記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/11/13
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
細菌性急性急性胃腸炎は、細菌または細菌が産生した毒素によって、急性胃腸炎が引き起こされる食中毒です。この記事では、細菌性急性胃腸炎の症状や治療法などをお届けします。
細菌性急性胃腸炎とは、主に飲食物に付着した細菌や、細菌が生産した毒素を摂取することによって起こる急性胃腸炎です。発症の機構の違いにより、「感染型」「毒素型」「中間型」の3つに分類されます。
原因となる細菌が付着した飲食物を摂取することで、その細菌が体内で増殖をします。細菌が胃腸に直接作用することを「感染型」と言います。潜伏期間は長いものが多く、「腸炎ビブリオ」「サルモネラ菌」「病原性大腸菌」などが病原菌です。
原因菌がすでに飲食物内で増殖し、毒素を発生した状態のものを摂取することで「毒素型」の急性胃腸炎が起こります。潜伏期間は短いものが多く、「ボツリヌス菌」「黄色ブドウ球菌」などが病原菌です。
原因となる細菌が付着している飲食物を摂取し、その細菌が体内で増殖する際に発生する毒素(エンテロトキシン)により症状が現れます。これを「中間型」と言います。「セレウス菌」「ウェルシュ菌」などが病原菌です。
食中毒といえば「ノロウイルス」を思い浮かべる方も多いですが、これはウイルスであり細菌ではありません。ウイルス性食中毒の例として、「A型肝炎ウイルス」も挙げられます。
細菌性急性胃腸炎は、主に細菌が付着した飲食物を摂取することで発症します。ただし菌の多くは熱に弱いため、十分に加熱した飲食物で感染することは稀です。しかし、中心部まで十分に加熱していない場合や、加熱後菌が繁殖しやすい温度帯で長時間放置したものを摂取すると感染率が上昇します。毒素型のものは100度で加熱しても毒素は壊れないので注意が必要です。
原因菌によって潜伏期間や症状が異なります。どのような症状があるのか詳しくご説明しましょう。
潜伏期間は8~48時間ほどであり、少ない菌数でも発症することが多いのが特徴です。主に以下のような症状が見られます。
・悪心
・嘔吐
・腹痛
・下痢(水溶性)
・急激な発熱(高熱のことが多い)
原因となるものは、肉類(特に鶏肉)、卵、魚介類など様々です。自然界に多く生息しており、人や動物の腸管内にも潜んでいます。75度で1分以上加熱すると死滅するため、食品はしっかりと加熱しましょう。また、調理後すぐに食べることも重要です。
潜伏期間は10~18時間ほどで、短時間で急激に増殖するのが特徴です。主に以下のような症状が見られます。
・悪心
・嘔吐
・腹痛
・下痢(水溶性や粘血便)
・発熱
・脱水症状
原因となるのは魚介類やその加工品です。海の魚介類などに住む細菌のため、真水には弱いという特徴があります。そのため、魚介類は真水でよく洗ってから調理しましょう。また、魚介類を切ったまな板を介し、感染することもあります。魚介類を切ったまな板は必ず洗浄・消毒してから使用しましょう。
潜伏期間は3~4日ほどで、出血性大腸炎と溶血性尿毒症症候群に分けられます。出血性大腸炎は出血性の下痢や腹痛をともなう重症のものから、軽症のものまで様々です。溶血性尿毒症症候群は大量の出血を伴う下痢や腹痛とともに
・溶血性貧血
・血栓性血小板減少
・急性腎機能障害
を起こし、脳炎などを併発して重症化することがあります。代表的なものがO157です。中心温度75度1分以上の加熱で死滅しますが、生野菜など加熱できない食品については次亜塩素酸ナトリウムなどで殺菌するようにしましょう。
潜伏期間は12~36時間ほどで、主に以下のような症状が見られます。
・悪心
・嘔吐
などの症状の後に
・複視
・発語障害
・嚥下障害
などの神経症状が出現します。ボツリヌスA・B・E型菌が日本では多く見られます。ボツリヌス菌の特徴は嫌気環境下(酸素が少ない環境)で増殖することです。缶詰などの嫌気環境下で保存する食品を食べるときは注意しましょう。
潜伏期間は1~6時間と短いのが特徴です。主に以下のような症状が見られます。
・悪心
・嘔吐
・水溶性の下痢
・腹痛
悪心と嘔吐を訴える人が多いようです。素手で握られたおにぎりやお弁当が主な原因であり、黄色ブドウ球菌は人の傷口で増殖するため傷がある手で食品を触ると汚染されてしまうので注意しましょう。傷がある人に食品を扱わせない、手洗いを徹底することが重要です。
下痢型と嘔吐型に分けられます。下痢型の潜伏期間は8~12時間で以下のような症状が見られます。
・下痢
・腹痛
また、嘔吐型の潜伏期間は平均3時間で、
・吐き気
・嘔吐
といった症状が見られます。焼き飯、ピラフ、スパゲッティなど穀類食品が原因であり、90度の加熱にも60分耐える「芽胞」を形成するため、加熱での殺菌が難しいことも特徴といわれています。
潜伏期間は平均12時間で、主に以下のような症状が見られます。
・水溶性の下痢
・腹痛
・悪心
・嘔吐
肉や魚介類が主な原因食品となりますが、調理後に室温環境で長時間放置すると増殖します。一晩置いたカレーでの発症が有名かもしれません。保存する場合は低温保存の徹底、食べる前に再加熱することが大切です。
下痢・嘔吐・腹痛などは対症療法が主体となります。下痢がひどく脱水症状が出る場合は輸液療法を行い、腹痛や悪心、嘔吐はそれぞれに応じた薬剤が投与されます。ボツリヌス菌に対しては、抗毒素抗血清を点滴します。腸管出血性大腸菌に対しては、抗血栓剤、輸血、血漿交換、透析などが必要です。
食中毒予防の3原則は
・つけない
・増やさない
・やっつける
です。細菌をつけないために手指を清潔に保つ、調理器具の洗浄や使い分けをしましょう。増やさないために、調理後は速やかに食べるか10度以下で保管してください。やっつけるには、加熱殺菌が重要です。3原則を覚えて、細菌性急性胃腸炎を防ぎましょう。