記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/11/1 記事改定日: 2019/3/22
記事改定回数:1回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
脊髄腫瘍とは、脊髄周りの組織にできた腫瘍のことであり、しびれや麻痺、排尿障害などの症状が現れる病気です。
この記事では、脊髄腫瘍の症状や原因、治療などの基礎知識の解説をしています。
脊髄腫瘍とは、脊髄およびその周囲組織にできる腫瘍で、脊髄や神経根、脳脊髄を包む硬膜や脊椎から発生します。発生する頻度は10万人あたり1~2人とされ、これは脳腫瘍の1/5~1/10程度であり比較的珍しい病気です。
脊髄腫瘍は発生する場所により
の三つに分類されます。③の脊髄の中から発生する腫瘍以外は、通常は脊髄が腫瘍によって圧迫されて症状がでてきます。脊髄の中から発生する腫瘍は脊髄そのものが傷害され症状が現れます。
脊髄腫瘍の多くを占める良性の腫瘍の場合、数ヶ月から数年の経過で症状が進行し、悪性の場合は進行が速いです。
はじめは手足の感覚に違和感を感じるようになり、次に局所の痛みが出現します。そして、腫瘍が増大して脊髄の圧迫がひどくなるにつれ、手足の麻痺が発現し、更に進行すると尿が出にくくなったり、失禁してしまったりすることもあります。
脊髄は頭に近い方から連続して頸髄(首の部分)、胸髄(背中の部分)、腰髄(腰の部分)となっていますが、どの高さに腫瘍ができたかによって症状が違ってきます。
たとえば、頸髄に腫瘍ができると手足や体幹(胸腹背中)の感覚障害や麻痺が出ますが、腰髄に腫瘍ができた場合は手ではなく足に影響が出ます。
脊髄腫瘍は、脊髄を圧排するため様々な神経症状が現れます。初期症状としては以下のようなものが挙げられますので、思い当たる症状が多い場合は病院を受診して検査を受けるようにしましょう。
症状や神経学検査で脊髄腫瘍が疑われる場合、以前は脊髄造影(背中から針を刺して造影剤を脊髄周囲の髄液に入れ、脊髄の形をみる検査)が行われましたが、現在はMRIでの検査が主流です。MRI検査でほとんどの脊髄腫瘍は診断することができます。
しかし、腫瘍が周囲の骨を壊したり、腫瘍自体に骨のような硬い組織を含む場合、あるいは神経や硬膜ではなく脊椎からでた腫瘍を疑う場合には、CTスキャンや脊椎のX線(レントゲン)撮影を行います。また、
腫瘍に血管が豊富に含まれている場合、あるいは腫瘍か血管由来の病気か診断が難しい場合には、血管撮影を行います。
脊髄腫瘍はほとんどの場合、腫瘍を切除する手術療法が選択されます。しかし、症状が軽く進行が遅いと判断された場合や高齢者の場合は様子を見るケースもあります。
種類によりますが、脊髄腫瘍のほとんどが全摘出や腫瘍のほとんどを摘出することが可能とされているため、術後再発しない症例も少ないないです。
ただ、境界がはっきりしない腫瘍の場合は、ある程度腫瘍の容積を減らすか、腫瘍のごく一部をとり生検を行い、残った腫瘍に対して放射線照射や抗がん剤による化学療法を行うこともあります。
とくに腫瘍が悪性であった場合には、このような補助療法が必要と考えられています。
ただし、種類によっては手術しても完治が難しく、脊椎の再建が必要な場合もあります。
腫瘍の種類によっては治療が困難なものもありますが、脊髄腫瘍は全摘が可能な場合も多く、術後再発しないケースも頻繁にみられます。
様々な症状が現れる病気なので「この症状に気をつける」ということはできませんが、しびれや麻痺などが現れた場合は、軽いものでも念のため病院で検査してもらうようにしましょう。