記事監修医師
東京都内大学病院眼科勤務医
渡辺 先生
2017/11/20 記事改定日: 2020/8/24
記事改定回数:1回
記事監修医師
東京都内大学病院眼科勤務医
渡辺 先生
眼病にはさまざまな種類がありますが、その一種に徐々に見える範囲が狭まっていく「網膜色素変性症」があり、遺伝性の病気といわれています。今回の記事では網膜色素変性症について、具体的な症状や見え方、診断方法、治療法などを解説していきます。
網膜色素変性症は、眼の網膜に異常がみられる病変です。網膜とは、光を感じる細胞が集まってできており、見たものの焦点を結ぶ働きをします。網膜色素変性症とは、その網膜が通常よりも早く老化してしまうことで機能しなくなった状態です。
網膜色素変性症は、遺伝性の病気であることがわかっていますが、顕性(優性)遺伝だけでなく潜性遺伝の形をとることもあり、親が発症しているから子供も必ずなるというわけではありません。反対に、近親者に発症者がいなくても発症することもあります。
網膜色素変性症を発症すると、多くの人は夜盲の症状から始まります。
網膜色素変性症の発症後、病状が進行してくると、視力が低下してきて、最後には完全に光が見えなくなります。
この症状は非常にゆっくりと進むので、発症してから1年ほどでは検査をしても悪化しているとわからないことがあります。また、症状の進行には個人差が大きく、若くして失明してしまう人もいれば、高齢でもある程度の視力を保っている人もいます。
網膜色素変性症の診断では、まず眼底検査を行い、視野検査を行うのが一般的です。そのほか暗順応検査、暗順応検査を行うことがあります。
網膜に小さな黒っぽい色素沈着部分があるかどうかを調べます。病状が進んでくると、骨小体様色素沈着という特徴的な所見があらわれるからです。血管が細くなったり、視神経の萎縮がみられることもあります。
視野検査は、見えている範囲を調べる重要な検査です。特殊な機械を使って検査をすることで、実際にどれくらいの範囲が見えているかを知ることができます。
また、夜盲の症状を見るための暗順応検査や、光への反応を調べる網膜電図が行われることもあります。網膜電図とは網膜が光を受けた時に発生する電位を調べる検査で、網膜色素変性症を発症している場合には、早期から電位が低下し、消失していることがあります。
網膜色素変性症の根本的な治療法はみつかっていません。そのため、いかに病状の進行を遅くできるかの治療が行われます。具体的には、暗順応改善薬やビタミンA剤、循環改善薬などの薬物治療が中心です。
なお、網膜色素変性症の合併症として、白内障や緑内障がありますが、それらに対しての治療は通常通り行えます。また、生活の中で強い光を避けることで、進行が抑えられるとも考えられているので、日頃からサングラスを着用し、光を遮る必要があります。
網膜色素変性症と診断された場合は、できる限り進行を遅らせ、視力や視野の異常による思わぬ怪我などを予防するために次のようなことに注意する必要があります。
ローケアビジョンとは、視力が低い人が快適に日常生活を過ごすことができるように残った視力を最大限に活用できるよう支援することです。
医療的・社会的・職業的・心理的なさまざまなケアのことを指し、低視力でも見えやすいタブレットやスマホ、色のコントラストが強い食器、振動や音声で時刻を知らせる音声時計など様々な道具が活用されています。
網膜色素変性症を患って視力が低下しても、このようなさまざまな支援を受けながら日常生活を送っている人が増えてきています。
網膜色素変性症は遺伝性の病気ですが、必ずしも親から子供へ遺伝するわけではありません。発症した場合、ゆっくりと進行していくことが多いですが、最終的には失明に至る可能性のある眼病です。物が見えにくいなどの違和感を感じたら、早めに眼科で検査を受けて治療を始めるようにしてください。