記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/11/13
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
「ハンチントン病」という病気をご存知ですか?初めて聞いたという方も多いかと思いますが、国の難病にも指定されている病気です。今回の記事ではこのハンチントン病について、症状や治療法など全般的な情報をお伝えしていきます。
ハンチントン病は、遺伝子の一部が加齢とともに段々と変性してしまうことにより、運動機能や認知機能に影響を及ぼしてしまう慢性進行性神経変性疾患です。顕性遺伝の疾患のため、患者さんの子供は50%の確率でハンチントン病を発症するとされています。
平均発症年齢は35~44歳で、発症した場合の生存期間の中央値は発症後15~18年とされています。ごくまれに、成人前に発症することもあります。発症率の男女差についてはほとんどありません。
なお、ハンチントン病は欧米人の場合およそ1万5千人に1人の割合で発症するとされていますが、日本人の場合はおよそ15万人に1人と、比較的低い傾向にあります。
ハンチントン病の症状としては、まず運動機能の障害が挙げられます。最大の特徴は、自分の意志に関わらず体が動いてしまう、不随意運動がみられるということです。自分で思うように身体が動かせなくなるため、苦痛を感じることが多いです。
また、ハンチントン病は精神機能にも影響を及ぼします。抑うつ症状や激昂など感情をコントロールする機能が低下してしまったり、うつ状態が進んでしまうことで自殺衝動に目覚めてしまったりすることもあります。
そして、認知機能の低下もハンチントン病の主な症状のひとつです。柔軟な思考ができなくなり、不必要なこだわりが出てきたり、自分の考えへの執着が強くなったり、物事を段取り良く進められなくなったりといった症状が現れます。
なお、ハンチントン病が進行すると、末期には寝たきり状態になってしまいます。このころになると嚥下機能の低下がみられるようになり、やがて呼吸が停止して死に至る可能性もあります。
ハンチントン病の治療法は、薬物治療とリハビリが治療の中心となっています。薬物治療については、オランザピンをはじめとする非定型抗精神病薬やベンゾジアゼピン系薬剤・抗てんかん薬などが処方されます。ただ、これらの薬はあくまでも症状を緩和させるためのものであり、根治的な治療薬は現代の医療技術ではまだ確立されていません。
なお、ハンチントン病の患者さんは、病気が進行するにしたがって体を動かさなくなってしまうことが多いですが、さらなる運動機能の低下を防ぐためにはリハビリを行うことも重要です。ただ、精神的な疾患に対しては精神科医から専門的な治療を受ける必要があります。
運動機能や精神機能、さらには認知機能など、さまざまな面で症状が現れるハンチントン病。現段階では根治的な治療法は確立されていませんが、さらなる医学の発展を待ちつつ、専門の医療機関にて適切な対症療法を続けていきましょう。