記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/11/29
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
顔の片側がピクピクとひきつったりしてしまう「片側顔面けいれん」。今回の記事ではこの片側顔面けいれんについて、特徴的な症状や発症原因、治療法などを解説していきます。
片側顔面けいれんは、顔の片側が自分の意志とは関係なくピクピクとけいれんしたり、引きつったりするような症状のことです。40代以上の人が発症しやすく、比較的女性に多く起こると言われています。
初期はまぶたなど目の周辺のけいれんから始まり、やがて顔の片側全域に広がってあごの下にまで及んでいきます。命にかかわる病気ではありませんが、睡眠時にもけいれんが起こったり、また特に女性の場合は顔に出る症状だけに、見た目からくる精神的負担も大きいと言えます。
症状が進行すると、片方のまぶたが勝手に下がるほどの激しいけいれんが起こり、片目を閉じたまま動くことで、何かにぶつかったり転んだりするなどの危険があります。車を運転する人の場合、事故の原因になる恐れもあり、片側顔面けいれんは日常生活にかなりの支障を及ぼす病気と言えます。
片側顔面けいれんの原因は、脳の深部で顔面を動かしている神経に血管が接触し、圧迫することによって起こると言われています。片側顔面けいれんを発症しやすい人は、高血圧や高脂血症など、ドロドロした血液が原因で起こる疾患を抱えているケースが多く、動脈硬化が進んでしまった血管が、顔面神経を圧迫しやすくなっていると考えられています。
また、過度のストレスや過労、運動不足、顔面神経麻痺(顔の片側の筋肉が脱力して起こる麻痺)の後遺症としてあらわれるケースも指摘されています。そして稀に、脳腫瘍や脳の動脈瘤など、重大な病気のサインとしてあらわれる場合もあると言われています。
片側顔面けいれんかどうかは、まず問診や視診を行います。また、目の周囲のみがけいれんする顔面ミオキミアなど、似た症状が出る病気と区別しやすいよう、まぶた以外にも症状が出ることをあらかじめ医師に伝えておくことも大切です。視診では、眼を強く閉じてから急に開かせたり、口元を横に引き伸ばしたりといった検査を行います。
また、顔の筋電図を取ることもあります。脳の病気が疑われる場合は、CTスキャンやMRIなどによって精密検査も行われます。
片側顔面けいれんの治療法には、ボツリヌストキシン注射や手術、薬物療法などの方法があります。
最もよく行われているのがボツリヌストキシン注射で、けいれんしている顔の筋肉にA型ボツリヌス毒素製剤を注射します。ボツリヌス毒素は食中毒を起こす毒素ですが、筋肉をまひさせる作用を持ち、それを利用して治療を行います。安全な程度に希釈されているボツリヌス毒素によって、収縮している筋肉をほぐすことでけいれんが起こりにくくなります。
手術は、脳の深部での神経にかかわる手術だけに全身麻酔で行われ、対症療法のボツリヌストキシン注射よりも根治する可能性が高まりますが、危険がまったく無いとは言い切れないため、医師との綿密な相談を行った上で、治療方法を選択することが重要です。
薬物療法では抗けいれん薬や、(ストレスなどが原因で発症した場合)精神安定剤を服用させますが、上記の2つの治療法と比べ、効果がそこまで得られないことがほとんどです。
片側顔面けいれんは、動脈硬化が起こっている人に発生しやすい傾向にありますが、そのほかに、脳の重大な病気によって引き起こされている可能性もあります。片側顔面けいれんがみられたら、早期に医療機関を受診することが大切です。