記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/11/6
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
みなさんはアメーバ赤痢をご存知でしょうか?赤痢と聞くと、近年ではあまり馴染みがないように感じる人もいると思いますが、主に成人男性に多く腹痛や血便、高熱が出る日本でも増加傾向にある病気です。この記事では、アメーバ赤痢の感染経路や症状についてご紹介していきます。
アメーバ赤痢とは、腸管アメーバ症、腸管外アメーバ症などの赤痢アメーバを病原体とする感染症のことです。発展途上国での感染者が多いですが、先進国でも主に男性同性愛者や、発展途上国からの帰国者、知的障害者施設収容者などの感染が報告され、日本国内でも感染者が増加しているといわれています。
慢性腸管感染症で大腸粘膜の潰瘍病変によるものです。盲腸から上行結腸にかけての部分とS字結腸から直腸の部分にかけてが発生頻度が高くなります。
赤痢アメーバが血管内に入りこみ、その流れによって肝臓や肺、皮膚などに病変が及ぶことを腸管外アメーバ症と呼びます。肝膿瘍の発症頻度が高く、特に成人男性に多くみらます。
胃や腸などの消化器に症状があらわれ、腸管アメーバの場合、血が混ざったゼリー状の軟便をはじめ、下痢やしぶり腹、鼓腸、また排便時に下腹部に痛みや不快感があらわれます。数日から数週間ほど続き、症状が一時的に軽くなったり、重くなったりを繰り返します。
腸管外アメーバの場合、高熱が出たり吐き気や嘔吐、全身の倦怠感や寝汗、体重が減少したりと様々な症状が現れ、皮膚や脳、肺にも膿瘍に見られることもあります。
主な感染経路は、赤痢アメーバシスト(嚢子)によって汚染された飲食物の摂取です。胃から小腸に感染が広がり、その後分裂をしながら大腸に達し大腸炎を発症します。
また、セックスによる感染も多く、男性、女性共に増加傾向にあります。国内の感染例に関しては、男性の報告数が9割近くを占めているという傾向にはありますが、女性の感染者の報告数も増加傾向にあります。
症状が現れずに、別の病気の大腸の内視鏡検査で発見されるケースも多く、これが感染拡大につながっていることもあるようです。
アメーバ赤痢の治療は主に投薬治療(メトロニダゾールの投与)が有効とされ、国際的標準治療薬としてアメーバ赤痢の治療に使われています。7日から10日間の間、経口投与するとされていますが、症状が重く重症化している場合や、経口投与が難しい場合はメトロニダゾール注射液での投与になります。
症状の出ていない病原体保有者や感染を繰り返すような場合は、メトロニダゾールを投与した後に、パロモマイシンを併用します。日本では、2014年にパロモマイシン内服が認可されたことにより、日本でも積極的な検診や、適切な投薬によって治療法の確立が期待されているようです。
日本でも感染者数は増加傾向にあることから、症状がでた場合は速やかに病院を受診し適切な治療をすることが感染拡大を防ぐために重要です。特に性的接触が原因での感染については、パートナーとの信頼関係にも影響しますから、十分注意しましょう。