのが苦手なため、対人関係がうまく構築できない傾向にあります。そのため、相手がつい怒ってしまったりするケースも少なくないのですが、そういったトラブルを防ぐためには、アスペルガー症候群の特性を周囲の方が広く認知することが重要です。

また、早期のうちに対応することで、本人の生きづらさが楽になる場合もあります。不安がある場合は早めに専門医を受診しましょう。病院に行くべきかどうか迷っている人は、一度チェックリストを確認して、病院に行くかどうかの目安にしてください。

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