記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/11/16 記事改定日: 2020/1/10
記事改定回数:2回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
歩行障害や嚥下障害など、日常生活に支障を及ぼすさまざまな症状が現れる「進行性核上性麻痺」。国の指定難病にも定められている病気ですが、果たしてこの進行性核上性麻痺は治療可能なのでしょうか?
この記事では、進行性核上性麻痺の治療の進め方と受診のタイミングについて説明していきます。
進行性核上性麻痺は、大脳基底核変性症やパーキンソン病とともにパーキンソン病関連疾患に含まれる病気です。
40歳以降から平均60歳代で発症し、特に大脳基底核(身体の動きを円滑にしたりバランスを補正する機能を司る部分)や脳幹(呼吸や心拍調節、嚥下機能などを司る部分)といった部位の神経細胞が減少していきます。
進行性核上性麻痺の原因については、現在のところはっきりと解明されていませんが、脳の各部位にある淡蒼球、視床下核、小脳歯状核、黒質、脳幹被蓋などの神経細胞が脱落し、異常な酸化タウというタンパク質が神経細胞内に蓄積することによって起こると考えられています。
進行性核上性麻痺の予後については、一般的に症状による日常生活動作の低下の進行が速く、平均2~3年で車椅子が必要となり、平均4~5年で寝たきりになる傾向があります。
進行性核上性麻痺の代表的な症状として、以下の4つが挙げられます。
進行性核上性麻痺を発症すると初期段階では次のような症状や心身の変化が現れます。思い当たる症状が続くときは放置せずに神経内科などを受診して相談するようにしましょう。
進行性核上性麻痺の根本的な治療法は、現在のところ確立されていません。そのため、出現した症状の緩和や進行を遅らせるための対症療法が行われることとなります。
まず進行性核上性麻痺の初期段階では、ドーパミンなどのパーキンソン病治療薬の投与します。効果は一時的なものに留まる場合が多く、精神症状に対して抗うつ薬を使うこともあります。
また、薬による治療と合わせて症状の軽減や進行を少しでも遅らせるために重要になってくるのがリハビリテーションです。
日常生活上では転倒が大きなリスクであり、転倒による骨折などで日常生活に大きな支障をきたすことにつながりますので、できるだけ運動を行い、身体の筋肉の力やバランス機能を含めた運動機能の維持をしていくことが求められます。
また、飲み込みなどの嚥下機能のリハビリも日常生活におけるQOLの維持や誤嚥性肺炎を予防していく上では重要となります。
進行性核上性麻痺では、転倒を予防するために体幹を鍛えるためのストレッチや筋力トレーニング、バランス訓練などを行う必要があります。
とくに頸部の筋強剛が強い場合は転倒するリスクが高くなりますので首のストレッチは入念に行う必要があります。
その他にも、症状に合わせて嚥下訓練や言語訓練などが行われます。
リハビリを行う際には、転倒に注意し、常にだれかが近くで支えられるような体制を整えてから行うようにしましょう。
また、嚥下訓練などでは誤嚥性肺炎を引き起こすこともありますので、日頃から口腔ケアをしっかり行い、リハビリ後に発熱や咳などの症状が見られる場合には速やかに病院に相談するようにしましょう。
進行性核上性麻痺の治療法は、まだ確立されていないというのが現状です。ただ、薬物療法やリハビリテーションを行うことによって、症状の進行を最小限に食い止めることができると考えられているので、気になる症状や変化があるときは早めに専門の医療機関を受診しましょう。