記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/10/31 記事改定日: 2019/2/4
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
前庭神経炎は視界がぐるぐると回る「回転性めまい」が起こることが特徴であり、メニエール病などとの鑑別が難しい病気です。
この記事では前庭神経炎の基礎知識を紹介していくので、めまいが起こったときの対処に役立てましょう。
前庭神経炎の場合には耳鳴りや難聴を伴わないことが特徴的で、めまいが起きても安静にしていれば良くなることが多いです。
ただ、同じレベルのめまいが数日にわたって続き、吐き気や嘔吐も同じように数日間続きます。
突然、目の前がぐるぐる回っているような回転性の強いめまいに併せて、吐き気や嘔吐を生じることがあります。
症状は数ヶ月続く場合もありますが、通常、めまいの大きな発作は1度のみで、1〜3日程度でおさまることがほとんどです。
一度完治すると基本的に再発はしませんが、症状が出ているときには安静にしていても良くならないことが多く、動くとさらに悪化することがあります。
めまいが起こると、ふらついてまっすぐ歩けなかったり、立っていられなかったりすることがあり、通常より頭が重く感じられます。さらに、前庭神経炎の発症前には風邪に似た症状を発症する人が多いといわれています。
めまいは内耳にある前庭や半規管、前庭神経、脳幹、小脳のいずれかに障害が起きることによって生じます。
前庭神経は脳と耳を繋いでいる「内耳から脳へ情報を伝達する役割がある神経」で、前庭神経炎が起こる具体的な原因はわかっていませんがウイルス感染など諸説あります。
良性発作性頭位めまい症との違いを見極めることが肝心です。これらの病気はめまいが起こっても、安静にしていれば良くなることが多いです。
メニエール病については、聞こえ方が変わったり聞こえづらくなる難聴や耳鳴りを併発することが多いですが、前庭神経炎の場合はありません。
ただし、メニエール病もすぐにはめまいが良くならないという共通点があり、その程度や持続期間は個人差がありますが、安静にしていても回復しないことが多いという点でもメニエール病と前庭神経炎は似ています。
病院では、これらの幾つかの症状を照らし合わせて、前庭神経炎かどうかを診断します。難聴や耳鳴りは軽度であれば自覚症状がないこともあるので、めまいが続くときは必ず病院で検査してもらいましょう。
前庭神経炎の明確な発症メカニズムは解明されていません。しかし、前庭神経炎を発症する前に風邪をひいていたという人が多いことから、風邪の原因となる何らかのウイルスが前庭神経に感染したり、血行障害を引き起こすことが発症の引き金になると考えられています。
このため、風邪をひいた後にめまいや吐き気、頭重感などがある場合は早めに耳鼻科を受診するようにしましょう。
一方で、前兆症状が全く起こらない人もいますので、めまいや嘔吐などの症状がある場合は速やかに病院を受診し、早期治療につなげるようにしましょう。
一般的には、めまいや吐き気を抑えるための鎮静剤や制吐剤、神経の炎症を抑えるためのステロイド剤が処方されます。
主に使用されるのは、ベタヒスチンメシル酸塩やジフェニドール塩酸塩です。
これらは「抗めまい薬」ともいわれていて、どちらも脳の血流を促すことでめまいを軽減します。
強いめまい感や吐き気は数日で治ることが多いので、基本的にはこれらの薬物療法のみで治療を終えます。
しかし、ベタヒスチンメシル酸塩は消化器に負担がかかるため、吐き気などの副作用も報告されています。
胃潰瘍など胃腸の調子が悪かったり、持病がある人には副作用が出やすいとされているので、医師との相談が必要です。ジフェニドール塩酸塩には、口が渇く、食欲不振などの副作用が報告されていますが、重度に至ることはほとんどありません。
前庭神経炎のめまいは安静にしていても治まりにくいという特徴がありますが、早期の治療で完治が見込める病気です。
しかし、めまいを主症状とする病気は多く、それぞれで治療方法も異なります。めまいが起こったときは自己判断せず、早めに病院を受診するようにしましょう。