記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/11/16
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
筋力が低下したために歩行が難しくなったり、嚥下障害を引き起こしたりする難病の「多発性筋炎」。この多発性筋炎に対しては、どういった治療が行われるのでしょうか。また、治療上の注意点としてはどんなものがあるのでしょうか。
多発性筋炎とは、骨格筋の炎症によって四肢近位筋や頸部、咽頭筋などの対称性筋力が低下し、障害を起こす病気のことで、40~60代の女性に多く発症します。
多発性筋炎が発症する詳しい原因についてはよくわかっていませんが、何らかの原因により筋肉を中心とした自己免疫反応が生じて、自らの筋細胞を破壊してしまうために起きるのではないかと考えられています。
多発性筋炎は筋疾患だけでなく、全身性自己免疫疾患の側面もあるために、自己免疫疾患や悪性腫瘍などの合併症を引き起こすこともあります。
先述のとおり、多発性筋炎は四肢近位筋や頸部、咽頭筋などの対称性筋力が低下する病気ですが、下肢近位筋に筋力低下が多くみられる場合は、歩行困難や階段の昇降困難、座った状態から立ち上がれない、といった症状がみられます。上肢近位筋の筋力が低下すると、腕が上がらなくなり、高いところの物がとるのが困難になります。また、頸部の筋力が低下すると、頭を枕からあげられなくなったり、咽頭筋の筋力が低下すると嚥下構音障害を引き起こしたりします。
これら筋力低下の症状と同時に、筋肉痛も半数程度の患者さんに認められ、慢性化する筋萎縮も見られるようになります。さらに、皮膚筋炎や間質性肺炎、心筋炎から不整脈や心不全などを併発することもあります。
多発性筋炎の治療は早ければ早いほど良いとされています。治療法としては副腎皮質ステロイド薬による薬物療法がメインですが、免疫抑制薬やγ‐グロブリンの静注療法などの治療法もあります。なお、副腎皮質ステロイド薬には副作用があるので、きちんと医師の指導のもとに薬物療法を進めていくことが重要です。
また、急性期では安静と体を温かくすることが大切ですが、回復期では低下してしまった筋肉をリハビリで回復させていきます。指導に従って軽いストレッチなどからスタートし、関節拘縮と廃用性萎縮などの予防も行います。ただし、過度の運動は避けてください。
多発性筋炎の治療・リハビリの注意点としては、無理をしないということです。1日も早く回復したいとの思いから無理してしまうと、逆に筋肉を傷め、炎症させてしまうことになりかねません。全身性の慢性炎症疾患であることを忘れず、ステロイド薬の長期服用による副作用にも注意を払いましょう。副作用で怖いのは感染症です。ステロイド薬は白血球の機能を低下させる副作用が認められています。そのためウイルスや細菌と戦う力が弱まってしまい、通常よりも感染症が起こりやすくなっています。これを易感染と言いますが、インフルエンザや肺炎、結核などには注意が必要です。また、血糖値や血圧、脂質異常症、白内障、緑内障などの副作用にも注意が必要です。
多発性筋炎の治療では、副腎皮質ステロイド薬による薬物療法を中心に行います。ただし、治療中は感染症の発症リスクが上がってしまうので、専門医の指示のもと、焦らず適切なケアを続けていくことが肝心です。