記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/11/10 記事改定日: 2019/6/25
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
発性筋炎は、筋肉の痛みや筋力の低下が起こる難病です。症状を抑えることはできますが、根本治療の方法はまだ見つかっていません。この記事では、多発性筋炎の基礎知識と治療の注意点について解説しています。
多発性筋炎は、手足の筋力が低下したり、筋肉の痛みが起きる病気です。座ったあとに立ち上がりにくくなったり、床に置いてある物を持ち上げることができなくなり受診する人が多いといわれています。また、あごの筋肉の力が弱くなって、食べる時にあごが疲れると訴える人もいるようです。
日本には約4000人ほどの患者がいるとされ、発症年齢は5~15歳くらいの小児と、40~60歳くらいの人が多いといわれています。小児では男女の差はありませんが、成人では1:2で女性の方が多いです。
筋肉の症状だけではなく、皮膚症状もある場合は皮膚筋炎と呼びます。瞼の上が赤紫になるヘリオトロープ疹や、指に紅斑が出るゴットロン徴候が特徴的な症状としてあげられるでしょう。
また、間質性肺炎を合併することもあります。特に抗MDA5抗体が陽性だった人や抗ARS抗体が陽性だった人は、高い確率で間質性肺炎を合併するので、肺機能の検査や胸部X腺(レントゲン)検査、採血検査などで定期的に調べる必要があります。
多発性筋炎は膠原病という自己免疫疾患の1つです。自己免疫疾患とは、本来はウイルスや細菌を排除するために働く免疫システムが誤作動を起こして、自分自身の体を攻撃してしまう病気になります。
そのため、全身の様々な臓器に炎症が起こりますが、多発性筋炎の場合は筋炎の名称のとおり、筋肉が攻撃され症状を現します。
なぜ、免疫システムが誤作動を起こすのかは、まだ解明されていません。しかし、多発性筋炎を発症した人の話を聞くと、発症前に大きなストレスを抱えていた人が多いという傾向があるといわれているため、ストレスとの関係性を指摘している専門家もいるようです。
根本的な原因が解明されていないために根治させることは難しいのですが、薬で症状を抑えることで通常と変わらない日常生活を送っている人もいますし、寛解といって症状が出なくなっている人もいます。
治療は、ステロイド療法で症状を抑えて生活の質(QOL:quality of life)を上げることが第一選択になります。
ステロイドと聞くと「副作用が強くて怖い薬」と不安になる人もいるかもしれませんが、正しく使い症状を管理することでリスクは最小限に抑えることができるといわれています。使うべき人にはタイミングを逃さずに使うことが最も大切です。
ステロイド療法で効果がみられない場合は免疫抑制剤が併用されますが、間質性肺炎の合併症が見られる場合には初期の段階でもステロイドと免疫抑制剤の併用が必要になります。
多発性筋炎は医師の指示通りに適切な治療を続けていくのはもちろんのこと、症状があり治療を続けている期間中は筋肉への過度な負担を避けるためにも、無理な運動はせずにできるだけ安静にしているようにしましょう。
なかには筋力の低下を恐れて筋トレをしたいと思う人もいるようですが、筋肉にダメージを与えて回復が遅れることになりますので、自己判断での筋トレは控えましょう。
また、多発性筋炎はストレスや疲れ、睡眠不足など好ましくない生活習慣を続けることで症状が悪化してしまうことがあります。治療中は、規則正しい生活を心がけ、十分な休息や睡眠時間を確保することが大切です。
難病である多発性筋炎は、根本的に治癒する方法はいまのところ見つかっていません。しかし、ステロイド療法を中心に症状を抑えることで、支障なく日常生活を送れるようになることが多いといわれています。ステロイドと聞き不安に思う人もいるかもしれませんが、症状と副作用のバランスを考えながら適切に使用していくことが多発性筋炎の治療に大切です。
医師の指示に従い、きちんと治療を継続していきましょう。