記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/11/21 記事改定日: 2019/5/13
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
B型肝炎やC型肝炎、アルコール性肝炎など、肝炎にはさまざまな種類がありますが、その中に国の指定難病に定められている「自己免疫性肝炎」があります。
今回の記事では自己免疫性肝炎の原因や症状など、全般的な情報をお伝えしていきます。
自己免疫性肝炎は免疫機能の暴走によって引き起こされる病気ですが、なぜ免疫機能が暴走してしまうのかははっきりわかっていません。ただ、現時点では、以下のようなことがきっかけで免疫機能の異常が誘発されることが原因と考えられています。
また、自己免疫性肝炎の患者さんの約60%の方に、白血球のある特定の型に対して陽性が見られると言うデータもあります。このことから遺伝的な要因も無視はできないと考えられており、遺伝的な要因と免疫機能の異常を誘発するような要因が重なることで、より発症リスクが高くなるのではないかとも考えられています。
免疫機能は通常、体に対して異常なものや有害なものを攻撃し、体の健康を守ってくれています。しかし、ときに正常なものに対して攻撃を行ってしまうこともあります。自己免疫性肝炎はそうしたことにより引き起こされる病気の一種です。
自己免疫性肝炎は、免疫機能が健康であるはずの肝臓の細胞を攻撃してしまうことによって、様々な影響が体に出てきます。
まず、肝臓は疲労原因物質やアルコールなどを分解、解毒していますので、肝細胞が損傷すると、疲労感や食欲不振などの症状が出やすくなります。
また、自己免疫性肝炎を放置しておくと、肝細胞のダメージが蓄積されていき肝硬変や肝不全などが引き起こされてしまうこともあります。
ただ、肝臓は沈黙の臓器とも呼ばれているように、自己免疫性肝炎を発症しても初期の段階では自覚症状がないということも少なくはありません。
自己免疫性肝炎の治療の基本であり、かつ高い効果が期待できるのが副腎皮質ステロイド薬の服用です。
初期の段階で発見でき、この薬による治療を開始できれば、予後は非常に良好だと言われています。
ただし、ステロイドに対して抵抗性がある場合はこの限りではありませんし、服用は基本的には生涯にわたり継続する必要があります。
また、ステロイドの服用は体に対しての影響も懸念されるため、その量を減らしていくこと、代わりに肝機能に働きかける作用などがある薬が採用されることもあります。
もし発見時に自己免疫性肝炎が進行している場合には、薬による治療法だけでなく、血液を濾過させるような治療法、あるいは肝臓移植が検討されるケースもあります。
自己免疫性肝炎は、適切な治療を続けることで多くは症状の進行を止めることが可能です。しかし、治療を自己中断したり、治療薬の誤った服用を続けることで再燃しやすく、重篤な肝機能障害を引き起こすことも少なくありません。
自己免疫性肝炎と診断された場合は、必ず医師の指示通りに治療を続け、定期的な検査を受けるようにしましょう。
また、自己免疫性肝炎をはじめとする自己免疫の異常による病気は、疲れやストレス、睡眠不足などがたたったり、不規則な食生活を続けることで悪化・再燃することがあります。
治療中や治療後も含めて、バランスよい食生活を心がけ、十分な休息・睡眠をとるなど心身ともに安らかに過ごすことが大切です。
発症原因がわかっておらず、初期段階ではなかなか症状を自覚しにくい厄介な自己免疫性肝炎。もしも健康診断で肝機能の異常が示されていたり、黄疸などの症状が出たりした場合は、すぐに病院で検査を受けましょう。
また、自己免疫性肝炎は再燃することがありますので、リスク要因になる生活を避けるようにしましょう。