記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/11/6 記事改定日: 2019/4/1
記事改定回数:1回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
頚椎症性脊髄症とは、しびれや痛みが起こる頚椎由来の病気です。加齢による変形が原因と考えられていますが、どの組織がどのように変形して、どんな症状に発展していくのでしょうか?この記事では頚椎症性脊髄症について詳しく解説しています。
頸椎症性脊髄症とは、加齢による椎間板の変性などが原因で骨がとげ状に大きくなる骨棘(こつきょく)ができたり、靭帯が厚く硬くなったりすることで脊柱管にある脊髄が圧迫され、四肢に痛みやしびれ、運動障害を生じる疾患です。
日本人は脊柱管が欧米人と比べて小さいため、脊髄症になりやすいと考えられています。
頚椎のクッションの役目をしている椎間板は、20歳を過ぎるころから水分が失われて弾力性がなくなり、ひびが入ったりすることで、椎間板が薄くなったり変形して偏った形になってしまいます。すると椎骨と椎骨がこすれ合って変形したり潰れたりするといった老化現象が始まります。このように、「頚椎に年齢的な変化が起こること」を頚椎症といいます。
椎間板の変性は加齢と共に誰にでも起こるもので、これ自体は病気ではありません。脊髄の通り道である脊柱管や椎間孔が狭くなり、脊髄が圧迫されて痛みやしびれや麻痺が出てきて初めて頚椎症性脊髄症という病気と診断されるのです。
頚椎症性脊髄症は最初に手のしびれなどが現れ、その後、加齢と共に、徐々に、四肢の感覚異常が生じたり、手先の細かい作業が不自由になるといった障害へ進行します。その結果、箸やボタン掛けがぎこちなくなったり、紐を結ぶ・字を書くなど指の細かい動作が不自由になったりして、日常生活上の不便につながります。
また、両下肢に力ははいるのに(大きな筋力低下はないのに)、つっぱったような歩き方、ギクシャクした歩き方になるなどの歩行障害現れることもあります。進行すると歩くのに支えが必要になろ、転倒などの軽微な外傷で四肢麻痺(脊髄損傷)になる可能性もあるので転倒しないように注意が必要です。
加えて、膀胱や直腸に障害が発生(頻尿・開始遅延・失禁)することもあります。こういった症状が現れたときは、早期の手術を必要とします。
症状が重度の場合を除き、保存療法(頚椎カラーを用いた装具療法、薬物療法など)で対応することが一般的です。
頚椎カラ―などの装具は、局所の安静を保ち、痛みの軽減に寄与する治療法です。薬物療法としては、多くの場合、痛み止めとして非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)が用いられ、温熱治療や牽引治療などが併用されることがあります。
痛みがコントロールできない場合は、神経ブロックを行うこともあります。これは、局所麻酔薬により、痛みが神経に伝わるのをブロックする治療法です。
進行する頚椎症性脊髄症や、その他の治療であまり効果が見られない場合、また歩行障害や膀胱直腸障害が生じたときは、外科的療法も検討されます。多くの場合は、頚椎の後方もしくは前方から神経の通り道を広げる脊柱管拡大術が行われます。また、圧迫部位が1または2ヵ所までで脊柱管が広い場合は、前方固定術も用いられています。
頚椎症性脊髄症では、主に以下の2つの方法の手術が行われます。
うつぶせの状態で後頭部を切開し、頚椎の「後方」からアプローチする術式です。
頚椎の後方には首を支えるための筋肉が付着しているため、まずはそれらを剥離し、頚椎を縦に割って持ち上げることで狭くなった脊柱管を拡大させます。その上で、人工骨を使用して開いた頚椎を固定します。
脊髄の通り道である脊柱管を拡げることで脊髄への圧迫を解除することができるため、頚椎症性脊髄症による諸症状を改善することが可能です。
仰向けの状態で首の一部を切開し、気管や食道を避けて頚椎の「前面」からアプローチする術式です。
手術用の顕微鏡を用いながら行われ、手術器具で頚椎を削りながら脊髄に到達し、椎間板ヘルニアや骨棘など脊髄を圧迫する構造物を取り除いて圧迫を解除します。脊髄の圧迫が解除されたことが確認できたら、脊椎の穴を人工セメントなどで補填し、不安定になった頚椎にケージを植え込んで固定したら終了です。
症状が完全に進行してしまうと、それから手術をしても元のように生活をするのは難しくなってしまいます。症状はそこまで強くない早期のうちに、整形外科などの専門医に相談することが重要です。